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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第三百二十六話 大定例報告会

久しぶりに自宅に帰った。

「メタ・めた」ではなく

1週目のアジトであるベレンの邸宅だ。


帰宅と言うよりは

呼び出されたのだ。

例の定例報告会だ。


今回は各地に散らばっている

9大司教が参勤交代よろしく

大移動するついでに

一度全員ベレンに集うと言う事で

俺も参加して欲しいとの事だ。


司教だけ関係した議題は先に

片づけて置くので

俺だけは遅れた時間から

途中参加だそうだ。


アモン2000を走らせ検問所に到着

内壁前の検閲は事前に渡されていた。

免状ですぐ通過出来た。


自宅前には教会用の馬車が

既に幾つも並んでいた。


俺はその馬車の列の横に

アモン2000を停車させた。

待機している御者、護衛その他が

すんごい注目していた。

やっぱ珍しいよな。


「ただいまー。」


鍵は掛かっていなかったので

そのままズンズン入っていく

内装その他は

全く変わって居なかった。

不意に涙があふれて来そうになった。

俺は随分と色々な目に遭い

翻弄されまくっていたが

ここはあの時のままだ。

あの最終決戦前

消滅覚悟までの日常が

頭に蘇って来た。

もう遠い昔の様な気がした。


「お帰りなさい。お兄様」


ストレガが出迎えに走って来た。

やばい

コレもあの頃と同じじゃ無いか。


「お兄様?」


俺の様子がおかしいと感じたのか

ストレガが不思議そうに

そう聞いて来た。


俺は何でもない行こうと言って

奥へと案内された。


「お待ちしておりました。」


リビングには司教が勢ぞろいしていた。

俺に気が付いたパウルがそう言うと

司教軍団は一斉に起立し

深い礼をした。


やりにくいからやめろ。


「こちらへ」


パウルはそのまま俺を

お誕生日席に俺を誘導した。

俺が着席すると

司教軍団も席に着いた。


「中々似合ってるぜ。兄貴」


俺は星寮1期生の制服で参加した。

もう含み笑いがすんごいヨハンだ。


「無理しないで笑っていいんだよ。」


俺はそう言いながら

座っている面子を見回した。


ヨハンの席は俺の右前

対面にはストレガだ。


「知らない人が何人かいるな。」


「ああ、私はですねぇ」


「ボケも出来るようなったんだなユー」


ユークリッドのボケの難しい所は

真面目な話も冗談も

全く同じ調子で繰り出して来るトコロだ。


「わ」


「知ってるよハンス」


ハンスの冗談はつまらない事が多いので

早目に封殺するに限る。

笑顔なんだが

何か不満そうなハンス君だ。

もう少し待ってあげればイイのに

と言う意見もあるが

彼はコレでいいのだ。

ヴィータも俺を止めなかった。

女神公認の対応だ。


「お初にお目に掛かります。

建を担当させて頂いております

トーマスと申します。

此度、救世主様に拝謁賜り

真に恐悦至極でございます。」


一番の年長者だ。

トーマスは起立して深々を礼をした。


いくつだか知らないが

あんまり長距離の旅はキツいんじゃないか

俺はヨハンにそう言ったら

ずっとバリエア滞在で

今回もイイと言ったのだが

生きている内に俺に会いたいと

本人の強い希望だったそうだ。

旅自体も数年振りだとか。


「そうか。こんな顔ですまんな」


そう言う俺を

まるで孫でも見るかのように

穏やかな笑顔でトーマスは恐縮していた。


「芸を担当しております。

アトレイと申します。」


次はちょっと太ったおばさんで

若い頃は美人だった事が窺える

顔の作りだ。

物凄くぎこちない

相当緊張している様だ。

俺は笑顔で宜しくと言っておいた。


ここまでは審判を逃れた

生き残り組で

次からは審判後に

任命されたニューフェイスだそうだ。


「法のアイアトスと申します。

以後お見知りおきを」


小柄な体格だが頭はキレそうだ。

緊張のせいか少し声が怒っているっぽい


「あー兄貴が滅茶苦茶やるせいで

胃に穴が空いちまった奴だ。

謝って置いた方がイイぜ。」


内務や裁判などを主に担当し

通常はベレンに居るが

事件によっては全国を駆け巡るそうだ。

かつてパウルの影だった男だと

追加情報も言われた。


「本当に申し訳無かった

許してくれ、この通りだ!!」


俺は演技力全開で

両手をテーブルについて

額を何度も打ち付けて謝った。


「お止め下さい!!

