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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百九十六話 寝てる間の事

本格的に目が覚めたと言う事で

キャリアは一旦ここで停止して

ミカリンが車内に戻って来た。


「本格的って・・・何回か起きてるのか俺?」


覚えていないがそうなのだろう。

下着も含めて、全く知らない恰好だ。


話を聞いて見ると

何と俺は三日間倒れていて

排泄と水分補給に何度か

目を覚ましていて会話もしているそうだが

俺自身は全く記憶に無かった。


「起きていても寝てるような感じだったよね。」


「ええ、何を聞いても、うんと答えていました。」


俺は素直に皆に礼を言った。


「ところでココは何処だ。」


異常に寒いぞ。


「はい、ここはですね。」


アリアからこの三日間の進路の説明があった。


ここはドルワルドとバルバリスの国境付近だった。

見慣れないのは正規の街道を使っていないからだ。


「こんな道、良く知ってたな。」


俺の問いにアリアは恥ずかしそうに答えた。


「実はですね。私が担当したのでは無いのですが・・。」


バルバリスの国力を削ぐ目的で

ドルワルドをけしかける計画が

クリシアマフィアで実行された事があるそうだ。

その時にマフィアが使用していたルートだそうだ。


「バルバリスの使用していない道が

望ましかったと思いまして・・・。」


「ですね。通常の街道ならばパウルの影に

あっという間に補足されていたでしょう。」


遠慮がちなアリアに自信たっぷりのストレガが補強した。


「お陰で運転は大変だったよ。」


ウンザリした様子でミカリンは言った。

もみ上げから氷柱つららが垂れていた。

外の過酷さが窺えた。

快適な道なら

こちらが街道になっていただろう

つまり悪路で人気が無く

それが拍車を掛けて整備が進まないのだ。


今も震えながらブリッペの入れてくれた

お茶を急いで飲みたいが火傷が怖くて

飲めない状態で

ふーっふーっしながらズズズと

空気冷却しながら喉に運んでいた。


「天使化すれば寒さなんて

何でも無いだろうに、バカなの?」


索敵に引っ掛かるから禁止だと全員が怒った。


「おおっそうだな。スマン

俺の発言は間違いだ、取り消す。

結構、賢い行動を取るんだな感心したぞ。」


俺は慌てて謝罪したが

更に怒らせてしまった。


「自分がそうしろって言ったんじゃないか。」


そうなのか

全く覚えていない。

ストレージの出し入れは俺しか出来ない。

キャリアがあると言う事は

俺が出した事に間違いは無いのだが

ウル・ラハ戦の後は

記憶が曖昧だった。

そんな状態でも指示を出したのか俺は

偉いな。


俺がそう説明すると

皆は怒りが静まりバツが悪そうになった。

その様子から直後の俺の状態の酷さが窺えた。


空気を替えようとしたのか

単に話を戻したのかアリアが

その後の話をしてくれた。


場所は移動しろと指示したが

何処へとは言わずに寝入ってしまった俺。

皆で会議してドルワルドを目指す事にしたそうだ。


「確か国王がお兄様を召喚したがってましたしね。

それに私もドワーフには知り合いも多いです。」


それで裏街道を利用し索敵を逃れ

ここまで来たそうだ。

途中でいくつかの集落にアリア単独で潜入し

情報収集と防寒具などを手に入れたそうだ。


「1人で行かせたのか?」


俺はそう言ったのだが

皆の視線から察した。

俺がそう言ったのか・・・。


「で、仕入れた情報なんですが・・・。」


各集落でアリアの入手した話では

地方には俺の噂どころか

降臨の概念すら無かったそうだ。

むしろ、専らの心配事は

北の荒野を破竹の勢いで

統一していっているミガウィン族の

侵攻がここまで迫ってきている事だそうだ。


教会も存在していない事から

パウルの影の心配もしなくて済みそうだ。

事実ここまで教会の追っ手には

遭遇していないとの事だ。


そして旅の

途中の魔物はアルコが全て撃退。

ついでに食料になりそうな

生き物も狩っていたそうだ。


「頼もしいな・・・。」


「いえ、ベアーマンでは普通の営みですので。」


そうだった。


「アルコ、スゴイんだよ。寒がらない!!」


