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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百六十一話 ご褒美ベルタ


教会の内装も以前より凝った感じに変わっていた。

おどろおどろしさよりも

ダークヒーローの基地みたいな

カッコよさと言おうか

中二っぽさと言おうか


聞いて見ればナリ君の趣味だそうだ。

変えていいのか黒い教会


関係者の衣装も独特の出で立ちだ

頭部から肩口までフードに山羊か何かの

頭蓋骨の仮面

肩から腰までのマント

腰から膝までのスカート

これは左右別パーツで足の動きを

阻害しない

見た目に反して動きやすいそうだ。

そして統一されておらず

それぞれ質感が異なる者

同じ材質の者様々だが

組み合わせとかで中の個人を特定出来るそうだ。

初見では体格しか違いが分からん。

角付きの仮面は中の人が魔族の時は

角無しにする。


このスタイルならば

ヒューマン、魔族、亜魔族とも

混成しても見わけが付かない。

見た目での差が無いので共存可能だ。

良く考えられたデザインと言える。

事実、今現在の教会従事者は

その3種族で構成されているそうだ。


「若、それに・・・何と救世主様」


今1人のちっこい教会従事者が

俺達を確認するとすれ違うのを止め

そう言って立ち止まった。

直ぐに頭蓋骨の仮面を外すが

角は残った。


「ご無事だったのですね。」


仮面の下にはリリアン師の顔だ。

ナリ君についてクリシア入りしていたのか

成程、魔族の頭部の角が

頭蓋骨仮面と相まって実に自然に露出していたのだ。

角無し種族は角付き仮面を付けている感じだ。


「だから心配要らぬと申したろう。」


一応俺は消息不明だったからな。

そういえばナリ君、普通に再会して

「無事」の驚きが無かったな。


「まぁ色々ありまして」


俺はそう切り出し

ここへ来た目的を話した。

リリアンは該当する人物を

全て呼んで来ると豪語し

俺達に地下の会議室で待つように言い

急ぎ足で去っていった。


振り返りざま

スカートの下に刀を忍ばせている事が窺えた。

あの衣装、巧みに得物や構えを隠しやすい構造だ。

裏三半機関でも採用したい衣装だ。


俺達は言われた通りに

一階祭壇の奥の特別な階段。

一般の人が間違っても入って来れない作りだ。

その階段は最上階及び下級悪魔のいる

上のフロアとかつてゲートのあった地下室に

繋がる特別な階段だ。


その階段を使って地下で待った。

以前設置されていた隠し扉は撤廃されて

剥き出しだった自然の岩肌も

レンガで見事に覆われて

堂々と通行出来るようになっていた。

ゲートの無くなった今

隠しておく必要は無くなったのだ。


奥のドーム状の部屋は

今は大きな円卓が置かれ

背もたれが異常に高い椅子がならんでいた。

この部屋も壁などが増設され

かつて洞窟だったとは思えない程だ。


そして奇妙な形のオブジェが

かつてゲートのあった空間に

替わりに鎮座していた。


取り合えず俺達は

入り口に近い席に並んで座った。

椅子も円卓も大理石削り出しで

動かせそうも無いタイプだった。


「そうだナリ君。」


俺は気になって居た事を思い出した。

聞いて見よう。


「はいマスター。」


「試練どうなった。嫁探し」


元々ヒタイングに同行する原因が

何だっけ巫女のお告げで北に向かえと

言われたからだったが

アレ無意味だったら巫女訴えようぜ。フヒヒ


俺は上記を笑顔で言ったのだが

ナリ君は乗りが悪かった。


「あ、いえ、その試練はもう

何と言いますか、その

巫女のお告げも正しかったとしか

えーっ・・・あの」


すんごい歯切れが悪い。

珍しいな、どうした


俺は色々と突っ込んで聞くが

どれも有耶無耶な答えだったので

イエスかノーの質問形式に変え

絞って行き

答えに辿り着いた。


リリアンを嫁にするらしい。


「この犯罪者がーっ

何が変態紳士だーっ

食っちゃってんじゃねーか!!」


俺のは血の涙を流し

ナリ君を責めた。


「ちょまっ!まだ何もしてません

婚礼は成人まで待ちます!!」


許嫁状態か

お堅い魔族だ。

俺がするような事はしないのだろう。


「そうか。おめでとう」


北に行ったからこそ

あの修羅場を越えたからこそ

お互いを良く知り

そうなったのだ。


当たりなのだ。

巫女スゲーな

俺も見てくれないかな。


「お久しぶりです。」


そう言って二名入室して来た。

アンナとモナだ。

二人共教会従事者の恰好だ。

仮面は角ごと外れた。


「あの、本当に院長は・・・。」


葬儀に呼び戻したマリーから

話は聞いているが実際に

会ってないでの不安があるようだ。

モナは心配そうに

俺にそう尋ねて来た。


「ああ、無事だ。今ヒタイングで

いずれ隠居先が決まったら

また知らせるよ。」


実際に無事だった俺の口から

聞かされた事でやっと実感が湧いたのか

モナは本当に嬉しそうだった。

好かれてるんだなストレガは


「早速ですが・・。」


抱えていた資料を俺に渡したモナは

そう言って報告を始めた。


何の事か分からなかった俺は