わ私は何も・・・・ハゥっぐあ」


そう言ってアイアトスは

胃の辺りを押さえうずくまった。

瞬間的に強烈なストレスが掛かったせいで

胃が痙攣したとは

救護したハンスの弁だ。


退場していった。


「相変わらずヒデェ奴だ」

「お前が謝れって言ったんだろ」


アイアトスが退場のするのを待ってから

俺とヨハンは爆笑しながら

相手を責め合った。


「これは明確なイジメですよ・・・。」


何とも情けないと言った表情で

ユーは言うが

内心は俺とヨハンと同様なのは

もう分かり切っていた。


「あ・・・あのぅ」


ん?

あ、もう一人いた。

スマンスマン

それにしても存在感の無い男だ。

俺はどうぞと手で自己紹介を促した。


「え・・・ざ財を受け持っております。

ギャバンと申し」


「若さって何だ!!」


話遮る様に俺は大声で言ってしまった。

訳も分からずキョロキョロするギャバン。

通じる訳無いよなゴメン。


「違ったゴメン。財って何だ」


そう言って誤魔化した。

パウルが説明してくれた。


そのまま経済関連だ。

ハンスが戦争したいって言ったら

ユーが旅に出たいって言ったら

その資金を工面する役割だそうだ。

税率などの最終決定権も持っているそうだ。


「ん?9大司教なんだよな」


1.統括:ヨハン

2.武 :ハンス

3.流 :パウル

4.厚 :ユークリッド

5.建 :トーマス

6.芸 :アトレイ

7.法 :アイアトス

8.財 :ギャバン


「一つ足りないぞ。」


俺の問いかけにまたも

パウルが説明してくれた。


潤:雑務。

民などからの苦情受付など

要するに何でもやる課

ここから関係各所

事態の大きさによっては

無駄な時間を省く為に

9大司教に直接掛け合う事が

可能になるように同じ位を与えてある。

場合によっては初動の遅れが

致命的なダメージに繋がる事もある。

そこまで考えたシステムだ。

いなくても何とかはなっているので

空席のままだ。

因みにバイス君が一番の候補だ。


「そうか、じゃあな。」


「まだ、何もしてねぇだろ」


帰ろうとしたらヨハンに怒られた。


「ブンドンに出現した。新型の魔物なんですが」


ここでハンスが前フリ無しで

強引に進めた。


メタボの話だ。

俺が体験した通りの話が語られ

その後のサンプルの調査でも

新たに分かった事は無い

学者もお手上げの様だ。


ただエルフの軍が予想以上に

大活躍してくれて

今の所脅威にはなっていないらしい。

弓、魔法が効果的で森の中だ。

エルフが適任だろう。


ブンドン以外での目撃例も無い。

各地に散らばっていた司教も

一様にメタボに懐疑的だった。


「何の生き物かも分からねぇってのがな」


戦闘経験の長さで言えば

ここの面子の中でも

ぶっちぎり一位のヨハンが

そこに拘っていた。


「正体不明・原因不明のまま突然発生し

問答無用で襲い掛かってくる。

これだけ見ればバングと同様ですね。」


パウルがそう言った。

そこは俺も同意だ。


「初戦こそ、手痛いダメージでしたが

幸い対処法が分かりました。

エルフ軍抜きでも十分に対処可能です。

・・・・まぁ数にも寄りますが。」


ハンスはそう締めくくった。

どうやって増えているのか分からない

増加のペースが予想出来ないのだ。

アレが万臆の大群で

町に入ったら、壊滅間違い無しだ。


当面は情報集で

エルフの里との交流を密にする事で

その話は終わった。


「アモンさんが現場に若い女子と

一緒に居たと報告がありますが」


はい学園長

抜け出してウリハルと遊んでいました。

流石にそうは言えないので

ミカリンと飛行して行ったと

適当に誤魔化した。


「・・・要所要所に必ず出現しますよね」


疑っていると言うよりは

同情している感じでユークリッドがそう言った。


「どこにでも何かしらあるもんだ。

俺の干渉による影響がどうしたって

他の人より大きいからそう見えるだけだよ。」


学園でも行く先々何かしらある。

