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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百六十七話 仁義なき兄弟

爆睡した。

もうお昼だった。


朝に何かアリアと話した気がするが

何を言ったのか覚えていない。

ああいう時に肉体を動かしているのは

誰なんだろうね。

どんなプログラムなんだろうか

単純に覚えていないだけで

他人が動かしているワケじゃないのは

分かっているが

そう思える程

覚えがない。


なので今、目の前にある

共用スペースの食事

パンや飲み物がテーブルに乗っているのだが

フレアお勧めメニューだった事から


俺がアリアに依頼したんだよな

きっと


「食っても・・・いいよな」


俺は食いながら

そう呟いた。


ここ一か月の活動は

社会や組織などと離れた行動だったせいで

曜日感覚が無い

アリアが居ないのだから

授業のある平日なのは分かるが

いつなんだろう。


あの曜日感覚って

「後何日で休みだーっ」って数えるから

強く認識するんだな。

毎日、休みだと何曜日でも関係無いわ。


食い終わると

早速、胃が仕事をして

脳に栄養が回って来た様だ。

次第に意識がハッキリとしてきた。


「ボタン掛け違えてんじゃん」


などと自分の恰好にも

注意が回って来た。


おかしいな

風呂上りに

着替えた時はちゃんとしていたんだが

まぁいいか、どうせ着替えるし


後片付けをして

久しぶりに制服に着替えた。


工作員スキルを使用し

窓から屋根伝いに移動し

半魔化の重力操作で

学園長の部屋まで移動した。


ヨハンいるかな。


ノックもせずに扉を開けた。

何の抵抗も無く扉は開いた。

施錠されていない。


「なんじゃこりゃあ!!」


思わずデカい声を出してしまった。

学園長室は物置と化していた。

いや、これは武器庫か

もう体を横に向けないと通れない程

剣やら鎧やら所狭しと並んでいた。


「お兄貴か、入れよ」


武器の山の向こうからヨハンの声がした。

いや

もう入ってるんですけど


俺は触らない様に慎重に

通過するが袖が引っかかって

鎧の腕パーツが落ち

派手な音がした。

その腕パーツが持っていた剣が

顔面直前を通過する。

鼻に風圧が掛かった。


「気を付けないと危ねぇぞ」


音を聞いたヨハンが心配そうに言った。


「気を付けても危ねぇよ」


落ちたパーツを拾おうとして

尻が後ろの鎧にぶつかった。


ハッと振り向くと

ドミノ倒しが始まりそうになっていた。


「駐輪場かよ!!」


俺はそう叫んで高速移動を使用し

悲劇の連鎖を寸前で食い止めた。


「ふーっ」


コメディ映画なら

実は助かっておらず

見ないトコロでもっと悲惨な悲劇が

始まってしまっている。


俺は慎重に辺りをチェックするが

大丈夫の様だった。


ここは屋上に設置された部屋なのに

どうやってこんなに運び込んだんだ。

大砲もあるぞ。


「良く来たな。座ってくれ」


どこに


そう突っ込もうかと思ったが

学園長のテーブル周囲は

広く空いていた。


「部屋に入ってからの方が大変だったぞ。」


俺はその辺の椅子に適当に腰掛けて言った。

更に続けた。


「何だよコレは」


「何って、兄貴は俺の趣味知っているだろ」


バリエアの隠れ家も武器庫だった。

そうだコイツは武器コレクターなのだ。

地震の後の津波で

建物ごとすっかり流されたハズだが

また性懲りもなく集めていたのか。


「いや、ここに持ち込む必要はないだろ

ハンス怒るぞ」


「自分の部屋に飾るんだよ。

ハンスに返す時は元に戻すさ」


ふと見れば

対バング用の槍もあった。

コレの貸し借りで魔族とドワーフが

危なかったという一品なのに

こいつ権力使ってちょろまかしやがったな。


「ハンスって言えば秘術の宝珠が破壊されたんだが

本当に無事なのか。」


「ああ、現場にいた。盗み聞きに

気が付いたストレガがぶっ壊したんだよ。」


笑うヨハン。

宝珠破壊っていいのか

貴重な品物じゃないのアレ


「そうか。ストレガも元気そうで何よりだ」


「本格的な隠居先を用意してやらにゃならんな

ウリハルを戻すとなるとストレガが