お馴染みのビキニ半獣人スタイルで

凍った湖面を爪で穴を開けると

飛び込んで10分ぐらい帰って来ない。

皆が不安に焦る頃

大量の魚を抱えて戻って来たそうだ。

何と逞しい事か。


「寒くないのか?!」


聞いているこっちが寒いぞ。


「はい。どちらかというと

暑い方が苦手です。」


元の世界でも北極に生息してる仲間がいるしな

普通の熊が冬眠するのは

寒くて動けないからでは無く

餌が無いから消費を抑える目的でだ。


熊は寒さに強いのだ。


ベアーマンの元々の集落も高山地帯だ。

寒さや低酸素に特別な耐性を有している様だ。


「食料に関しては本当に助かったよ。

アモンは起きないし、僕の狩りは

普通の森の中限定だしね。」


ミカリンがそう言った。

皆、頷いた。


「アルコ。来てくれてありがとう。」


アルコは真っ赤になって

手と首を横に振った。


「いいえ、押し掛け女房です。」


女房のトコロでストレガが殺気を放つが

やめなさい。

学校でもその辺りは

まだちゃんと教えていないと思われる。


それにしても完璧な人選だな。

キャリアを動かせる足にミカリン

目耳鼻の情報器官にアリア。

戦闘と食料調達のアルコ。

調理と医療にブリッペ。

頭脳と魔法はストレガだ。


俺要らないんじゃないか。


まるで選んで連れて来たかのようだ。

まぁ居る人間で出来る事をしただけで

後から見るとそう思えるだけなのかも知れないが

それにしても見事なバランスだ。


「ゴメン・・・ちょっと寝てもいいかな。」


ミカリンが辛そうだ。

天使化出来ないとなると

肉体は普通の女性だ。

負荷は重いモノになったことだろう。

そして更に

神側を裏切った事に寄る心労も心配される。

俺がひょっこり起きた事で

緊張の糸が切れたのかもしれない。


「おう、俺が替わる。

面倒かけてしまったな。

良い子は寝かせてあげよう」


俺はそう言ってミカリンに

近づきお姫様抱っこをしようとした。

予想外に嫌がらなかったので

冗談とも言えず

そのまま抱っこして

キャリアのベッドに運んだ。

さっきまで俺が寝ていたベッドだが

これも嫌がる様子が無いのでそのまま運んだ。


「ゴメンねぇ・・・この辺りだと

僕は弱体化するみたいだ。」


ミカリンは火の天使だ。

火の力がこの辺りでは少ないと言う事だろう。

得られるバックアップが欠乏していたのだ。


人も勿論、生命体は四大元素の

芸術的な集合体だ。

お互いが打ち消す事無く

高次元のバランスで形成されている。


物体である体。

それは大地から来た素材だ。


産まれ落ちてから死亡するまで

途切れる事の無い呼吸

これは風の力だ。


血液に代表される体液は

常に瑞々しく保たれ

体の各パーツに必要な栄養と酸素を運ぶ

命を育む水の力だ。


そして酸素を材料に二酸化炭素を排出する。

そう細胞は燃えているのだ。

極小の炎だ。

人間の何十兆にも及ぶ細胞は火を宿している。

この温もりは火の力だ。


個人的にはここに雷も追加したい。

考える力、そしてその命令を

伝達しているのも雷の力なのだ。


この極寒地域では息吹く生命自体の数が減る

生命活動は非常に少なくなるのだ。

火の力は相対的に弱いのだ。


俺は労いながら優しくミカリンを寝かせた。


「アモーン。ブリッぺも疲労の」


「嘘だ!!」


一見、水は生命と癒しのイメージがあるが

実はそうでも無い。


心無き最強のいじられ役だ。


高温で気化しようとも

低音で氷の塊になろうとも

水は水だ。

常に高い所から低い所に移動し

如何なる形の器にも抵抗無く入り

様々な形態を取るが

水の本質は決して変わらない。

勿論、生命を育む事は嘘では無いが

同様に破壊し、浄化もする。

世界の何処にでも存在し

ほぼ常に何かに弄られ続けるのだ。

そして不滅と言っていい。


この極寒地帯で生命活動は少ないが

形を変えた水はそこいら中に溢れているのだ。


ブリッペが疲れる事は無いのだ。


俺の遮る様な否定に

元気よく文句を垂れるブリッペ

うん、元気じゃないか。


「お兄様、私ももう限界が」


「・・・。」


解説要るか?

非生命体め。

輪廻より外れし者

暗黒無限軌道

死の永久機関だろ、お前は


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