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ぞくデビ  作者: Tetra1031
318/524

第三百十七話 ブンドン大破

そうだ。

折角卒業生が目の前に居るのだ。

もっと色々聞いてしまおう。


俺は思いつく事を全部聞いて見た。


「遠足ですかぁー緊張しましたぁ。

今思えば安全だったんでしょうけど

実戦というのが・・・。」


当時から、上級生のバックアップ

時には冒険者協会から雇って

周囲を警護、危険な魔物が

1期生の進路上にいないように

立ちまわっていたそうだ。

プルがその事を知ったのは

自分が2期生になって

保護の立場に立って

裏方に回った時だったそうだ。


一般の生徒でもコレだ。

ウリハルの警護となれば

もっとだろう。

3期生の騎士が駆り出されているが

これは現役の聖騎士も来そうだ。


「要注意人物?

うーん・・・そうそう1人いますよ。

なんでも偉い貴族の跡取り娘で

とんでもない大剣使いで

強者と見れば誰彼構わず

勝負を挑んで来るそうです。

決して勝負を受けない事を

お勧めします。

勝っても負けても面倒な事になりますよ。

例え臆病者と言われても

逃げるが勝ちです。

名前は・・・えーっと確か」


「クワン・キニか。」


「そうそう!ご存知でしたか」


どうも、大事な情報は

いつも手遅れだ。


「あれで結構カワイイ所もあるんですよ」


ウリハルが小声でボソっと呟いた。

本当かよ。

是非見て見たいものだ。


「イジメとかは無いのか」


去年までの様子が気になったので

聞いて見た。


「うーん・・・イジメと言うか

長耳とか森臭いとか、そんな感じの事は

言われた事は有りますね。

でも2期の専科になると、他の職業の人が

いないのでグっと減ります。

3期になると学園自体に居る事が減るので」


元々気にしないタイプなのか

イジメネットワークには

気が付いても居なかった様だ。

まぁテーンやクワンですら

知らなかった位だからな。


「あと私の居た雪寮は

無かったんですけど

花と月はすんごい縦社会だったようです。」


家柄がそのままカーストになっているのか

月には司祭志望だけでなく

教会系の聖騎士志望も居る様だし

何となく想像はつく


半魔化のまま

完全膝カックン耐性は立ち上げたままだった。

直ぐ近くの茂みに動くモノを探知した。

この形と動きは

さっきのメタボじゃないか


近づきたくないので

魔法で片づけるべく注錫を取り出すが

俺より速くウリハルが反応していた。

抜刀しながら助走し

どうやって敵の位置を特定しているのか

迷う事無く跳躍、回転に入った。


「参ります。うおおおおおおっ」


複数の枝が折れる音に混じって

ブチッとか言う音も聞こえた。

うげぇ

俺メタボ苦手かも


後、鞘すごい

ハンドスピナーみたいに

物凄い速さで回転すると

茂みが、ウリハルの立っている場所だけ

丸く一瞬で刈り取られた。


「勝ちましたよ。」


笑顔で戻って来るウリハル。

なんか子犬っぽくてカワイイ。


「良くやった。」


俺は褒めて上げた。

嬉しそうだ。


体術を心得ている人間相手でなければ

この玉砕剣は結構強いかも知れない。

防御、回避などを学ばせたかったが

今日のトコロは実戦、そして勝利

これで十分な成果だろう

装備のテストも良好な結果だ。


「それにしてもスゴイ装備ですね。」


アモン2000など

俺が作成する物の特別さを知っているプル

その彼女ですらウリハルの装備には

驚きを示した。


「ああ、最新型だ」


現時点での俺の最高傑作だからな

攻撃力のみで言えばミカリンのレフバーンだが

ミカリン以外では真価を発揮できないであろう

ダークの葛飾北祭の切れ味も同様だ。


ここで重要な事に気が付いた。


本人のみの特性


ウリハルの今の攻撃に

勇者及び聖職者の

あの神聖属性の銀の輝き

それが皆無だった。


微弱な光でも

夜の今なら良く見える

現に魔力の緑色の発光は

先程も今も見えていたのだ。


「まぁまだレベル1だしな・・・。」


二桁レベルのハンスやバイスの

輝きを見慣れているせいで

俺のハードルが高過ぎるのだろう

ウリハルもレベルの上昇で光り出し

いずれはあの手の付けられない

勇者の切断力を発揮してくれるに・・・


レベル?