ヒタイングに居る理由が無くなっちまう。」


ウリハルを匿うついでに

護衛として一緒にヒタイングに居て貰ったのだ。


「俺は、そうだな暖かい所がいいな。」


ヨハンは自分の希望を言った。


「何でお前の希望が」


「え?俺も隠居させてくれるんだろ」


「え?」


「え?」


俺は背もたれにゆっくりと

体を預けるとゆっくり言った。


「何でお前まで隠居するんだ。」


「俺だってストレガと同じだろ

年を取らないままじゃ周囲が不審に思う。」


ヨハンは悪魔の契約1号の改造人間だ。

当時、バリエアに蔓延っていた悪魔と戦う為に

全盛期の肉体に戻した。

それでも悪魔相手だと不安があったので

プラスαで俺が過剰サービスで改造し

老化が止まっている状態だ。


「いやお前の不老は表向き神の御加護だから

むしろ奇跡の体現者として

未来永劫最高指導者として君臨してもらうと

ユークリッドが言っていたぞ。」


「マジかよ!!」


嘘だよ。

でも多分そう思ってるぞ。

あの人


「鬼かよ!」


鬼だよ。


「そうだ。ユーさん引き取れよ

何で俺んちにいるんだよ。」


「え?」


「え?」


ヨハンは背もたれにゆっくりと

体を預けると言った。


「教会の決定が出るまで

アモンさんが身柄を預かるって

ユーは言っていたぜ。」


言ってねぇよ

あの野郎上手く立ち回りやがって

ええい、面倒くさい

それでいいや


「じゃあ決定してくれよ。

引き渡すからさぁ」


「・・・各所に散った9大司教が

再集合するにはひと月掛かるんじゃねぇかなぁ

トーマスなんてバリエアに着いたばかりだぜ」


ああ、それはキツいよな。

もう長距離の移動を何度もさせるのは忍びない

人の良さそうなおじいさんだった。


「うーん。最高指導者なんだから

ヨハンが強引に決められないのか」


「前にも言ったが独裁ってワケには

いかねぇんだ。更にユークリッドとなると

他の司教とは決定的に違ってな」


国王、エロル・バルバリスの旧友だそうだ。

兄みたいな立場で遠征にも同行した程だ。


「弄りにくいなぁ」


「だろ。」


くそう

じゃあユークリッドでなく

神の方を押し付けるか


「じゃ神の方を引き取ってくれ」


「え?」


「あ、言ってないか・・・あのな」


俺はミネバ合流の顛末を話した。


「やっぱり兄貴だったのか

調べれば調べる程、有り得ない状況で

パウルの影がみんな泣いてるらしいぞ。

何が起これば地形が変わるのか

報告書の書きようが無いって」


「俺じゃねーだろ。その戦略神の

神器のせいだ。」


「その戦略神は誰と戦ったんだ。」


「俺」


「兄貴じゃねーか」


「いや、ユーも居たし。」


魔神も魔王も居たんだが

コレは言わない方がいいな。


「ともかく調査はあまり意味が無い

中止させてミネバを教会で引き取ってくれ」


「えーっ無理だろ危ねぇよ。

あの破壊力をベレンでされたら滅ぶぜ。」


「おれんちは滅んでもいいのかよ」


「自分で拾って来たんだろ」


そうなのか

そうか

くそ


「えーい分かったミネバは何とか考えよう

他の神を引き取ってくれ」


カシオはまぁ負荷が無いから

ヴィータの方だな


「他の神・・・って?」


「あー・・・昨日なんだがな」


俺はヴィータと出会った話を説明した。


「頼む。せめて一匹だけでも引き取ってくれよ」


俺はそうヨハンにお願いしたが

つれない


「猫が子供産んだみたいな話になってんな」


その時、鐘がなった。

特定のリズムで鳴り続けている。

ヨハンの顔色が変わった。


「昼休み・・・じゃないよな」


俺のセリフに答えつつ

ヨハンは掛けてある上着に手を伸ばした。


「警鐘だ。それもヤバいやつだ」


上着から取り出した物は

通信の秘術の宝珠だ。

ヨハンはテーブルにそれを置いた。


それがスイッチだったかのように

宝珠は明滅を開始した。


「俺だ。何が起きた?」


宝珠から途切れ途切れに声が聞こえた。

パウルの声だ。

パウルにしては珍しく切迫した様子で

事態を伝えた。


まとめると

こんな感じだ。


緊急事態

ベレン市内全域にメタボが発生。


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