第三百十八話 ハッスル朝
肛門「止まれ、何者だ」
うんこ「おならです。」
肛門「前任の奴とは違う、俺は慎重だぞ。本当か」
うんこ「本当です。」
肛門「・・・よし通れ!」
バビピっ!!
「うわあああ駄目だろおおおおお!!」
俺は恐る恐るお尻に手を伸ばした。
無事だ。
安堵のため息をつく
今回も無事だったようだが
いつか本番が来るような気がして怖い。
「ま・・・魔勇者さま?」
ウリハルだ。
椅子に座り、ベッドで寝ている俺を
看病しながら寝てしまった様な図だった。
俺は周囲を見回し
ここが何処だか分からず慌てた。
「クロードさんの家ですよ。」
俺が何をしようとしているのか察した
ウリハルはそう言って教えてくれた。
そうだブンドンに来たんだっけな。
何時くらいなんだろう
日はすっかり登っていた。
強烈な喉の渇きと筋肉痛を感じた。
毎回思うがなんで筋肉痛になるんだろう。
俺はストレージから
竹筒に入ったドリンクを
種類選ばずに取り出して一気飲みした。
ウリハルが何とも飲みたそうな表情だ。
それに気が付き
慌ててもう一つ取り出して
ウリハルに渡した。
「昨晩の活躍、お見事でした。
プルが救世主と呼ぶのも納得です。」
竹筒を両手で持っているトコロはカワイイ。
ウリハルはそう言って俺を賞賛した。
俺は昨夜の出来事を思いだした。
クロードの治療は手こずった
酸のダメージは部位欠損に相当した。
幸いにも脳にはダメージが無く
頭蓋骨ナイスガードだった。
ここまでの重症はクロードだけだった。
ギルバートの話によると
挟撃の為に単身、森に入ったプルを
追ってメタボが一斉に移動した。
それに気が付いたクロードが
陣地から飛び出し自らを囮にして
ある程度呼び戻す事に成功したのだが
大量にたかられる結果になってしまい
鎧や縦も溶かされ
この有様だそうだ。
まぁお陰でプルが助かったのだ
名誉の負傷だ。
その後も重傷者から順次
治療を施していった。
司教達には任せて寝ろと言ったのだが
なまはげ状態でもまだ頑張ろうとしたので
調停者スキルで無理やり睡眠させた。
このなまはげ状態は通常の者だと
寝る以外の回復方法は無いのだ。
プルも回復魔法を使えたので
手伝ってもらったのだが
瀕死の状態から魔法で強引に
復帰させたばかりだ
適当な所で彼女にも調停者スキルで
お休みしてもらった。
レベルはそんなに高くは無く
上位の回復魔法は使えないが
魔力量だけはバイスに迫る量だ。
やはりエルフは魔法に特化した種族だ。
軽傷の者も基本的に欠損なので
回復する側のMP消費は
通常の切り傷、打撲、骨折などと
比較すると倍以上の消費だった。
無いモノを作り出すより
在るモノを結合させる方が
消費が少ないのは自明の理だ。
このメタボと言う敵は回復泣かせだ。
最後の怪我人を治療したトコロで
睡魔に襲われ
その後は良く覚えていない。
MP残量は余裕だったが
半魔化と違い人状態での
俺の体力、集中力の限界だった。
ここに来る前の魔導院でのプレゼントや
ウリハル装備などフル稼働で作成し
その後の音速飛行。
半魔化で調子に乗り過ぎた後での
人化で回復魔法だ。
ぶっ倒れるのも無理からぬ事だった。
「あーっゴメン!学園・・・。」
夜の内に戻るつもりだったが
緊急事態に追われすっかり
頭から抜けていた。
ヤバい
怒るかな
何か
無遅刻無欠席に拘ったりする
タイプだったりとかしたら
マズイな。
しかし、予想に反して
ウリハルは至って穏やかで
首を横に振って言った。
「学ぶ、その意味において
昨晩、私は学園にいては学べない
貴重な体験をさせて頂けました。
私は学生で今は学ぶ時期
それが最優先ですが
強引にそうしていたら
ここはどうなっていたでしょうか。
例え父様母様に叱責を受けても
私はココに来た事を後悔いたしません。」
真面目だなぁ・・・。
「って言うか大騒ぎになってないかな・・・。」
誰にも何にも言わずに脱出したからなぁ。
その心配は要らないとウリハルは言った。
部屋に俺と特訓に出ると書置きしておいたそうだ。
ナイスだ。
それならアリアが朝の時点で適当に欠席の
手続きを取ってくれているだろう。
体の方がやっとが起きて来て
感覚が戻って来るのと同時に
猛烈な尿意を覚えた。
トイレの場所は覚えているので
失礼して部屋を出た。
部屋を出た所で
奥の部屋から何とも色っぽい声を聞いた。
命の危機が生存本能を刺激したのか
おっぱじまってしまっているようだ。
来年の今頃は赤ちゃんに会えるのかな
まぁ何にせよ
