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ぞくデビ  作者: Tetra1031
315/524

第三百十四話 暗躍の123期生

部屋に戻ると

うわ

全員いるのかよ。


適当に減って欲しかったが

顔に出すのは非常にまずい

俺は努めて普通に入った。


共用スペースで皆くつろいでいた。


全員かと思ったのだが

よくよく数えて見ると一人足りない。


「あれ、ウリハルは」


俺の問いかけにはアリアが

答えてくれた。


「もうお休みになられました。」


早ぇな。

あいつは色々と健康的だ。

これは丁度良い、ファーの説明を

アイツは聞かない方が良い。


俺もテーブルに着いて話を振った。


「えっと何話すんだっけ」


ファー以外から総突っ込みだ。

ファーが何者なのかだ。

雪寮の2期生で学園でも1・2を

争う剣の使い手ブラバムの妹。

ここまではクワン先輩とテーン先輩で

説明済みだが

問題は何故俺を恋人などと呼んだのか

だ。


ファー本人は頑なに口を閉ざし

俺が来るまで黙秘だったそうだ。

よしよし

良い部下っぷりだ。

電撃の恐怖はしっかりと

機能している証拠だ。


「旧知の仲でも無い限り

二人が恋人とは有り得んだろ。

リディ坊やは入学仕立てだ。」


クワン先輩は嘘の裏に何が隠れているのか

それに興味がある様子だ。

嫉妬の感情は一切感じ無かった。


「その旧知も考えにくい、リディ君が

異国からバルバリスにいつ来たのかを

知らないが、男女の関係を構築出来る

年齢と時間だったとは考えにくい。

それに役割的にも、その・・・。」


テーン先輩は追加で俺が姫の

護衛に選抜されているのだから

交友関係に特定の戦士家系の家の者との

付き合いは無いとも言いたそうだ


「これから話す事は他言無用だ。

当然、ブラバムには絶対勘付かれても

困る事だ。」


俺は極微弱にオーラーを

出しながら真剣な声で言った。


「話すのですか?」


秘密の組織だからな

ファーは戸惑いながらそう言った。


「同室の者は表の三半機関だよ。

先輩方に関しては逆に

秘密保持に力になってくれる。」


「「三半機関?」」


俺はバルス先輩の事件から

説明を始めた。

イジメが組織によってコントロールされ

金を巻き上げ集めていたトコロで

テーン先輩の正義の心に火が付いた。


「ばっ馬鹿な!そんな事が許されるモノか」


これはクワン先輩が止めた。


「声がデカい。殿下がお目覚めになるぞ」


続く言葉を飲み込み止まるテーン。

クワンは更に言った。


「小者みたいだぞぉテーン。

坊やの説明はまだ続いているんだ。

どっしり構えて最後まで聞き

考えてから話せ。」


クワン先輩は色々と大物だ。

背とか態度とか口の聞き方とか

おっぱいとか


言いたい事を飲み込んで

椅子に座り直すテーン先輩。

クワンは顎で俺を促した。


それを見てから続きを話した。

空を飛んだトコロはカット

パーッと遊んで親睦を深めた事にして

無断外出の謹慎まで話し終えた。


「これは許される事ではないぞリディ君。」


テーンは厳しい口調でそう言った。

まんま正義の騎士だ。

しかしクワンの反応は違った。


「なぁテーン。体を鍛え

剣の腕を磨く事が騎士道なのか。

私達がそれに没頭している間に

学園にはこんな闇がのさばっていた。

知りませんでした。

だから仕方ありません。

でも今から彼等を裁きます。

そう言うつもりか?

