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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百六十 話 銅像は没後の方が良い

朝食はオコルデに招かれ

陛下の部屋に赴く事になった。


会って一日だというのに

アンドリューとウリハルは

すっかり仲良くなってしまい

今も自然と席が隣同士になっていた。

俺はニヤニヤ

ハンスとチャッキーはハラハラだ。


「他人とは思えません。」


さり気無くアンドリューの感想を

聞いて見たウリハルの答えだが

中々良い勘をしているじゃあないか


「メタゾ掃討の労、ヒタイングの民を

代表してお礼を申し上げます。」


これも練習なんだろうな。

これからのオコルデには

この「ヒタイングに民を代表して」が

常套句になるのだろう。

ただ

メタゾじゃねぇメタボだ。

それはブットバスも気が付いた様で

顔は笑顔でこっちを向いているのだが

小声で「ボ!ボ!」と言っているのが

窺えて面白い。


「すごい髪の色だね。」

「綺麗ですね。」


オコルデの青み掛かった銀の髪

光物の魚を俺は連想するが

若い衆は純粋に綺麗だと思って居る様だ。

つかアンドリュー

お前の毛髪の色も大概だぞ。

コミケ会場とかでしか見かけない程

鮮やかな緑だ。

いつか下の方も確認してみたい。


食事が始まると

オコルデもお堅い雰囲気が崩れ

いつもの調子になった。

人型の時は細くて心配だったが

今はかなり逞しくなった様に見えた。

聞いて見ると

外での公務が多く

普段から体力作りに励んでいるそうだ。

足生えて良かったな本当に


俺の話をオコルデは聞きたがった

しかし、今はうっかり言えない事が

多すぎる俺みたいなのは話さないに

限るのだが

どんな話が良いのか聞いて見ると

学園の話だった

まぁコレなら多少バレても

大丈夫だと思い

安全な範囲で話した。

イジメグループ系は避けた方が良いよな。

少し話して分かったのだが

基本的な話でも十分だった。

スゴイ食いつき具合だ。

ウリハルとも良く話しているらしいのだが

あいつは基本お任せなので

オコルデの質問に答えられないらしい。


もしかして学園行きたいのか

学校とか通った事

無いだろうしな


食事が終わると

チャッキーとアンドリューは出発した。

後ろ髪引かれまくりのアンドリューは

度々、振り返っては

時折チャッキーに小突かれていた。

見送るウリハルも姿が見えなくなっても

まだ見送っていた。


「またお会いできるでしょうか。」


「お前が願えば、また会える。

縁とはそう言うものだ。」


などと適当な事を言ったら

キラキラ目を輝かせて頷いていた。


俺も午前中の内に城を出た。

例の海中から空中ルートで

ヒタイングの港町に入り

「メロ・めろ」でタダメシをせしめ

ミウラにメタボの事を聞いた。


「え?アレってヤバいの・・・。」


情報はあった様だが

重要視していなかった様だ。

まぁ冒険者の噂話で相手が知性の無いモンスターだ。

マフィアが興味を持たないのも道理だ。

今後増える事が予想されるので

ミウラにも対処方を伝えて置いた。


午後にはクリシアだ。

人の移動だと数日掛かる道のりも

悪魔だと速い速い

世界が狭くなった様な錯覚を覚えるが

俺は歩きも嫌いでは無かった。

歩きで無ければ見えてこないモノ

例えば道端の小さな花とか

結構多いのだ。


価値が無い

それよりも急ぐ


それも正しいが

俺は道端の花も好きだった。

これだって世界の一部だ。

急ぎ過ぎてロクに見てこなかった者が

果たして真実に辿り着けるものだろうか

そうとも思うのだ。


クリシアの変わりっぷりには

人間的にも悪魔的にも俺を驚かせた。


首都はまぁ初めてだったので

変化は分からんのだが

大きい都市で芸術度ではベレンを上回った。

何と言うかセンスの良い花寮とでも言おうか

豪華賢覧だ。


首都を抜けレイベルニの拠点

黒い教会周辺は

前回の人間牧場のあの

絶望と狂気がキレイさっぱり消え

欲望と狂喜に変わっていた。

黒い教会が無ければ

場所間違えたと思う程だ。


話に聞いていた通り

カジノの街となっていて

昼間だというのに

活気もそこそこあった。

本番の夜になったらどうなるんだコレ


俺が破壊したゴーストタウンも

教会に近い場所から

新設の建物が続々建設中だ。

人、金、物、その中で

綺麗でないクリシアがここにしわ寄せされ

開き直って活気づいていた。

まぁ何だかんだ言ってマフィアが

仕切っている国、その本拠地だからな。


これで良かったんだろうか。

ベレンに慣れたせいか

ちょっと気が咎めたが

悪魔的にはニンマリだ。

良いエネルギーに満ちていいた。

