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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百八十一話 どうしようかな

全降臨

天界そのものを地上に展開させる大技

つかヤケクソの荒業。


全ての神と天使が行動出来る最強の攻撃態勢だが

還るべき場所が無いのでここでの消滅は

本当の意味での消滅になってしまう。


海賊船同士の戦いで言うなら

沈没してしまう破損覚悟で

相手の船に体当たりして全員で

白兵戦て感じだ。


ただ現状維持しても沈没中だったのなら

一か八かで打って出るのも十分に有りな戦闘だ。


この世界そのものの終わりが今で

スライド先での生き残りを掛けるなら

やるしかないだろう

しなければおとぎ話の中に消える。


「その場合のゲートってどうなるんだ。」


俺は頭に浮かんだ疑問を素直に言ってみた。

特に誰を指定したつもりではないのだが

カシオが答えてくれた。


「鍋の底が抜ける感じじゃな

もはや穴とか門と言うレベルではない

そして鍋はもう鍋で無くなるワケだ。」


「本体の維持が地上では出来ないって確か・・・。」


続く疑問にもカシオは答えた。


「本来なら義体になる体を本体とするしかないのぅ

・・・アモン君、丁度今の君がその状態じゃよ。」


この説明はストンと胸に落ちた。

本体と呼んで良いのか分からないが

本体であるオリジナルの俺は

とっくに元の世界に戻り

この世界に残った因果

辻褄を合わせる為だけにコピーの俺が

この肉体を動かしてるのだ。

怖くて考えなかったが

この肉体の消滅時に

もう一度リスタート出来るか保証は無い。

出来るモノとして行動してきたが

死亡が死亡としてこの世界に受理されれば

そのまま終わる可能性もあるのだ。


考えると怖いので止めよう

死んだらどうなる

これは死んでから考えよう

つか死んでみないと分からないし


俺は別の疑問をぶつけてみた。


「魔界側はどうなるんだ。」


「・・・これは前例が無いので分からぬ。

同様に全部開くのか、最小限に留め

籠城作戦が可能なのかも知れん。」


カシオも首を傾げた。


「籠城をした場合、地上を我らに

支配されてしまえば凌ぎきるのは不可能。

最低限残し、地上奪還の為出て来ると

思われます。」


ミネバはそう助言した。

この最低限残す事をすれば

通常の降臨と同じで消滅せず戻る事が可能だ。

しかし、残す為のリソースのせいで

地上での力は全降臨に比べると

どうしても劣り、負け戦必至だそうだ。


捨て身の奴を相手にする場合

自身も捨て身になるか

凌ぎきる防戦に徹するかの

どちらかだろう

中途半端な対応は捨て身の相手に

有利に働いてしまうものだ。


俺が考え込んでいる間に

カシオとミネバの戦略会議が開かれていた。


どうも神全員が全能力再現可能な義体は

今の天界が保持しているエネルギーでは無理っぽそうだ。

何名かは脆弱な人化になるようだ。

まぁすでにここの3人は人状態だからな。


夜も更けて来た事と

現時点では憶測ばかりと言うこともあり

その日はそのまま解散となった。


ハンス問題は全降臨ともなれば

ハンスは忙殺されてしまうのは必至なので

特に対策は必要無くなった。

自然解決だ。


「全降臨に感謝すべきなのかしら・・・。」


ヴィータは首を傾げていたが

つり合いの取れない問題の大きさだ。


俺は「メタ・めた」に戻る振りをして

密かにミガウィン地方に飛んだ。


こんなモヤモヤした状態では

眠れる気がしなかったのだ。


「なんじゃこんな夜中に

主様はもうお休みじゃぞ。」


ミガウィン宮殿も寝静まっていて

警備の衛兵ぐらいしか活動していなかったが

オーベルだけは元気そのものだった。


「いや、むしろオーベルと話がしたかった。

夜中で済まないが聞いてもらえないだろうか」


全然OKだった。

むしろ夜の方が頭が冴えるそうだ。

流石はフクロウ、夜行性だ。


俺は今しがたゲッペの教会であった

ドタバタを話した。


オーベルは器用に翼の先端を

自分の顎の辺りに持っていき

頷いて聞いていた。


聞き終わると

あっさり答えてくれた。


「左様、こちらは総力戦ですじゃ。」


「全魔王と魔神が地上に来るってのか」


「総力戦とはそう言うことですじゃ。」


俺は籠城の作戦も振ってみたが

