第三百七十一話 四天王の恥
取り合えずドーマに行こうとなった時
俺は時空系に違和感を感じた。
「どうかしましたか。」
察しの良いシロウは
そう聞いて来た。
「敵の増援かな?」
俺がそう言いうと同時に
あの光の扉が展開されていき
中からお仲間が出て来た。
「おいおいララの奴
やられちまったみたいだぞ。」
出て来たのは1人
中肉中背男子型で
皮膚が赤い
赤男と呼ぼう。
「ふっ所詮は庶民の出
成り上がりで四天王になったが
我らの中でも最弱よ。」
別の光の扉が遅れて輝き
また別の奴が出て来てそう言った。
長身で痩身、皮膚が青い
青男と呼ぼう。
「何者だ!!」
咄嗟に構えるシロウ。
俺はストレージから椅子を二つ出し
並べて言った。
「あ、こっから結構長いので
座ってましょう。」
「はい?」
「色々解説してくれると思うので」
俺はもうどっかり座ってそう言った。
そんな俺の様子とカエル軍団を
見比べてどうしようか迷うシロウ。
「俺ら四天王の面汚しだったな。
敵さんに感謝か?」
赤男の調子に青男は諫めた。
「ふっ言ってやるな。
これでも同士だったんだ。
仇を討とうじゃないか。」
殉職したと言うのに
この言われよう
ララとやらも可哀想だな。
で
どれがララだったんだろう
思うにあの権力の無かったリーダーっぽい
女性型かな。
まぁどれでもいいか。
「何を言ってるのか分かりませんねぇ」
シロウは首を傾げて椅子にようやく腰掛けた。
ああ翻訳機能が無いのか
バングの言語はシロウのデーターで
分かっていたが
こいつらメタボの言語はわからんよなぁ
俺は今までの会話を話した。
「俺がやっていいか」
赤男がそう言うと
青男が返した。
「お誂え向きに丁度、二人じゃないか」
「へっじゃあ金ぴかは俺な」
俺の相手は赤男か
「ふっ、いいだろう。こっちが終わって
まだ手こずるようなら手伝ってやらん事も無いぞ。」
青男はシロウか
俺はそれもシロウに説明した。
「こっちのセリフだぜ。
えーっと・・・あーあーおい先着土人ども」
赤男はマスクに付いている
ダイアルみたいなのを弄りながら
そう言った。
おっと発声している言語が
バルバリスの公用語になったぞ。
「はい先着土人です。」
俺の発した音声もバルバリスの公用語だ。
「なんですか、あのマスクは
通訳の魔法が掛かっているのですか」
驚くシロウ
そんな魔法は無いが
俺はそうだと言って置いた。
「えーっと、この世界は俺達が
頂く従って速やかに滅べ、以上。」
俺は手を挙げて言った。
「冥土の土産にそちらの世界の
状況を教えてくださーい。」
「はぁ?どうせ死ぬからいいだろう」
赤男はそう言ったが
青男は笑って突っ込んだ。
「だから、どうせ死ぬなら
せめて教えてくださいと相手は
頼んでいるですよ。
その返しは無いだろう。
意味分かってないのか。」
「い意味ぐらい分かってらぁ
面倒くさいって言ってんだよ。」
赤い男が赤くなって怒った。
分かって無かったのか
「じゃあ俺が教えてやろう。
替わりにこっちの質問にも
答えてもらうぞ。何が聞きたいのだ」
俺はそちらの世界の消滅状況を尋ねた。
「ほう、この文明レベルで
事態を多少なりとも
理解していたとは驚きだ。」
青男はそう言って語り出した。
長かったのでシロウも座った。
俺はもう二つ椅子を出して
勧めるとカエル二人も椅子に
座って話を続けた。
何だこの絵は
金ぴか悪魔と緑のバッタ怪人と
赤と青のカエル人間が崩壊した
公園で椅子に座って談笑している。
青男の話を纏めるとこうだ。
既に母星は滅んだ後で
植民宇宙船で新天地を探す航海の最中
宇宙そのものの終了が発覚
慌てて時空跳躍船を建造。
4隻が崩壊に間に合い完成
選ばれたエリートが乗り込み
時空跳躍し今、消滅空間に停船
ようやく他の宇宙に介入出来たそうだ。
自分達の生態系とかけ離れた環境だったが
他の宇宙が見つからず
船の耐久時間を考え
この世界の環境を変える方向で
介入する事が決まったそうだ。
入り口を開くのは母船の力なので
ララは勿論、赤も青も出入口が異なったのだ。
四天王がそれぞれの母船の長だという。
「ララの母船がどうなっているか分かるか」
俺がそう聞くと
赤男も青男の方を向き言った。
「分かるか?」
「ちょっと待ってろ」
そう答えると青男は腕時計タイプの
通信機を操作し始めたが
何か表情がビクビク動いている
思わしくないようだ。
赤男の腕にも同じ装置が付いているのだが
機械が苦手なのか青男に投げた。
マシな方の青男も手こずっている。
文明は進んだが完全に設計者と
利用者の剥離が究極に進んだようだ。
俺の元の世界でも
車の運転は出来るが
組み立てられる者は少ないだろう。
ボンネットすら開けた事の無い
ドライバーも多い。
「・・・通信状況が良く無いようだな」
あの爆風、母船逝ったか。
「では、こちらから質問だ。」
装置の走査を止めると
青男はそう言った。
「ララの侵攻作戦、この世界の支配種の
都市の制圧と環境の最適化
それとサンプルの採取だったんだが
報告の無いまま返り討ちだ。
作戦は何処まで進んだのだ。」
それを敵に聞くのか
何かこいつらの常識おかしすぎないか
「都市の破壊を許す替わりに
支配種は避難済みだ。
サンプル採取は失敗
俺達は支配種の替わりに
戦闘を受け持つ者だ。ララとやらも
俺達が倒した。」
俺はそう言った。
俺達と表現したが
シロウは間違いを訂正する素振りを見せなかった。
間に合えばそうなっていたのだ。
内容的に問題は無いと
思ってくれた様だ。
「あーひとつよろしいですかねぇ」
シロウが俺に続いた。
「戦わずに済ます方法は無いものでしょうか
我々の世界では多種族が共存している世界です」
俺はギクリとした。
それ三半機関の主題だ。
俺が言い出さねばいけない事だった。
ベレンの惨状にすっかり頭から抜け落ちていた。
「・・・他種族と言っても
全てこの世界で産まれた者達だろう。
異世界の者が定着するには
その世界で主権を取るしかない。」
青男がそういい
赤男が続いた。
「それも元の世界が消滅する前にな
その共存の可能性があったとしても
探している時間は無ぇな。」
「そう言う事だ。
さて、あまり時間を掛けると
カイカイ様の怒りに触れる。
そろそろ始めようか。」
青男がそう言って立ち上がった。
「だな。四天王最強の男を
怒らせるたら俺達が危うい。」
赤男も立ち上がった。
「ん、分かった。」
俺もそう言って立ち上がる。
「私が言えた義理では有りませんが
哀しい運命ですねぇ。」
最後に立ち上がったシロウに
俺は小声でアドバイスを耳打ちした。
「おや、作戦かい。」
「ふっ良いじゃないか
どうせ結果は変わらんのだ。」
カエル軍団は余裕の様子だ。
馬鹿な連中だ。
俺が話を要求したのは
消費した金属を補給する為の
ただの時間稼ぎだ。
手前らの事情なんざどうでも良いわ。
長い話のお陰で地中から
タップリ吸収させてもらった。
さぁ二つの世界の命運を掛けた
第二回戦の始まりだ。