ビルジバイツ達も連れて来てやりたい。


さてと、まずベルタだな。

一番裏切りそうで怪しい。

あいつから押さえるか。


そう思って黒い教会前まで来て

俺は叫んだ。


「なんじゃこりゃあーっ」


もう俺だらけ

教会前、入り口までの広場が

俺の銅像、それも悪魔男爵バロン状態でだ

箱根俺の森美術館だ。

アモーレの鐘が鳴りそうだ。


しかも

どれもポーズが凝っていた。


左手をちょっと待ったって感じで突き出し

右手はどこを斬るつもりなのか

後方に掃ったまま

本気で斬るならもっと腰を落とさないとだが

足はピンと伸びている。

剣術を嗜んでいる者には

疑問だらけかもだが

単純にポーズとしてカッコ良かった。


その他にも

翼を広げ腕を組みつま先立ちだとか


どれもこれも表紙にしてやりたい位

決まっていた。

問題はひとつも俺が実際に

取った事無いポーズという事だ。


デビルアイでスキャンしてみると

実際の俺よりも

手足などが長目、腰回りは細目

翼は大き目と

かなりモデファイされていた。

しかし、各部位の質感などは

再現度が高い。


この製作者は俺を良く知りつつ

かなり脳内フィルターで美化している者だ。

一体誰が作ったんだ。


呆気に取られている今も

追加で一体、台座に据え付け作業中だ。

笛を吹いて誘導している者が

細かく適切に指示を出していた。

・・・ってアレ?

ナリ君じゃないのか


「ソコォ!角度は5度右ィ

行き過ぎだ5度も分からんのか!

ゆっくり戻せ、ゆっくりゆっくり

ハイ減速・・・・そこだぁ!」


向きにもこだわりがあるのか

後ろから見ていると

ナリ君は銅像そのものよりも

数歩離れ左右に位置を変えては

銅像の影をチェックしている。

角度は地面に写るシルエットへの拘りだったのだ。


そんなトコロまで拘るのか・・・。


この男、イチイチポーズが決まっていたが

自分自身にだけでは無いのか


固定作業が終了し

ロープが外され

作業員が撤収しても

ナリ君はいつまでも銅像を眺めていた。


「フム、これで良い」


何が


「マスターコレクション。

大分、揃って来たな」


そう言って振り返り

これまでの銅像も見て回っていた。

床の大理石、色違いではめられている物が

見受けられたが

どうも正式に眺める立ち位置

一番カッコよく見えるポイントを

示している様だ。


先程からそこを選んで立っては

様々な銅像を眺めて満足そうに頷いていた。


そして俺の前まで来て驚愕した。


「なっ・・・なんだこの無様な銅像は?!!」


「無様で悪かったな。」


気が付かないようだったので

そっと悪魔男爵バロン化し

これから設置される予定であろう

空き台座にコマネチで待っていたのだ。


「おおぅわ!!マスター?!」


「何しているんだ」


俺はチンチクリンに戻って

台座から下りた。


亜魔族との交流

その為の視察として魔族特使として

訪れているそうだ。


「我が王なのは内密に

構えられては真の姿が見えなくなりますので」


「特使と銅像がどう関係するのか

全く理解出来ないんだが・・・。」


「フム、英雄自身はそんな感想でしょう。」


ナリ君曰く

悪魔男爵バロンこそ二つの種族を

結びつけるこの上ないシンボルだそうだ。


「それは、何となく分かるが

こんなに必要なのか・・・。」


一個でも恥ずかしいのに


俺は心の中でバイスに謝罪した。

自分の銅像を勝手に作られるのが

こんなに恥ずかしいとは思わなかった。


「72予定しています。」


魔神72柱って

一種類で72個じゃなく

72種類を一個ずつなんだが

まぁ元の世界の話なんで

伝わるハズないか。


「本当ならドーマに設置したいのですが

教会がうるさくて敵わんのです。」


でクリシアでやりたい放題か

良いうっぷん晴らしだな。

そんな自分勝手で良いのかと思ったが

よくよく話を聞いて見ると

インフラに関わらない産業

美術・芸術に良い仕事が回っている。

更にカジノ以外の観光の目玉にも

なっているそうだ。

ナリ君が無理やりやらせている

というより芸術家達の方が

むしろ乗り気だそうだ。


「清廉潔白な神ばっかりで

ウンザリだったんですわ。」


とある芸術家の弁だそうだ。

バルバリスだと教会の力が強すぎで

こう言う作品は命が惜しくて

作れないそうだ。


うーんカジノといい

バルバリスの膿がここに出てるのか。


「マスターは何故こちらに」


「ヒタイングまで来たんでな

様子見についでだ。

モナちゃんとか心配だしな。」


「では、中で」


ナリ君はそう言って黒い教会へ俺を誘った。

亜魔族もモナも教会内にいるそうだ。


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