表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
369/524

第三百六十八話 ベレン崩壊

結論から言うと敗北だ。

ベレンはもう都市として機能しないだろう。


メタボの大群は生き物、建物の区別なく

そこら中に取り付き

立体の物は全て溶かして行った。


取りつかれなければ問題無い

その認識が甘かった。

いや

これだけの大群で無ければこうはならなかった。

溶けた際に生じる蒸気というかガスというか

これにも酸が含まれた。

微量なら咳き込む程度だが

これだけ濃度が濃いと肺を容易に溶かし

閉じた瞼も溶着する状態だ。

ベレンが風通しの悪い城壁に

囲まれた都市だったことも災いした。


死者の多くは取り付かれた事より

この酸の霧で命を奪われていた。


多分・・・

数えてられん。


川に囲まれ

高い城壁

守るに固い都市だったベレンが

メタボ相手には

自分の首を絞める結果になってしまった。


連中は川を上って来た。

市内に引き入れる用水路から

とめどなく溢れ続けた。


「悪魔光線」


通りすがり

建物にのしかかり溶かし続けている

10m級のメタボ、とにかく目についた

大きい個体から優先して破壊していく

倒すのは容易な相手だ。

悪魔光線は勿論

地面に居ればスパイク

そうでなけれな火球ファイアボールでも雷撃でも

何でも効いた。


この濃度では呼吸する生き物は

どうせ生きていないのだ。


もう周囲の巻き込みを気にする必要は無いので

建物ごと遠慮無く破壊していった。


形態も目撃者が同様にいるハズ無いので

悪魔男爵バロンだ。

取りつかれた時、溶かされてちょっと慌てた。

触れている状態なら金属は変形操作可能だ。

すかさず金を表面に展開し

なんか、倒したらゲーム内通貨

いっぱい貰えそうなアモン状態で

市内のメタボを狩りまくった。


粗方あらかた倒し終わった。

まぁ

それは向こうも同じだが


今、ベレンで動くモノは

俺以外は溶解が進み

耐久の限界が越えて崩れる建物その他だけだ。


「ロンドンか摩周湖か」


酸の霧で視界が悪い

眼球も金でコートしているので

その分精度は落ちているが

もう見るべきものは残ってはいない。


疲労する事は無いのだが

精神的に来た。


俺は丁度良い高さの物体

んー多分ゴミ回収のコンテナっぽい物かな

色々溶けかかっていて良く分からない。


とにかく腰掛けた。


壊れた。


俺はそのまま尻もちを着いた。


「わぁ」

「きゃあああ」


悲鳴

俺は瞬時に気合を入れて

声のした方を全力走査した。


人族の子供負二人

コンテナに入って難を逃れていたのだ。

生存者だ。


「息をするな目も瞑れ!」


返事を待つ余裕は無い

俺はそう言いながら二人を抱えると

デスラーホールで地下へ

戻りの5秒の間に

一番近い地下通路まで貫通する悪魔光線を

照射し穴を空けながら飛行した。


地下通路まで貫通すると二人を降ろし

今空けた穴に振り返る

ガスはまだ迫って来ていない

デスラホールが閉じるのが見えた。


ガスが来ないなら

慌てて穴を塞ぐ必要は無い


俺は半魔化、冒険者ゼータになった。

金ピカ悪魔男爵バロンでは子供も怖がって

話にならないだろう。


ストレージから松明を出し着火した。

光苔は生き物なので俺には生成出来ない

なので地下通路にはポツリポツリと

点在しているだけ

こっちに進めますよと分かるが

近づいても文字が読める程の光量は無いのだ。


オレンジ色の炎に

子供二人の怯え切った顔が照らし出された。


「怪我は?痛い所とか無いか」


兄と妹か

まだ幼いな。


「今の・・・悪魔は?」


兄の方が頑張って言葉を発した。

偉いぞお兄ちゃん。


「あれは俺の魔法だ。人間より頑丈だからな

戦う時は変身するんだ。」


俺はデビルアイで二人を走査した

治療が必要な状態では無かった。


俺は二人の頭を撫でながら言った。


「よく頑張ったな、もう大丈夫だ。」


泣き出す二人。

怖かったろうな。

存分に泣かせてやった。


「誰か居るんですかーっ?」


遠くから

物凄いエコーの掛かった声が聞こえた。

その聞き覚えのある声に

俺も涙が出そうだ。

さっきまでの平和が懐かしい。


「アリア!こっちだ」


学園長の部屋で聞いた通信

俺はすかさず屋上に飛び出して

デビルアイ望遠で市内を見て

避難を優先する事を決断した。


もう市内は地獄図が始まっていたのだ。


翼を展開し人目も構わず飛行し

アリアとファーに生徒を出来る限り

地下通路に導く様に頼むと

少しでも被害を減らすために

悪魔男爵バロン化して近場から

メタボを狩った


狩って狩って狩り続けた。


まだ助かる被害者も

大勢いたが見捨てた。

治療魔法には人化しないとならない

そして治療魔法中は無防備だ。


数えるのも馬鹿らしい程

メタボが溢れかえった状態だった。


俺はメタボ掃討を優先した。

いや人化した所を襲われるのが

単純に怖かっただけだ。


俺は卑怯者だな。


「イーさん!!」


この姿だとそう呼ぶか

アリアは松明の灯りを頼りに

こちらに走って来て

俺に抱き着いて来た。


報告をしている様だが

号泣しながらなので

何言っているのか分からなかった。


若くても彼女は工作員だ。

すぐに泣き止むと

冷静に戻・・・った振りだな。

奮い立たせているのが分かった。


「他に助かった人は・・・?」


俺は首を横に振りながら答えた。


「分からん。倒すので精一杯で

ロクに救助出来なかった。」


「・・・仕方がありませんよ。」


「ああ、そうだな。この子達を頼む」


アリアに生徒の避難状況を聞くと

警鐘のおかげで避難はスムーズに行われ

目の前に敵が見えていない事もあって

パニックなどは起こらなかったそうだ。

裏三半機関が学園カーストの上位の者を

採用していた事も幸いした。

ファーの指示出しは見事だったそうだ。

最後は教師までもがファーに

指示を請うたそうだ。


「本当に見事でしたよ。」


調停者フィクサーの面目躍如だな。


俺はこれからの指示を伝えた。


酸性のガスが上では充満しているので

絶対に地上に出ない事


地上に出る為にメタボの進行して来なかった

南側、ドーマの裏口から丘の射出口を

目指す事、そこが一番安全と思われる出口だ。


「一緒に来ては・・・。」


言いかけて

俺が行かない事を予想が着いた様子のアリア。


「表に出られるのは俺だけだ

無駄かもしれんが、この子達みたいに

助けを待っている人がまだ居るかも知れない。」


「分かりました。お願いします」


「終わったら俺も射出口に行く

そこで改めて合流だ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