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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三十七話 異常事態

ブスブスと音と煙を上げ

力無く横たわる下級天使。


最高位の大天使で

四大天使の一人でもある

大地と裁きのウル

その人である。


「やりすぎじゃないか」


俺とミカリンの息ピッタリのコンビ攻撃は

さながらピタゴラスイッチの様だった。

散々もてあそばれた挙句

足元に転がる哀れな姿を見下ろして

俺は言った。

しかしミカリンは情け容赦無く言った。


「起きろ」


おいおい意識無いだろ

そう思ったが、なんとゾンビの様に

気絶しながらもウルは上体を起こした。


「こんな体だけど、権限は有効みたいなだね」


詳しく聞いて見ると

天使は上の位の天使の命令に強制力があり

天使長ともなれば全ての天使を制限可能だそうだ。

俺はふーんと聞き流したが

かなりヤバいんじゃないの今の状況って

その天使長が今奴隷だよ

俺、命令し放題なんだよ。


「ぐ・・・ぅ」


すごい「起きろ」の命令で

失った意識すら回復した。


「・・・ミカ?ミカなのか」


「久しぶりー何してるの」


「何では無い!お前を探しに来たんだ」


「えー変だなーそれ」


ミカリンの話によると

2~3百年程度、行方不明などは

良くある事だそうで

その程度で四大天使がグレードダウンまで

行って捜索など大袈裟だと言うのだ。


スケールがデカい

2~3百年行方不明が

プチ家出程度の認識でOKだ。


「本当の理由は?」


ミカリンの説明に答えず

俺を睨むウル。

ミカリンは察して俺に聞いて来た。


「あ、僕の状況をウルに説明してもいい?主様」


こいつは知っていても良いだろう。

ただ、俺自身が前回のウルの仇だ。

俺があの魔神だと知れば

襲い掛かって来ないかと思ったが

呪いを発動させればミカリンにダメージが行く

そうなれば手出しは出来まい


返事の変わりに頷く俺。


「・・・あ主様?だと」


ウルはミカリンの言った「主」に

驚いている。


「んーと、ウルが知らないのは」


ミカリンはウル退場後の最終決戦からの

下りを説明した。


腕を組み黙って聞いていたウルは

話が終わると呻いた。


「ぬぅう。そんな事になっていたとは・・・。」


「そういうワケで今の僕は奴隷なんだ

もう、色々されちゃったしね。」


「「何だと?!」」


同時に驚くウルと俺。


「おい、俺が何したっていうんだ」


あれこれ面倒みてやって

大事にしたじゃないか

感謝されこそすれ

文句を言われる様な事は無いぞ。

食って掛かる俺にミカリンはあっさり答えた。


「えーとね裸に剥かれて、全身舐めまわされて

唇も奪われたでしょ・・・後は・・・。」


「そんな事!!・・・した」


したわ。


過去振り返ってみれば

色々してるなぁ

ごめんなさい。


「貴様!!許さん殺す!!」


そりゃ怒るわな。

ウルは激昂し立ち上がる。

ボロボロの割には元気だ。


ウルが攻撃態勢に入る前に

ミカリンが制した。


「アモンへの無礼な振舞いを禁ず。」


「失礼いたしました。」


激昂が嘘の様に一瞬で笑顔に

変わり跪くウル。


怒るより怖かった。

天使長権限怖い。


「・・・くっ」


笑顔が引きつっているウル。

強制力に抗っているのだろう。


「人の話聞いてた?アモンへの

ダメージは僕に降りかかって来るんだよ」


普段は発動させていないので

キッチリ俺にダメージが入っているが

絶命するようなダメージの場合は

本人の意識関係無しに

強制発動してしまうらしい。


「そうだ。気をつけたまへウルポン」


俺のセリフに反応し

すんごい速度で顔が

ピクピクしている。

もはや顔芸の領域に入り始めた

ウルの顔。

こいつ煽り耐性が

俺より低いんじゃないか

からかうのは程々にしておこう。


「で、話戻すよ。人間界に来た

本当の目的は何?答えろ命令ね」


ミカリンが改めてウルを問いただす。


「本当に捜索だ。俺はな・・・」


「他に誰が来ているの?」


「ラハとブリも同じように来ている。」


おお

俺は横から会話に割り込む。


「ブリっぺに会いたいな呼べないか」


「・・・・。」


俺の質問にガン無視するウル。

相当嫌われているな、こりゃ

まぁ当然だわな。


「答えなさい」


気を利かせたミカリンが問いただす。


「くぅ、交信の手段が無い、

場所も分かれて捜索している。

会うのは無理だろう」


そうか残念だ。

是非、名付のコツを伝授して欲しかった。


「・・・ラハの奴なら知ってそうだね」


天使長権限の強制力は

嘘も不可能なのだろう。

ウルの言った事を信用しているミカリンは

そう言った。


「関係あるかは分からんが・・・」


そう言ってウルが話を始めた。


「うん。言って」


「界記録に狂いが生じているようだ」


「なんだって!?」


やたら驚くミカリン。

何をそんなに驚く事があるのだろう

記録が塗り替えられるなんて

当たり前の事だろう


記録

それは、いつも儚い

ひとつの記録は一瞬で破られる運命にあるのだ。


俺は界記録とは何かを聞いた。


ミカリンはちょっと悩んだ後に

説明してくれた。


界記録

天界にある石板で

天まで届く程巨大だそうだ。

天界なのに更に天とはスゴイね

そしてそれには

この世の初めから終わりまでが

記録されている。

予言と違うのは

こうなるかもよって言う「予想」では無く

そういう事があったんだよと言う「記録」だと

言う点だ。

石板の正体は

何でも時の神ケイシオンそのものらしい。


俺の元の世界に例えると

鳴らしっぱなしのCDかな

CD-Rと違い書き換え不可能だ。

現在がヘッドで今再生している音だ。

先に何が書いてあるのか

知る方法が無いらしいので

困っているそうだ。


あんまり意味無いよね。


「どうせ分からない先の事が

どうして狂ったって分かるんだ」


俺は普通に疑問を投げかけた。


「過去の事実に変化が生じたらしい」


らしい、と表現したのは

四大天使でも石板の場所には

立ち入り禁止で

極少ない限られた神々だけが

出入りしているのだが

その連中の慌てふためきっぷりから

想像するに、それしか無いという予想だ。


既に経過した過去の記録は読める状態だ。

変わるハズの無い過去が変わってしまった。

絶対が揺らいだ。

それはもう大騒ぎだそうだ。


「今回の捜索も、その手掛かり欲しさ

と言ったトコロだろう」


「ウルにしては考えたね」


普段何も考えないキャラなのか


「だが、どうやら当たりじゃないのか」


そこでウルは俺を睨み

強い口調で言った。


「三界以外のナニかが魔神を乗っ取り

大天使を奴隷にして人の姿で

今ここにいる。異常事態だ」


「大変じゃないか」


俺も驚いた。

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