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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百四十四話 とある世界の終わり

「・・・見事・・・だ。」


いや、だから

蹴られ続けてただけなんですけど


初回は大技3発で尽きていたシロウだが

ベルトのリバース機構が絶大な補助を発揮し

9発放っても魔力的には余裕だった。

しかし、本人の疲労で倒れた。


聞けば戦闘はおろかシロウの姿になったのも

今日で二回目だそうだ。


「馴れて無いんですから、無理させないで下さい。」


ユークリッドに戻り再び席に戻り

今度は別の飲み物をガブ飲みしていた。

すんごい汗だった。


「何で鍛えておかなかったんですか」


「用も無いのに、あんな得たいの知れない姿に

おいそれと変身しないですよ。

どんな危険があるかも分からないですからねぇ」


用も無いのに仮面被ったのが発端なんじゃ


「試しに一度やって、慌てて戻して封印ですよ。

今日は死を覚悟したので変身しましたが・・・。」


何かエリマキトカゲ思い出した。

あの襟巻はめったやたらに

広げたりしないらしい。


実の所、止めてもらって助かった。

俺の方も悪魔力及びMPを消耗した。

ここまで使ったのはリスタートでは初だ。


盾は一発でオシャカだ。

人サイズなので厚み10cm程度だが

厚み関係無く分子結合を破壊してくるのだ。

なので二回目からは1cm程度で作成し

専ら体ゲル状防御で何とか逃がした。

雷魔法に対する設置エアリスフィールドみたいな

完璧なカウンターが存在しないか模索してみたが

攻撃の正体がよく分かってないのに

そうそう都合良く見つかるハズも無く

頭を使わない

力と力のぶつかり合いに終始した。


俺もチンチクリンに戻った。

途端に襲う強烈な喉の渇きに

俺も手あたり次第に竹筒に手を伸ばした。


そうだ。

俺の方からも気になっていた事を聞くチャンスだ。

俺がしっているバングの世界は崩壊直前だけだ。

シロウのデーターに歴史があると

ユークリッドは言っていた。


俺がその歴史を適当にかいつまんで

教えて欲しいと頼んでみた。


快くとは言えないが

渋々と言うワケでも無く

ユークリッドは語ってくれた。


その世界は魔力に満ちていて

文明の初期段階から湯水の如く使用した。

俺の元の世界で例えるなら

全ての家電が減らない電池を

内蔵している感覚だろうか

エネルギーだけでなく

物質化も容易に発達し

それこそ使い捨ての物まで

魔力で賄った。

どこにでも

いくらでも有るのだ。

節約なんて発想は愚か

由来も消費後も考えもせず

使いまくって発展を続けた。

衣食住に困る事が無く

奪い合いも起きない

理想的なまでに平和に

そして環境にたいしては

乱暴に発展を遂げて行った。


俺の元の世界で地球に優しくなんて言うのは

動植物が絶滅すれば人間も

食う物が無くなって死ぬからだ。

霞みを食って生きていけたとしたら

農業なんて発展はおろか始まりもしないのだ。


言わば彼等は霞みを食って生きていけた様なものだった。

数千年の繁栄に伴う環境の破壊が遂に

取り返しの付かない事態を招いた。

覇者であるグレイ達以外の

動植物は一部の愛玩用を除いて絶滅していった。

それに合わせ少しずつ世界の魔力は

減少していった。


減るハズの無いと思って居たモノが減った。

それも代替の無いままだ。


慌てて魔力の研究、使用方法で無く

生成の理屈に着手し

それが大小問わない数多の生命体に

よるものだと判明した時は

もう手遅れだった。


そして絶滅に追い打ちが掛かった。

彼等の種としての限界とおうか

終焉と言ううべきか

繁殖能力の衰退が起きた。

あらゆる手段で次世代を生み出そうと

試みるも新たな命が芽吹く事は無く

外的要因の無いまま緩やかに

絶滅へと向かっていった。


全ての民がそれを受け入れた訳では無く

最後まで抵抗した者達が

0型、ハヤトを作り出した。

ハヤトは弱った主に代わり