止めて置け

民からの信頼は地に落ちるぞ」


「・・・しかし」


納得行かない様子のテーン

クワンは余裕で話を続けた。


「私らの失態だよ。

とっくの昔に救いの手を

差し伸べていなければいけなかった。

それを昨日今日入学した

この坊やが、もう手を貸す必要も無い所まで

解決しているじゃあないか。

リディに感謝し

迂闊だった我々は猛省しなければならない。」


「それこそ信頼は地に落ちるのではないか」


ここで俺が割って入った。


「なので提案があります。」


テーンもクワンも俺に注目し

話を聞く姿勢になった事を確認してから

俺は言葉を続けた。


「沈黙です。

こんな事件はなかった。

裏の三半機関なんて前身はもちろん

今も存在していない。

存在していないモノに

裁きは無いでしょう。」


クワンは自身もそう考えていた様だ。

全く動じる様子が無い。

テーン先輩の方は

納得しかねているのが手に取る様に分かった。

なので俺はテーン用に方向を少し修正して

説得を続けた。


「仮に表に引っ張り出して裁いても

イジメそのものは根絶しません。

厳しい監視体制が敷かれる中

より巧みに、より静かに

裏で行われるでしょう。

イジメのコントロールこれは

決して善ではありませんが

上手くコントロールすれば

状態を把握し事前に抑制

発生時には初期段階で介入が可能なのです。

傷の浅い段階で

イジメの被害者は当然ながら

イジメの加害者も救う事が出来ます。」


俺はここで声のトーンを

少し偉そうに変えて続けた。


「更に秘密の部分を白状しますと

姫さまが在学中に些末な出来事で

汚したくありません。

かと言って貴族に汚れ仕事を

させるわけにも参りません。

そこで白羽の矢が立ったのが

ホーネット家です。

ファーには先行して準備を進めてもらった

そう言う事です。

これらの準備が無駄になる事を

花寮には期待してもいたんですよ。」


コラ、ファー

お前がビックリした顔するんじゃあない。

それでも調停者フィクサーかどーんと構えてろ

どーんと


裁く立場から一転

裁かれる立場に変わった。

流石のクワン先輩にも

焦りの色が見えた。


馬鹿め信じたな。


ここで懐柔に移ろう。

騎士だとこういうの

自決し兼ねないからな。


「本当に内緒で頼みますよ。

ハンスにバレたら俺の首が危ない。

先輩方の品格、人間性を信じればこそ

俺も話したんですから

大勢の生徒を救う為に

何が出来るのか

これを理解、実行出来うる器を

持っていると判断してこそなんです。」


自分を人質に相手にすがり

さり気無く持ち上げる。

「そうか、分かった。」その返事が

一番カッコ良くなる

おもてなし説得コース松だ。


「想定の範疇を超えていた。

私はまだ子供のようだな。」


テーン先輩は展開の規模に

ついていけない様子だ。


「上手く行きすぎだと思っていたが

昨日今日の準備では無かったということか」


クワン先輩は合点が行った様子だ。

落ち着きを取り戻したテーンが呟いた。


「我々にも先に話を・・・・

いや、駄目だな。

先程リディ殿がおっしゃっていた

厳しい監視体制、それを強行していただけだろう」


「あ・・・あのリディ君でお願いします」


NO1剣士の3期生から殿呼ばわりはちょっと


「一般の目があるトコロではそうさせて頂こう」


なんか俺を見る目に尊敬が混ざり始めたテーン先輩

これはデレとみていいのだろうか。


「しかし、まだ大事な問題が手つかずだぞ」


え?

何か見落としたか

勢いを取り戻したクワンに

俺は内心焦った。


「何故、ファー恋人になるのだ。」

「そうだ。それは納得がいかない」


テーン先輩までもが復活してしまった。

ここは張本人に説明させよう。


「ファー。俺は手下共に俺達の関係を

どう説明しろと言ったっけかな」


「はぁ・・・あのですね。」


ファーは俺に言われたままを説明し

自分の希望を都合よく混ぜた事を告白した。


「このアバズレ眼鏡」

「やっぱり泥棒猫ではないか」


なんだ

一周回って元の位置だぞ。


なんだか総攻撃で

結局ファーの恋人設定は却下されてしまった。

ナイスだ、お前ら。


なんかアリアがらしくなく

ヒートアップしているので

ちょっと押さえよう。


「後、アリア」


「はい。」


「調査とは紙に書いてあることだけ

ピックアップすれば終了では無い。」


隠れようとしているモノには

宣伝も標識も無い

記録も誰もが見られる様にはなってはいない。

残念ながらこのイジメネットワークに関して

アリアのリストには何ら記載が無かった。


「も、申し訳ありません。」


あれ効き過ぎた。

何かショック受けている。


「まぁ一日二日では無理というものだ

待ってあげたかったのだが

自殺者を出す訳には行かなかったのでな」


さっさと話しを変えてしまおう。


次の話題だ。

気になっていた事があった。


「お二人は何で星寮に来たのですか」


テーンとクワンだ。

ファーは既成事実を作りに

雪寮から俺の居る星寮に出向いた。

この二人は何で

花寮から星寮に来たと言うのだ。


顔を見合わせる二人は

思い出した様に用事を話し出した。


「そろそろ話を通しておこうと思ってな」

「ああ、遠足があるのだよ。」


遠足ですか。

バナナはおやつに入りますか。

呆れる俺と対照的にファーは驚いた。


「うぇっ、そうか最初の難関ですよね」


遠足

1期生のふるいである。

学園側が用意したクエストを

1期生が主体でこなすのだ。

教師と学園側が雇った冒険者が

影ながら保護するが

モンスターとの遭遇など危険を伴う事は

間違い無い。

この危機的体験から

諦めて進路変更を考慮する者

自分の隠された才能に気が付く者

否応なしに真実の自分の実力が露わになる。


「そいつは良い制度だ。」


俺は感心した。

クロードが旧来のシステムと言っていた

冒険者の制度ではその気になれば

資格も経験も関係無しで

いきなり実戦だ。

死者の中には

キチンと育てれば

一人前になったであろう者たちも

大勢いたであろう。


「まぁボスは強いですからね」


自分が1期生の時の遠足を思い出しているのか

ファーは暗い表情だ。

相当ヒドイ目にあったのか。


「これも他言無用で頼む。」


テーン先輩はそう前置きしてから話し出した。

パーティは基本、自由に組むのだが

俺達はこの部屋の4人に花寮から1名。


「一応は騎士の家の者だが

ヒヨっ子すぎてなぁ・・・。」


クワンの知っている者の様だ。

それと月寮から1名。

これもサラブレッドな聖道者で

詳しくは知らないそうだ。


「何て名前だったっけかな」


そもそも覚える気があったのか

思い出す気も無い様子のクワンに代わり

テーン先輩が教えてくれた。


「私も知り合いでは無いので

人となりは分からないのだが

アキュラという代々優秀な司教を

輩出している家の者で」


あいつか


「ビビビですか」


「それだ!」


大丈夫なのかな。

うっかりさんだからなぁあいつ。


「そして陰ながら私とクワンちゃんが

バックアップに付く

君の事だ、直ぐに勘付くと思うが

敵だと思われて襲われてしまっては

元も子もないので、こうして

先に言って置こうと思ってな。」


「私としては襲ってもらっても

一向に構わんぞ。いつぞやの続きを

楽しもうじゃないか。」


とにかく表向きには公平だが

裏では姫様最優先の忖度

クエストも不思議な力で成功するそうだ。


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