第三百九十 話 最終決戦プレリュード
MAP画面を開き
同時に完全膝カックン耐性を起動させた。
後方、低空飛行
それも超音速で接近する物体を感知した。
強烈な神聖属性だ。
完全に捉えている。
真っ直ぐこちらに向かって来ていた。
不意に思い出される一言。
お別れ会でのミネバ
あの謝罪は
これまでの事では無く
これからの事だったのだ。
俺は悪魔男爵化すると
早口で言った。
時間が無い。
「逃げろ!後、神に祈っておけ
お目こぼしがあるかも知れない!」
何が何だか分からないよな。
皆、キョトンとした顔だった。
説明する時間が無い
残念だが出よう。
俺と距離が離れていればいる程
生存率は上がるだろう。
うっかり通り道にでも居れば
エルフの里みたいに
ついでで殺されるかも知れないのだ。
俺は偽馬車から飛び立ち
進行方向から真横に飛行した。
接近する物体は方向を変えた。
いいぞ。
出来る限り離れなければ。
俺は加速しながら考えた。
接近して来る物体は天使
それも四大天使級だ。
俺を狙っている。
どちらにも与しない。
これが信用されなかったのか
それとも存在するだけで危険と判断されたか?
ダモクレスの剣
風呂桶の底に沈んだカミソリ
ならば余裕の有る内に
始末してしまおうと言う事だ。
俺は望遠デビルアイで
接近物体を確認した。
四大天使が1人
裁と地のウルだ。
それもダウングレードじゃない
フルバージョンだ。
おかしい
全降臨の予言の日までは
まだ余裕があったハズだ
そう思ってから
直ぐに気が付き
自分の頭の悪さを呪った。
前回を知っているなら
分かってなければいけなかった。
審判の日以前から
天使も悪魔も人知れず活動を
していたじゃあないか
一般に認識され記念日に認定されるより
前から戦いは始まっていたのだ。
ウルが今
フルバージョンで居る事に
何の不思議も無かったのだ。
もっと早目に身を隠すべきだったのだ。
「前回の屈辱。晴らさせて貰うぞ
我が主敵アモンよ!!」
ウルがそう叫んでいるのが確認出来た。
やっぱりコイツは馬鹿だ。
音速を超えて移動する物体
その進行方向に音は飛び出せない。
発するソバから本体が音を追い越すからだ。
つまり何を言っても相手には届かないのだ。
それなのに喋っている。
デビルアイで補足した事で
辛うじて思念を拾えたから分かったが
俺でなければ誰にも聞こえないセリフだぞ。
俺も超音速加速で
偽馬車から更に離れた。
この低空だ。
発するソニックムーブは凄まじいレベルになる。
先程の声、それを含む音は
物体の到着時に
それまで発した音が全て重なって
一度に衝撃波に乗って襲って来るのだ。
偽馬車は滅茶苦茶頑丈に作った。
そう簡単には破壊されないし
数回横転したところで馬車本体は
問題無く走行可能だが搭乗者は別だ。
鉄の檻の中で激しくシェイクされる。
ストレガは大丈夫だな
アルコも死にはしないだろう
アリア、駄目死んじゃう
急げ俺。
もっと離れろ。
俺の下の地面に緑色の光が走った。
魔法陣だ。
それもこれはお馴染みのアレだ。
「スパイク!!」
聞こえないと言うのに
ウルはそう叫んだ。
それと同時に広範囲から
出現する棘。
俺はテーン風盾を装備し
俺を串刺しにするべく
下方から伸びて来る棘
その先端を弾いて回避した。
「鉄?鉄棘か・・・。」
棘の最上級呪文じゃないか
流石フルバージョンだ。
10m級の鉄の棘がこれだけの広範囲で
発生させる事が出来るとは
俺は棘を触って痛みを感知した。
純粋な神聖属性も加わっていたのだ。
鋼より硬いからと言って
生身で受けていたら終わっていた。
「危ねぇ危ねぇ。」
まぁ俺のボディ強度をウルは知っているのだ。
効きもしない魔法は使っては来ないハズだが
これは予想出来なかった。
そして予想していた事には対応しよう。
俺は上空を走査した。
居た。
才と風のラハだ。
ウルが居るなら他の四大天使だっているはずだ
俺を相手に必勝で臨むなら
一緒に来ないハズは無いと踏んでいた。
俺の走査に勘付いたのか
必殺の機を逃した事が分かったのだろう。
待っていても無駄
そう判断し射出体勢を即時に取った事が窺えた。
ウルのスパイクを避ける為に上昇
そこを狙い撃ちする作戦だったのだろう。
「悪魔光線!」
神聖魔力の凝縮が良い的だ。
俺はそこに悪魔光線を叩き込むが
ラハの矢も同時に射出された様だ。
俺とラハの中間地点で
巨大な爆発が発生した。
お互い狙いが良すぎた様だ。
見とれている場合では無い
俺は巨大な棘の隙間を縫う様に
不規則で移動し
次射を牽制しつつ
ウルを補足し直す。
同じ場所にスパイクは発生しない。
この範囲内に居る以上は
次のスパイクは来ないのだ。
俺は適当にスパイクを広範囲で発生させた。
「はっ!ドコを見ているのだ。」
ウルはそう言うが
当てるのが目的じゃない
安全地帯を作成する為だ。
俺のスパイク群の場所にも
他のスパイクは撃てないのだ。
俺の魔法に合わせて
ラハの次弾が飛んで来た。
上手いな。
俺は回避せずに体を回転させて
テーン風盾で弾いた。
幾つかの棘を破壊しながら
ウルに向かって飛んだ。
「どはぁ!」
当たった様だ。
「ウル!何処をみているのですか!!」
もっと言ってやれラハ。