種の保存と存続の手立ての発見に奔走した。


ついには時空を超え

他の世界の生き物を取って帰っては

ハイブリッドを試し

主達の復活を幾度と無く試みるも

保管庫のカプセルは増えていく一方だった。


比較にならない程の生命力


現状を打開するには

もうそれしか無いとハヤトは考え

この世界の特別な力


勇者の力に目を付けたのだ。


以上がユークリッドが

ざっくりと教えてくれた

バング側の歴史だ。


結局、その望みは叶わず

時間切れを迎え

彼等の世界は崩壊した。


ケイシオンの話が本当だとしたら

彼等は痕跡すら残せず

きっとオカルトの中に消えるだろう。

優れた科学力を持ち遠い星から

訪れ牛や人をさらって実験するモンスターだ。


もしかしたら崩壊は遠い過去で

既に俺の元の世界で

そういう扱いになっていたとも

考えられるが

うーん

ユークリッドじゃないが

考えても仕方が無いし

もうその意味も無いな。


日差しがキツいというので

ヒタイング海水浴セット一式を

取り出して広げ

二人でビーチッベッドに転がった。


「これ良いですねぇ」


パラソルの下

法衣の上着など堅苦しい奴を

片っ端から脱いで

思いっきりラフな格好で

ユークリッドは寝転び

喜んでいた。


本気でくつろいでいた。


俺も同様だ。


2回戦の疲れが素の肉体にも

影響するようで

瞬く間にユークリッドは寝息を立て始めた。


俺の方は子供ボディなので

そんなに昼寝を必要としない

寝転がりながら考えを進めた。


ガバガバの勇者の力は受け継がれた。

そしてそれはウリハルにでは無い。


勇者がいつまでも開放されないのも

ハヤトが「無い」と言った事も

カシオが「あの場に勇者はいない」と言ったことも

ウリハルがそもそも勇者で無い事を裏付けている。


もう事実と考えるべきだろう。


では勇者の力は何処に行ったのか


まず頭に浮かんだのは影武者だ。

本物のウリハルは何処か別に居て

俺達のウリハル、ガルド学園に入学して

これまで一緒に過ごした彼女は

ウリハルの影武者という仮定だ。


しかし、これには疑問がいくつもある。


入学式で見た夫妻の態度

内緒で送りつけられたプラチナの鎧

どう考えても実の子供に対する愛情で

溢れていた。

あれら全てが演技とは

俺には思えなかった。


ウリハル自身もお姫様を演じている感じでは無かった。

もし替え玉ならパーティー表示で工作員などが

出てこないといけない。

あいつは本当にお姫様だ。


更にユークリッドが影武者に

引っ掛かるのも変だ。

9大司教が勇者の所在、及び

防衛体制を知らされていないなど

これはちょっと考えにくい。


・・・ユーの微妙な変化に

気付いた別の司教が仕込んだとも

考えられるが、こんな大掛かりな事を

他の9大司教に、特にあのユークリッド相手に

内緒で進められるものだろうか。


ウリハルは間違い無くガバガバの娘。


だとすれば今度は勇者の力の紛失だ。

ドコに行ったというのだ。


・・・駄目だ。

堂々巡りだな。


俺は考えるのを止めた。

我が弟子に言わせれば

どうせいくら考えても

考えれば考えるだけ真実から

遠くなるらしいからな俺は


気が付けばユークリッドは

いびきをかいていた。

熟睡だよ。


・・・放置して帰るか


そんな事を思っていると

影の中で隠密を命じてあったダークが

動き出し表に出て来た。


俺の命令を反故にするような奴じゃない

何か緊急事態って事か

俺はすかさずセンサー系を稼働させつつ

ダークに問い掛けた。


「どうした。何かあるのか」


ダークは何か探る様に

周囲を見回し、やがて方向を探り当てると

紹介するように手を翳し

膝を着いて畏まった。


その方角

進めばミガウィン地方になる方角から

土煙が上がっていた。

何かがこっちに向かっているようだ。

完全膝カックン耐性のレンジを広げて

見て見ると、同じ地点に

もう一つ反応があり、位置は直上だ。

飛んでいるのか


誰だか分かったので

センサー系を通常状態に戻して

俺は椅子を出しダークに並べさせた。


「アモン殿ーっご無事かーっ!!