そんな事が出来るなら
もう大丈夫だなクロード。
ってトイレに行くために廊下を歩いていたら
クロードに会うとか言う展開じゃないだろうな。
やめてくれよ
悪魔の力でも魔法の力でも
それは俺にはどうにも出来ないぞ。
俺はドキドキしながら
無事トイレに辿り着いた。
台所ではジゼルの両親が
昼食を作っている最中だった。
「お久しぶりですー。」
挨拶をすると偉い驚いて
俺の体調を聞いて来た。
なんでもぶっ倒れたまま運び込まれたので
俺も怪我人だと思われていたようだ。
運び込んだのは誰なのか聞くと
ギルバートだそうだ。
説明してから去れば良いものを
クロードも運び込まれ
ジゼルさんが付きっきりだそうだ。
俺が目を覚ました事で
ジゼル母が呼びに行こうとしたが
俺は止めた。
娘さん、今ハッスル中ですから
生命の神秘現在進行形なので
迂闊に扉を開けると気まずいですよ。
流石にそうは言えなかったので
「ジゼルさんも昨日は大変でした。
起きて来るまでそっとしておきましょう。」
と言って置いた。
俺はウリハルを呼んで来て
昼食をごちそうになった。
食後は
お茶を飲んでボーッとまどろんだ
眠らないのは筋肉痛のお陰だ。
痛みがイイ感じに意識を刺激してくれていた。
しばらくそうしていたら来客だ。
プルだった。
「おはよう」
昼だけどな
まぁ寝たのが明け方近くだ。
これでも早いほうだろ
そう思う俺はプルに続く人影
それが誰だか分かると
少し驚いて言った。
「プラプリじゃないか。」
エルフの里長が何でブンドンに
俺は挨拶もそこそこプラプリに
そう尋ねた。
「うーん。もう毎度の事なんで
あんまり驚いていないんだけどね。」
プラプリはそう言って事情を説明し始めた。
単身ブンドンに滞在中だった魔法部隊のリーダー
なんと俺と一騎打ちを演じたペルナ君だそうだ。
ブンドンの危機に増援が必要と判断し
風の魔法を利用したエルフ独自の高速移動を駆使し
1人里に戻り、同様の技が使える者達で構成された
援軍で先ほど到着したそうだ。
「アモンが片づけちゃうというね。」
今回は俺は戦闘はしていない。
治療だけだと説明した。
「大活躍はプルと冒険者だよ。
まぁ冒険者の方は自衛だから当然なんだが」
恐縮しながら
俺に助けられた事を告げるプル。
それを受けてプラプリは続けた。
「アモンが治療しなければ死屍累々で
自衛もままならない状態になっていたんでしょ
その代わりの戦力にも成る予定だったんだけど」
もうブンドンは通常の状態だそうだ。
エルフ部隊も武装を解除して
今は歓迎の昼食会だそうだ。
「こちらの方は・・・」
ここでプラプリはウリハルの
紹介を俺に促して来た。
俺は例の嘘、材木問屋のお嬢様同級生を
言った後、タオルを取る為に
立ち上がりすれ違い様にそっと正体
バルバリスのお姫様だと言う事を
教えて置いた。
エルフの里長だけは
知っておいた方が良いだろう。
プラプリは驚く様子も無く
いつもの穏やかなイケメン笑顔を
崩す事は無かった。
内緒なのは分かってくれている様だ。
微妙な表情で俺に
尊敬と哀れみを伝えて来た。
「君はいつになったら安らげるんだい」
そんなプラプリの声が聞こえた気がした。
また面倒に首を突っ込んでいるのだと
思って居るのだろう。
まぁその通りなんだが
ウリハルの方は
プラプリがエルフの里長だと知って
珍しく慌てた。
正装もしていないどころか寝起きだ。
お姫様的には失礼な事だと感じているのだ。
プラプリは笑顔で優雅に挨拶した。
「いずれ材木問屋のご主人にも
お会いする機会がございましょう。
正式な挨拶はその時に
今は我らの救世主のご友人で」
焦ったウリハルが余計な失敗をしないように
上手に誘導してくれた。
畜生
本物のイケメンはかっこいいなぁ。
ムカつく
いずれ樹木化した暁には
立小便でも掛けてやろうか
ブサメンの僻みは置いておいて
俺は気になった事をプラプリに訪ねた。
メタボの事だ。
「里周辺では見た事が無いね。
この調査と言う事だけでも
ここまで来た意味があるよ。」
プルには悪いが
プラプリは純血のエルフ種だ。
精霊視も出来る。
人間では判別できない事を
気が付く可能性は十分に考えられる。
正直、プラプリを連れて
メタボ目当てに森に入りたいぐらいだ。
「一緒に森を探索してみるか」
無理は承知だ。
あくまで冗談調に俺は言った。
プラプリは一転し
笑顔から真顔になると
喜んで答えた。
「是非、お願いしたい。」
お前も
俺に安らぎを与える気は無いのか