少し慌ててしまうが

報告を聞いている内に

それが召喚魔法についての事だと

気が付いた。


すっかり忘れていたが

その研究でここに来たんだっけな。


俺が報告を受けている間

ナリ君はアンナと何やら話していた。


モナの報告によれば

ここ黒い教会付近は

ドーマほど空間が固定されてはおらず

召喚はしやすいとの見立てだそうだ。

魔界が引っ掛かった事にも

関係しているのかもしれない。

最新の召喚魔法陣も見せてもらったが

かなり複雑化していた。

これには下級悪魔のベルタが

怪しい程協力してくれたそうだ。


「変な事はされていないか。」


相手は悪魔だ。

モナなどひ弱な人間

平気で使い捨てにするだろう。

俺は心配になって尋ねたが


俺と親睦が深い人間ということで

気持ち悪いほど親切だそうだ。


脅しは効いていると見て良さそうだ。


一通り報告が済むと

アンナと共に退室して行った。


「肩が凝ります。」


そう言って隣の席に戻って来るナリ君。


「何を話していたんだ。」


「故郷への帰還の話です。」


現ドーマはリトルドーマとして残し

残留組と帰還組に魔族は分かれて

帰還組はここクリシアを拠点に

亜魔族と合流し山脈越えを計画しているそうだ。


一度北へ下りる遠回りのルートだが

標高を考えるとここから越える方が

山脈の攻略が段違いに楽になるそうだ。


確かに途中にリカルドの村とかもあった。

俺のリスタート地点、降臨の洞窟辺りは

最も標高が高く難所だ。

途中に人の集落も無い

ベアーマンが居るが魔族と亜魔族に

どう対応してくるか未知数だ。


「成程な、いつ頃になりそうだ。」


「まだ時期は何とも、クリシアと

バルバリスの友和の行方次第で

早くも遅くもなりましょう。

最悪、無しなんて事も・・・。」


クリシアと開戦

それぞれ敵味方に分かれ戦場に駆り出される。

ナリ君はそこまで想定していた。


「そうなる様なら

俺がバルバリスとクリシアを滅ぼすわ。

破壊力が強い方が正しいなら

俺が正義でイイよな。」


開戦とか冗談じゃ無い

今までの苦労が水の泡だ。

どうせ泡なら自分の手でぶっ壊したい。


「マスターの御手を煩わす事の無き様

尽力致します故、くれぐれも軽はずみに

決断されませぬ様、願う次第でございます。」


ナリ君は真顔でそう言って頭を下げて来た。

そんなに軽はずみで俺は破壊に移る男なのか。


「失礼いたします。」


入り口からまだ距離がある所で

そう声を発し、足音を聞こえるように

ワザと立てながら男が近づいて来た。

「来るな」と言えば直ぐ戻れる様にだ。


「ベルタか。待っていたぞ」


いきなり近づいて驚かせない為の気遣いだ。

下級悪魔のクセに使用人としての

才能がある奴だな。


「此度はお立ち寄り頂き

恐悦至極に御座います。」


恭しく挨拶をするベルタ。

恰好も人間の政治家が着る正装だ。

翼も尻尾も人化しているので

パッと見、ちょっと耳が尖った痩身の紳士だ。


「報告を聞かせてもらおうか。」


椅子を勧めたが、同じ座などトンデモナイと

言われてしまった。

まぁ好きなようにしてくれ


ベルタの報告を一通り受けた。


「お前、スゴイな。これは良くやったぞ」


正直な感想だ。

恐怖で縛る人間牧場を

俺がお気に召さないと知るやいなや

ベルタは大改革を即時に行った。

カジノ化はコイツが仕掛け人だった。


「おお褒めに与かり、この身が

喜びに満ち溢れております。」


なんかウットリした表情で

ビクビクしている気持ち良さそうだな。

見てるこっちは気持ち悪いが


他にも総理の演説安行や

西地区と東地区の住み分け

魔族歓迎の動きなど

全部コイツの指示だ。


非の打ちどころが無い。

お前本当に下級悪魔なのか


モナへの献身も

モナの口から自分の高評価を告げてもらう

そう言う下心だ。

これならモナの身は心配無い

と言うより強固な安全が保証されている状態だ。


モナの身に何かあれば

俺が激オコ

そう認識して行動しているのだ。


まぁ実際そうなんだけどね。


これは釘を刺す必要は無いな。

そうだ。


「この調子で頼むぞ。

ここまでの褒美を授けよう。」


「そのお言葉だけで十分で御座います。」


恐縮しまくりで受け取ろうとしない

ベルタを俺は説得した。


「只の褒美では無い、これを身に着ける事で

常に俺が見ていると気を引き締める効果の

ある品物だ。」


「はっ、そう言う事でしたら喜んで・・・。」


俺は左腕を出す様に言い

ストレージからお蔵入りになった

腕時計をベルタにはめてやった。


お洒落な懐中時計を身に着けていた奴だ。

これは絶対嬉しいはずだ。


「こ・・・これは・・・。」


腕に嵌められた物が

何なのか一瞬で理解したベルタ。

頭の良い奴ほどこの機械の凄さが分かるハズ

コイツもそうだった。


「このサイズで・・・こんな・・・。」


「他人に譲渡する事は禁ずる

まだ、人の世には広めない技術だ。」


その後に取り扱いの説明をしたかったのだが

ベルタは感極まり泣き出してしまった。


気持ち悪いがカワイイ奴だ。


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