第四話 名乗る以上は
言葉が通じるので
話をする事にした。
名前、固有名詞を羨ましがった
という事は名前は無いのであろう。
予想通り名は無く
自分の存在はこの湖そのものだそうだ。
「まぁ湖の妖精って事か」
「妖精・・・そう呼ばれる存在なのですね」
湖の妖精は疑問も持たずに
妖精の概念を受け入れた。
「私にも名前を付けて頂けませんか」
妖精はそうお願いしてきた。
「自分で好きなの名乗ればイイだろう」
俺がそう言ったら
妖精は酷く落ち込んだ。
見かねたミカリンが
この世界における名付の意味や
重要さを説明してきた。
他者に認識され
他と区別される特別な称号だそうで
個という特別な存在になれる。
有る無しでは存在の力が大きく異なるそうだ。
尚、自分で自分に付けても
上記に該当しないので効果は出ない。
ゴッドファーザー
名付け親、名を持つ者から認められる事に
意味があるそうだ。
名無し同士では何も始まらないのは
某巨大掲示板と同じか
ホント口だけの連中だからな
そこで思い出した。
自分の事だ。
ゼータ
これはババァルが付けてくれたんだっけ
時間停止成功の秘密が案外この名付だったりして
ともかく、そのお陰で俺は
ミカリンにも名を与える事が出来たわけだ
湖の妖精にも名前を付けてやるか
どっかのスライムと違って
MPが減る様子も無いしな
「よし、名を与えようじゃないか」
「本当ですか」
輝くような笑顔で立ち直る湖の妖精。
「ただし、この俺に湖の妖精と
認めさせてみろ。それが条件だ」
「どうしたら認めて頂けるのですか」
そんな事も分からんのか
「あのなぁ湖の妖精だったらさ
エクスカリバーとか金の斧とか
キレイな〇ャイアンとか
持って来るモンだぞ」
それは女神だったかな・・・
「底に沈んでいる人工物で
よろしいのでしょうか」
お
意外に理解が速いな
俺の説明の方が頭悪そうだ。
それでいいと俺が言うと
妖精は急いで湖に潜って行った。
ミカリンが少し呆れている。
「あのさぁケチ臭くない?」
「お前をいつまでもそんな恰好で
いさせる気は無い・・・まぁ
俺自身もだが」
四話になるのに
いまだ全裸だ。
「・・・・。あそうななんだだ」
俺の適当なでっち上げを
真に受けてしまったミカリンは
目を大きく見開き
頬を赤くして
慌てた。
でっち上げじゃないな
本当に何か着たい。
言葉通り二人とも何か身に着けよう。
布・革・金属
今の俺達が森をどんなに散策しても
入手出来ないだろう。
これらを期待するぞ妖精。
程なくして妖精は
直径50cmの円盤を持ってきた。
すんげえ苔生えてるが
妖精曰く
落ちて来た人工物では一番新しい物だそうだ。
受け取って
断りをいれてから
湖で汚れや苔を落とすと
見覚えのある
ラウンドシールドが姿を現す。
早速、俺は左腕で構えてみた。
全裸に丸盾のみ
これ何て言うアキラ100%なの
ジョブがお笑い芸人になったりしてないか
「ガガッガガ大地の盾
じゃないかあああああああ」
構えた俺を見て絶叫するミカ。
大地の盾
四大天使 裁と地のウルの専用装備
前回の降臨の際ドロップしたが
聖属性で使い道が無かったため
宇宙空間で成層圏に向けてフリスビーした
弾かれて宇宙を彷徨うかと思っていたのだが
中途半端な軌道周回に入り
引力圏に捕まって燃え尽きず
落下してきたってところか
「こんなモノでゴメンなさい」
価値が分かっていないので謝る妖精
いや、この盾はエンドコンテンツでしか
入手出来ないような盾だから
レベル1が全裸で装備して良いモノじゃないな
メニューを開いて
装備を確認すると
驚く事に装備自体は成功していた。
ただ・・・