第三十五話 月夜の晩に
「下級悪魔だ。ダッセー」
俺を指さして笑うミカリン。
俺はステータスの状態を
確認すると確かに下級悪魔になっている。
すかさずフリックして項目を動かすと
人間状態に戻った。
感覚を掴めば魔法と同じように
メニューを開かず実行出来そうだ。
とにかく今は人に見られるのを避けたい。
俺は振り向いて、背後の丸太小屋から
アルコとボーシスが目撃していないか
確認した。
家政婦でも無い限り
そうそう都合良く見られはしないと
思うが・・・・
合掌。
念の為に小走りで小屋に戻り
中を覗くと二人は
俺達が出た時と同じ姿勢で寝息を
立てていた。
「何?内緒なの」
一連の俺の行動を見たミカリンが
首を傾げて言った。
「説明が面倒だ。喜ばしい事じゃないしな
内緒にしておけ」
「もしかして僕も?」
「そうだ。これは命令だ」
「はーい、ていうか僕は変身まだ?」
それも含めてちょっと実験だ。
俺達は少し離れて小屋からは死角に
なる場所まで移動した。
ミカリンの項目はフリックしても
変化しなかった。
レベルは20だ。
俺と同程度だとすると
今から30までの間で開放されると
思われる。
そうミカリンに説明した。
「今度バング出たら僕にやらせてね」
「出来るのか?ワナワナ震えていたクセに」
頬を膨らませて怒るミカリン。
ちょっと可愛い。
「つ・・・次は大丈夫だよ!!」
「そうか、ただ期待するなよ」
ベアーマンとブンドンの村の話から
想定するに遭遇率はかなり低い
そのせいでブンドンは情報に飢えている。
いたずらに吹聴してパニックを起こすのも
本意では無いのだろう。
情報が欲しいが大っぴらに動けない
そんなもどかしさを感じた。
さて
性能チェックだ。
俺はわくわくして
久しぶりの悪魔ボディを確かめよう。
・・・・ワクワクを返せ。
性能は残念の一言だ。
まぁ前回の俺はハイエンド悪魔だったのだ。
それに比べるのもおこがましい性能なのは
察して知るべしで
現にそう思ってはいたのだが
ここまで頼り無いとは
ガッカリだ。
思えばヨハンに集団で襲い掛かって
全て返り討ちにされていたっけなぁ。
流石レッサー
名前からして下等なのだ・・・。
それはもう冴えなくてもしょうがない
かとうだけに。
まず肉体の強度だが
陶器程度かなぁ
転んで擦り剥きはしないが
アルコの正拳で粉砕されるレベルだ。
防具装備できるならした方が良い。
魔法は神由来の僧侶系は一切使えない。
使われれば逆にダメージが入りそうだ。
精霊由来と魔界由来は使用が可能で
魔界由来、いわゆる暗黒魔法・黒魔法は
人間より効果が高かった。
武器装備による恩恵は同様
ただ僧侶専用の杖などは手に持てるが
装備した事にならず、当然補正効果も入らなかった。
まぁ唱えられないので持つ事は無いのだが
色々試さないとな。
感知能力に関しては
お待ちかねのデビルアイと膝カックン耐性が
獲得出来たが、これもレッサーなので
頼り無い事この上ない。
結論として敢えて変身するメリットは
ほとんど無い。
攻撃においては
人間状態の魔法使いの方が
馴れもあるが強いだろう。
防御に関しては
一部の毒・麻痺などは無効化出来るし
肉体も頑丈だ。出血死も無い
血が無いからな。
誰も見ていなければ悪魔で
攻撃を受けるのは有りだ。
ただ
唯一にして最大の効果は戦闘以外だ。
飛べる。
別に、この星の一等賞になる気は無いが
アイ・キャン・フライだ。
性能はヒドイもんだが
飛べる事は大きい。
高度限界は100m以下だ。
最大速度は馬程度かな
腕の立つアーチャーなら
簡単に撃ち落とせるレベルだ。
一連のテストを付き合ってくれた
ミカリンはバッサリ言って来た。
「弱いよね。」
「うん」
言うな
分かってる。
収穫には違いないが結構ガッカリだ。
しかーし
ここからだ。
前回もそうだったが
人の外見を維持しながら
悪魔の能力をどこまで再現出来るか。
前回の感触を知っている俺ならば
開発が可能だと信じていた。
「僕も早く天使になりたいな」
そう言いながら月明かりの下で
クルクル踊るミカリン。
なんのギャルゲーのキャッチフレーズだ
中々絵になってるのがムカつく
美形ってやっぱりズルい
それだけで価値が存在する。
その月とミカリンの間を
ほのかな光の粒を引きながら
飛翔するモノがあった。
ミカリンが踊っていなければ
それを鑑賞していなければ
気が付かないレベルの光の小ささだ。
俺は悪魔化して廉価デビルアイで注視した。
その飛翔体は
人型で背中からカワイイ翼が一対二枚。
頭の上には光る輪っかが見えた。
「あれ・・・天使じゃね」
俺はその物体が飛んでいる辺りを
指差しミカリンにも確認を求めた。
ミカリンは慌てるワケでもなく
普通に見上げて
普通に言った。
「うん。そうだね」