ピンチなら強制召喚で私を呼べ馬鹿者ーっ

お陰で全力疾走だ。疲れたぞーっ

休ませろーっ!!」


土煙の元凶がそう叫んでこちらに到着した。

以前、アモン2000を地上なら最速と

言ったが改めた方が良さそうだ。

13将の全力疾走はそれほど速い。

まぁ魔神を比較にだすのはおかしいか

例外扱いだ。


「どうした・・・ナナイ」


「今、私の名前を思い出すのに

手間取ったろう!!」


細かい事を気にする奴だな。

何せ久しぶり過ぎだ。

呼び出した事も忘れるほどだ。

仕方ないだろ。


「それにどうしたはこっちのセリフだ。

何があった?敵は?」


冠婚葬祭を構え周囲を見回すナナイ。


「ナナイ殿、敵はもういないでござるよ。

安心して剣を収められよ。」


ダークの言う事は素直に聞くナナイ

ここもムカつくんだよなぁ。


聞いて見れば

召喚者への過大なダメージは

知覚できるそうだ。

自身のこの世界における存在の楔だ。

その危機は分かる様になっているらしい。

それを感じ取り慌てて飛んで来たというのだ。


「まるで忠臣みたいだな。」


「まるでで無く忠臣そのものだ。」


召喚システムの基幹だそうだ。

呼び出され従うと納得した以上そうなるらしい。

呼び出した相手が脆弱だった場合は

その時点で葬ったり、乗っ取ったり

騙くらかして召喚者に不利な契約を

結ばせたりなど色々だそうだが

全て召喚時に決定する。

ナナイは素直・・・に従ったので

普通に成功した召喚だそうだ。


「ダークは平気だったのか?」


「隠密を命じられたが故

耐えましたが良いモノではござらん

肝が冷えましたぞ・・・。」


やはりシロウのキックは

尋常でない破壊力と言う事だ。


「馬鹿者ーっ主様を置いて

先に行くやつがあるかー!!」


フクロウも飛んで来てそう言った。


・・・お前も置いて来てんじゃねぇか。


そのフクロウの遥か後方で昆虫の様な羽を展開し

ヨタヨタ飛行しているビルジバイツ・・・か?


俺は悪魔男爵バロン化すると一瞬で

飛行物体の元まで飛んだ。


赤い髪に紅い瞳、順調に

エロいボディに成長中の少女だった。

肉体年齢は15くらいか


「ビルジバイツ・・・だよな」


俺は進行方向を反転させ

肩に腰掛けさせるように

下からゆっくりと上昇し

捕まりやすいように

腕も肘打ちの体勢を取った。


「おぉ助かる。この体で飛ぶのは

まだ慣れておらんのでな

難儀しておったトコロじゃ」


声もガキのそれで無くなっていた。

受肉ヴィータと同様か

蛮族を領地に取り込んで

信奉者が増えたせいだろう。


「成長したな。

何か綺麗になってて分からなかったぞ。」


「ううううう上手いお世辞じゃのう

そんなモノで妾がよ喜ぶとでも

ば馬鹿にするでないぞぅもう!!」


すげぇ嬉しそうだ。


俺はそのまま飛行して合流した。

いびきをかいて爆睡する司教を

よそに悪魔大集合だ。


ビルジバイツの飛行は

重力操作ではなく

通常の昆虫と同様の

空力に基づいての飛行だそうだ。

いくら体重の軽い女子とはいえ

重労働なのが窺えた。


「もっと無いかや」


テーブルに残っていた竹筒を

全て飲み干し

ゲップをしながらそう言って来た。

喉カラカラなのね。

俺も先程、その苦しみを味わったばかりだ

ストレージに残っているだけ

テーブルに並べた。


ビルジバイツは目を星マークに

して喜び、俺に味を尋ねては

色々試し始めた。

丁度、女子好みの甘い系が

残っていたのも幸いした。


うん

なんか子供が飲み食いしている姿って

やっぱり和むな。


「ワシにも何か頂けないじゃろうか」


オーベルも哀れな口調でそう言った。

そうか、お前も物理的飛行方法だったな。

俺は皿に水を注いでだしてやった。


「丁度良かった。大事な話があったんだ」


俺はそう言ってバング世界の出来事を

話して聞かせた。

最後にこう言った。


「ババァル居なかったぞ。」


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