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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百七十六話 ツケ

ビルジバイツの飛行は

純粋に空力を使用している。

それなのに結構速かった。

舐めてた。


俺はスピードを上げ後を追う

視認出来る範囲まで来た。


また少し成長している様で

順調にエロい体になって来ていた。

折角なのでしばらく眺めさせて貰った。

うーん目福だ。


「ブーンて音すんのな。」


音も大き目だが

この高度でこの速度、

それに夜なので

まず見つかりはしないだろう。

それにしても何処へ行くのか


「・・・って、おいおいおい!!」


俺は慌てて加速した。

ビルジバイツはドーマを越え

ベレンに侵入していた。

空の酸の濃度は測っていないが

上に立ち上っている霧だ。

そのお陰で地下通路は安全だが

上空は逆に危険だ。


加速して一瞬でビルジバイツに追いつくと

俺は稼働している羽に接触しないように

前面からビルジバイツに抱き着いた。


「のわーー何じゃ何じゃ?!」


柔らかい。

やった。

じゃない


「危ないんだって!!」


「危ないのはお主じゃ!この不埒者め

どこを掴んでおるか」


だって背中は羽が動いているから

しょうがないじゃないか


「なぁにを揉んどるのか!!」


「すいません。つい」


どうしたって

はぁ

はぁ

仕方が無いんだよ。


集中を欠いた。

重力操作が中断され

俺はビルジバイツに反射的に抱き着いてしまった。


「コレ!妾の飛行能力は

他人を運べる程ではあああああああ!!」


バランスを崩した事も手伝い一気に落下してしまった。

流石に正気に戻った俺は

地表寸前で制御を取り戻し

ビルジバイツをお姫様抱っこする恰好で

軟着陸した。


「大丈夫か。」


「お主が来なければ安全じゃったわい!」


「いや、違うんだって・・・。」


俺はベレンの現状を説明し

ストレージから金でコーティングした

緊急避難用のケースを出した。

念の為入る様に言う俺を

蔑むような目で見下ろすビルジバイツ。


「お主、妾が何の魔王か忘れたかや。」


そう言うとビルジバイツの足元から

ガスが全方位に噴き出した。


デビルアイで解析してみると

強烈なアルカリ性のガスだ。


「ふむ、こんなトコロかの。」


一瞬で周囲は中和され安全地帯と化した。


「あ、スゲェ。」


俺は素直に感心した。

流石はかつて百年以上に渡り

セントーボージを封鎖し続けた

毒ガスマシーンだ。

俺には出来ない事だ。


「カッカッカッもっと褒めるがよいぞ」


胸を張って威張るビルジバイツ。

うん

大きくなってるぞ。


そのままガスを噴き出しながら

夜の廃墟を散歩だ。

俺も誘導と退屈凌ぎの話し相手として

ビルジバイツを先導した。

無事な場所に回る手間を省き

特に濃度の濃い場所を案内した。


これはスゴイ

ただ散歩しているだけで浄化だ。

作業に取り掛かれず

復旧のメドすら立てられなかったベレンだが

これならスケジュールする事も可能だ。


俺はそう言って喜んだ。


「んー何か勘違いしておる様じゃがの

ここは妾達、悪魔の軍勢が占拠するんじゃぞ。」


「え?」


「でなければ、わざわざ出向く意味はあるまい

慈善事業ではないぞや。」


それもそうだ。

神の信奉者を減らし

欲に堕落させるのが彼等の目的だ。


「いや、ミガウィン族とバルバリスは

不可侵条約を結んだんじゃなかったのか」


「当時は戦力に置いて圧倒的差があったからの

蛮族の吸収は思いのほか早く進んだわい

そしてバルバリスにこの痛手じゃ

条約破棄の絶好のチャンスじゃ

今、この好機を逃す手はなかろう。」


その通りだ。

平和な日常に麻痺していたのか

俺の頭はすっかりお花畑になっていたようだ。


「ふむ・・・その表情、喜んではおらんの」


うーん

やっぱり俺は顔に直ぐ出るのか


「地上のアモン殿には恩もある

爺も敵に回すのは絶対に避けたいと言っておった。

そして何より今回の地上遠征

その主たる目的はババァル様の捜索じゃ」


そうだ。

頭から抜け落ちた原因のひとつだ。

ババァル捜索として仲間だったはずだ。

だから助けたのだ。


「じゃあ止めてくれても良いんじゃないか

捜索に当たってはベレンを戦場にしても

有利に事は運ばない。」


そうだ。

いや本当にそうか?

教会といくら仲良くしたって

魔王捜索に協力してくれるとは思えない。


前回もそうだった。

目の前の出来事に対処しっぱなしで

俺は自身の目的もハッキリしないまま

流され続けてあの有様だ。


絶妙なバランスを保っては来たが

永続的に保てる様なモノでは無い

神と悪魔だ。


和解も共存も叶うハズが無い。


「妾もお主の機嫌を損ねるような真似はしとうない

じゃがの、そうも言っとれん状況になった。」


予想外のセリフだった。

つまり

その何かが起きなければ

ビルジバイツはベレン占拠を

俺の機嫌と天秤に掛け

思いとどまるつもりだったと言う事だ。


「何が起きたんだ。」


分からないので素直に聞いた。

ビルジバイツは大人びた表情で

冷静に静かに言った。


「起きたのではなく

これから起きるのじゃ。

司教も感知しておる頃じゃろう

確認してみると良い

・・・降臨が始まるぞや。」


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