そうだ

今のも含めて

10匹以上のメタボを

ウリハルは仕留めた。


レベルが上がっているハズなのだ。


俺はメニューから

ウリハルのステータスを見て

思わず大きな声を出してしまった。


「嘘だろお!」


ウリハルのレベルは1のままだった。


突然の俺の大声にプルもウリハルも

緊張して武器に手を掛け

周囲を警戒した。


ああゴメン。


「ゴメン、独り言だ。」


上級職。

基本職の能力をまたいで使用できる

上級職はレベルアップに必要な

経験値も基本職に比べて

より多く必要とされる場合が多い。

勇者ともなれば上級も上級なのか。

いや、それにしても

2にすらなっていないとは

ちょっと驚きだ。


「バングでも居ればなぁ」


あの経験値は美味しい。

こういう時の為に取っておきたい位だ。


牧場を作って

そこでバングを養殖出来ないだろうか。


「待て、どうやって増やすんだ」


生き物じゃないからな

オスメス集めて

餌与えて散歩させておけば

勝手に増えたりはしてくれないだろう。

1型を捕獲して

生産方法を聞き出すか。


などと馬鹿な考えに浸っている俺の

横でウリハルとプルは話をしていた。


「あ・・・あの、魔勇者さま?」


「あーコレは放置してあげて

何か閃いて考えている最中なの

この人こうなると、しばらく戻って来ないから」


うん

プルはウリハルより

俺への理解が高いな。


ブンドンに到着した。


周囲はまだ戦闘の跡が生々しい状態だ。


プルを確認した見張りは

声を張り上げ砦の門を

開ける様に指示してくれた。


中に入ると

戦闘自体は終了したが

ここはまだ戦場だった。


軽傷の者は止血程度で放置され

地べたに座り込み、壁に背を預けていた。

この怪我人を放置しなければならない程

もっと重症の者が居ると言う事だ。


「・・・・あ、あぁ」


お姫様には刺激が強すぎたか

ウリハルは両手で口を押さえ

少し震えていた。


「すいません。私は手当てに

協力してきます。」


状況を把握したプルはすぐさま

そう言った。


「やれやれ、忙しいな。

ウリハル、ちょっと待っててくれ」


俺もストレージから短杖を2本取り出し

1本はプルに差し出した。

意味を理解したプルは礼を言って

短杖を受け取って装備状態になった。


忙しく駆け回る職員を捕まえて

重傷者の収容場所を聞き出した。


冒険者協会だそうだ。


「わ、私も何かお手伝い致します。」


青ざめた顔をしながらも

ウリハルは気丈にもそう言った。


暴れる患者を押さえる位は出来るか


俺はウリハルについて来る様に言った。


駆け足で冒険者協会前まで来ると

そこは喧噪の中心地だった。


入り口前で羽交い締めされている女性は

半狂乱になって叫んでいた。

って

あれジゼルさんじゃないか

ジゼルさんが半狂乱ってことは

患者はもしかしてクロードなのか


「ジゼルさん!!」


俺の呼びかけに気が付く

俺だと気が付いたジゼルさんは

暴れる事を止めた。

俺は急いで駆け寄った。


うわ

ガチ泣きじゃないですか

て事はやっぱり


言葉にならない訴えで

俺にすがりついて来るジゼル。

聞き取れた単語はクロードだけだ。


「すぐ治療します。」


簡易的ながらここにも

教会はあるだろう

何やってんだと

最初は思ったのだが

協会内に入って

滞在している司教に同情した。


怪我人が所せましと並べられていた。

これはマインドダウンコースだわ。

ふと見れば司教とその仲間たちが


「悪いごは・・・悪い子は」


虚ろな目でよだれを垂らして皆

椅子に体を預けている状態だ。

手には光を失ったクリスタルだ。


蓄積していた魔力を

補充しきって尚

治療を続行したのだろう

これは魔力譲渡しない方がいいな。


「クロードは?!」


司教とその仲間達をスルーして

奥へと進む俺にプルもウリハルも続いた。


「プル!!無事だったのか」


進む俺達の横から

聞き覚えのある声に呼び止められた。

ここの村長兼支部長のギルバートだ。


ギルバートも腕を三角巾で吊っていた。

支部長自らも前線に出る程

余裕が無かったのか

その三角巾にも鮮やかな血が

滲んでいた。

止血出来てないじゃ無いか

つか居ても経っても居られず

安静に出来ないのか


「はい支部長、ご心配をお掛けしました。

運よく救世主さまに助けていただきましたので」


プルの言葉で俺に気が付いたギルバート

まぁチンチクリン状態だと

目立たないよな。


「救世主?・・って君は!!」


近くで見るとギルバートは

すごい脂汗だ。

痛いんだろ、おい

俺は挨拶よりも治療を優先した。


「ああ、いや私よりも」


部下を優先してくれと

言うつもりだったのだろうが

見る見る引いていく苦痛に

そのセリフは

安堵のため息に取って変わった。


おっさんのこういう声は

ちょっと鳥肌だ。


「全員やる。クロードは?

ジゼルさんが大泣きだぞ。」


快感に浸る恍惚とした表情を

細かに首を振って正すと

ギルバートは案内してくれた。


「頼む、こっちだ」


カウンターの奥

いつだったかミカリンとアルコで

話を聞いた支部長の部屋だ。

ボーシスさんと初めて会った場所でもある。

そこに案内された。


「うわぁ・・・・。」


これ

クロードなのか

もはやグロードだ。

無事な方の顔面は

確かにクロードの顔だった。


酸で所々

中途半端に溶けた人体は

理科室の人体模型

そのリアル版だ。


怪我人も死体も結構

見慣れているつもりだったが

まだ甘かった。

これは別室に移動するわな

ジゼルさんのあの状態も納得だ。


ウリハルは体内から

液体の中から泡が出る時の様な

音を立て

慌てて口を塞いだ。


それに気が付いた俺は

ストレージから馬用のバケツを

出して渡してやった。


退室までもたないようだ。

部屋の隅で即、始まってしまった。


走査はいいや

それより早く治療しよう

これなら

どんな治療魔法も

無駄になる事は無い

絶対にどこかしら良くなるだろう

外傷の総合商社状態だ。

いくらクロードでも

これは可哀想だ。

そして何より俺が嫌だ。

生理的にキツい。



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