世界の命運を左右するような

大きい事は無いが

その世界で生きる学生にとっては

それこそ命が掛かる事もある。

だから俺は些末だと無下にしない

バングもメタボもバルスも

同様に頑張るさ。

みんなキモい外見だしな。


一緒一緒


「あードルワルドの方なんだがな」


次の話に移った。

ヨハンが面倒くさそうに話し始めた。

こういう事務的な事は苦手の様だ。

良くそれで最高指導者が出来るもんだと

以前からかったが式典などの時は

台本がもらえるそうだ。

こういうフリートークと違って

楽だと言っていた。

・・・俺にそれバラして良かったのか。


ドルワルドは以前よりも

更にバングの出現が皆無になり

ドワーフなどはもう武装をせず

専ら復興作業に掛かり切りだそうだ。

増産した武器と共に乗り込んだ

交代要員もすっかりカカシ状態になっていた。


「そんなんで士気を保つのは正直無理だ。」


投げた。

最高指導者投げた。


「かと言って、戦力を割いた途端

現れたとかでは元も子もないですからねぇ」


ユークリッドも困った様子だ。

ハンスは武らしい突っ込みをした。


「減るのを待っているとも取れます。」


1型が潜んで観察しているなら

十分有り得る事だ。

ここでパウルがヨハンに質問した。


「ゴウは何と言っていますか。」


ゴウ

ドルワルドの王だ。


「もう帰ってもイイって笑ってやがる。」


呆れて答えるヨハン。。

そんなんだから国を奪われたとでも

言いたげだ。


「私から釘を刺して置きますわ。」


見た目はおばさんだが

声は若くキレイな声だった。

芸のアトレイ

帰還したヨハンの替わりに

ドルワルドに向かう予定だ。

かつてネルドに滞在していたので

ゴウとはヨハンよりも付き合いが

長そうだ。


「ああ、頼むわ。今言った事を

含めて細かい事も引き継ぎの

書類に書いてあるから

目ぇ通しておいてくれ。」


押し付ける様な恰好で

申し訳なさそうにそう言った

ヨハンだが

血で血を洗う激戦の時を

ヨハンは受け持ち

予断を許さない状況ではあるが

一応は戦火の治まった状態で

引き継ぐのだ。

そう考えれば

貧乏くじはヨハンの方だが

適所と言う意味で

ヨハンは平和時より戦時に

向いているのは間違いない。

何だかんだで上手い人事移動だと

俺は思った。


引き上げその他の交渉は

アトレイに受け継がれ

経過観察のちに

交代要員の出発及び解散を

次の報告会に持ち越す形だ。


この話、俺要らないじゃないか

そう思った時ヨハンが追加で言って来た。


「後、今回は何とか断ったが

ゴウはベレンに来たがってるぜ。

ありゃ本気だ。兄貴と何としても

面通しを実現させる気だわ。」


ベレン戻るヨハン。

報告会に今回は俺が参加すると

うっかり漏らしてしまい

ワシも行くと相当駄々をこねたらしい。


「分かった。一度顔出すよ。」


ウンザリした表情のヨハンに

俺がそう言うとヨハンは笑顔になった。


「悪りぃな。頼むわ」


この顔、悪いと思って居ない。

俺は注意点を確認したが

司教軍団は俺の御心のままにと

何も注意してくれなかった。


ハンスだけは泣きそうな顔で言った。


「豪族になった事でドワーフと共に

バルバリスに侵攻を開始したりしませんよね。」


お前は俺を何だと思っているんだ。

それは無いと簡潔に突っ込んで流した。

俺がその名誉豪族とやらになる事態は

特に問題は無いそうだ。

ユークリッドに言わせると

魔族の救世主の方が問題としては

大きかったそうだ。

出兵を決めたあの会議

俺が思っていた以上に

教会側は戦々恐々だったそうだ。


その後はストレガの作った夕食になり

主に雑談と化した。


明日からはハンスはヒタイングへ

ヨハンが学園の代理学長に

アトレイはドルワルド

トーマスはしばらくベレンで養生して

体調を見てバリエアに戻るかどうか

決める事になった。


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