一笑に付された。


「蓄積しているエネルギー量は

神側が圧倒的ですじゃ。

籠城は愚策の極み

総力の振りした最低限残しも同様ですじゃ

我々に残された有効な手段は

いち早く地上を押さえる速攻のみ」


「随分あっさりと俺に話すんだな

神側にも伝わるかも知れんぞ。」


俺は怪しんだ挙句

素直に聞いてみる事にした。


「地上のアモン殿が神側と交流があるのは

周知の事実、今もこうして貴重な

相手の情報が入手出来ております。

それにこの速攻、知られようが知られまいが

防ぐ有効な手段はより先手を取る以外に

ありませぬ。」


オーベルはここで一旦言葉を区切り

ゆっくりと自信たっぷりに続けた。


「今の連中にはどうせ打てぬ手でございます。」


バレても何の問題も無いと言う事だ。

言われてみればその通りだ。

魔界側は

全降臨前に既にミガウィン地方を制圧し

魔王が先んじてベレンに手を掛けているのだ。


それに比べて神側は

今頃、事実に気が付いた。

それも魔王からもたらされた情報でだ。

何の行動も起こせていないし

人状態のカシオとヴィータでは

すぐに何か起こせる能力は無い。


もう一人トンデモナイのがいるだろ。


俺はミネバの神器の話をした。


「ホッホッホッあれには肝が冷えたですじゃ」


余裕で笑うオーベル。

そうだ

あの時オーベルも現場にいたのだ。

知っているのに

余裕なのだ

それは、つまり


「あの神器

展開には尋常ならざるエネルギーが要ります。

あの時は豊富なエネルギーに満ちた

天界で展開して下りてきたのですじゃ

地上のアモン殿の奮闘のお陰で使いきったご様子。

地上で再度展開するにはエネルギーが足りませぬ

それこそ全降臨でもしない限り無理ですじゃ

もはや鞘から抜けない刀

恐れるに足りませぬな。

これも我らが急ぐ理由でもあります。」


今の内にって事か成程。

ここで一つ疑問が湧いた。


「なぁ俺に関する事は視えないんだよな。」


それにしては

魔界側、オーベルに上手く事が運びすぎだ。

こいつ視えているのに

そうでないと俺をたばかったのか。


「不可視の矢、それが見えないと知ってさえいれば

弾いて来た木の葉で軌道をある程度は予測できますじゃ。

そしてワシには矢は見えずとも

散った木の葉の未来を見る事は出来ますで」


このフクロウ

俺に関わる事で、俺に関わった人や物から

先を推測する事を試みていたのだ。

そしてソレも大分手馴れて来たと言う事だ。


俺の視線に何かを感じ取ったのか

オーベルは慌てて態度を急変させ

媚びだした。


「うう嘘は付いておりませぬじゃろ。

それにこう言っては何ですが

地上のアモン様が懇意にしている者に

危害は行かぬ様に細心の注意を払っておりますぞ。」


そうだな

俺が瓦礫片づけの土方をしている間

やろうと思えばいくらでも手は打てたハズだ。

まぁ

そんな事をすれば俺の逆襲が必至なんだが

恩を着せるというより

無用な虎の尾を踏みたくなかっただけだろう。


「まぁそれには感謝するが

もっと大事な事があるだろう。」


「・・・ハテ?」


俺の語気に押されて

急に小動物のカワイイ仕草で

首を傾げるオーベル

あざとい。


「ババァルについて何か見えたモノはないのか」


残念ながら無いそうだ。


「主様は純粋に救出を望んでおられますがの」


オーベルとしては

圧倒的な魔力保有量を誇るNo1魔王

ババァルが居る居ないで計画は

進捗は言うまでも無く

可能になる作戦がケタ違いだそうだ。


彼女の捜索に関して嘘は無いだろう。


「打算的で申し訳ないですが

これも魔界の為故・・・お許し願いたいですじゃ」


「いや、当然だ。

そう言う者がいなければ戦には勝てん。

お前はお前の成すべき事を果たしているだけだ。

褒められこそすれ非難される事では無い。

よくやっている・・・って俺が褒める立場じゃないか」


「いえいえ、有難き幸せですじゃ」


フクロウの表情は良く分からないが

オーベルは素直に喜んでいる様だ。

そして直ぐに態度を変え

今度は真剣な面持ちで俺に尋ねて来た。


「視えぬ故、素直に教えて頂きたい。

地上のアモン様は来るべき全降臨

どちらに付かれるおつもりですかや」


こいつ

本当はやっぱり見えているんじゃないのか


「・・・どうしようかなぁと」


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