第三百十二話 ラブストーリーは突然だと迷惑
星寮の自室まで戻り
ベッドのダミー俺を回収した。
チンチクリン俺の体格データーを
ブリキ、まぁ銅板だな
で再現した。
関節部はマリオの人形を参照させてもらい
ポージングが出来る。
頭髪に関しては
これもマリオから譲り受けた人形用の
かつらをカットして接着してある。
なかなか似てて我ながらキモチワルイ。
近くで見ればすぐ人形だとバレるのだが
寝間着を着せてベッドに転がしておくのなら
このクオリティでも十分すぎるだろう。
入り口に人の気配だ。
丁度、授業が終わった頃だ。
扉が開き3人が入って来た。
俺も自室から出て迎えた。
「全然、分かんないよ。」
初日の授業でのミカリンの感想だ。
お前、良く試験突破出来たな。
やはり司教達の忖度が働いていたか。
「退屈でした。」
ウリハルは英才教育を受けていて
この程度は基本だそうだ。
教師のミスを指摘すると言う
ガリ勉秀才キャラ行為をしたそうだ。
アリアが小声で補足してきた。
クラスメートの評価が一変したそうだ。
ウリハルを天然バカキャラだと思っていたのは
俺だけでは無くみんなそうだったようで
その見かけを裏切る実力に
驚きもひとしおだ。
うーんウリハルは
テストでは成績の良いバカなんだな。
その知識を実生活などで上手く応用出来れば
「あの人、頭イイ」と言われるのだが
上手に生かせない残念秀才系なのだな。
「えっと、コレが今日のまとめです。」
アリアはそう言ってノートを差し出して来た。
謹慎で授業を受けられない俺の為に
わざわざ、別でまとめてくれたのだ。
なんて気の利く子なんだ。
俺は素直に礼を言い受け取った。
そうだ、調べているのだろうか
俺はアリアにフレアの事を聞いて見た。
「えっ・・・すいません
全く調べていません。
何かに秀でた方なのですか」
見落としが合ったと思ったようだ。
アリアは挙動不審になった。
「いや、能力的には特に無い
グレアの妹なんだよ。
挨拶に行きたいなと
同じ星寮なんだって」
「ああ、ハイラインってそうか」
俺の返答にミカリンも
合点が行ったようだ。
「魔勇者様のご自宅にいらした
魔族のキレイな方でしたよね。」
ウリハルもこの間の夕食を
思い出してそう言った。
その間にもアリアは懐から
やたら付箋だらけの手帳を取り出し
見ながら教えてくれた。
「ありました。フレア・ハイライン
魔族17歳、女性
外交事務専科の2期生で・・・」
ここまではグレアから聞いた通りだが
その後のセリフに俺達はずっこけた。
「ファンクラブを持ってますよ。
ガルド学園マドンナ選手権で
去年3位です。」
「何ぃ?!」
単純にグレアに制服を着せただけの
姿を想像していた俺は3位に驚く
アレ以上エロいのが
まだ上に二人もいるというのか
恐るべしガルド学園。
ふと「メタ・めた」を改装して
うちの女子連中に
ここの制服着させて
風俗店「ガルド学園予備校」とか
開いたら、すっげーっ儲かる気がした。
・・・ゲッペが殴り込んで来るか。
許可も出ないだろうな
教会前に風俗店とか
「1位って誰ーっ??」
ミカリンが食いついた
こいつカワイイ女の子、大好きだからな。
「上位2名はもう卒業されていますね。
どちらも花寮で・・・・。」
卒業のセリフで俺は後の話を聞いていなかった。
ミカリンも白けた表情で上の空だ。
おいミカリン
お前は聞けよ。
そんな時ドアがノックされた。
お
お客第一号って事か
アリアが出迎えに対応した。
入って来たのはノアだ。
ノアは椅子を用意したと言うのに
立ちっぱなし、真剣な面持ちで話し始めた。
「もしかしてアルホンスの返却で・・・」
俺の謹慎の理由を深読みしたようだ。
仮にそうだとしても黙っていれば良いものを
やはり魔族は義に厚いな。
俺は笑いながら謹慎の理由を説明した。
「そういえば先生、謹慎の理由を
言ってなかったね。」
ミカリンが思い出しながらそう言った。
成程、それで勘ぐったのか。
誤解が解けたようで
ノアもほっと肩を落として安堵した。
やっと座る気になったようだ。
そうだ、ノアも魔族だ。
俺はフレアの話を振って見た。
「ああ、親衛隊に入るつもりなら
早目に言った方が良いぞ。」
そんなのあんのか
「いや、そいつの姉がウチの従業員でな
挨拶だけしたいんだが」
何と難しいそうだ。
授業中以外は「フレアスカート」と呼ばれる
親衛隊がガッチリガードして近づけないそうだ。
「・・・いいや、行かなくて。」
一気に面倒くさくなった俺は
投げやりにそう言った。
「だね。立場的には向こうの方が
姉がお世話になっていますって
来るべきじゃないかな。」
この間のテーン招待事件を思い出した。
魔族的にはその辺どうなんだろう。
ついでにノアに聞いて見ると
首を捻って悩んだ。
「うーん。オーナーなんだから
ミカリンさんの言う通りなんだけど」
ここでチラっとウリハルを見てから
ノアは続けた。
「ここではリディが下級生だから
でも、そうなると学園的には縁が無いから
わざわざ行く理由も消えるし・・・。」
行かなくて良さそうだ。
「見かけたら挨拶すればいいか」
って外見を知らないか。
夕食は自分の寮で摂ると言って
ノアは退出していった。
ノアへの新しい提案があったのだが
急ぐ必要は無いし
みんなの居る前で無い方が話しやすいと思い
引き留めず見送った。
つか俺らもメシが食いたい。
そんなんで階段を下りて行くと
異様な集団が前に居る事に気が付いた。
なんか、そこそこイケてる男子が
楕円形の陣形を組んで
中心の女子をガードしながら
階段を下りているのだ。
「ねぇアモン、アレって・・・。」
ミカリンも勘づいたようで
俺に囁いて来た。
「女子、魔族だし多分そうだろ」
フレアと親衛隊だ。
あいつらもメシを食う気か
そりゃ食うか
とても近づける雰囲気じゃない
俺達は速度を落として追いつかない様にし
食堂でも離れた場所に陣取った。
味はまぁ普通だったが
肉系だったので普通に食えた。
ミカリンもこれならばと
喜んで食っていた。
「あ、居た居た!ダーリン」
入り口の方で女子の声が聞こえた。
何がダーリンだ
馬鹿じゃねぇの
爆破してやろうか
そのダーリンどんなツラしてんのか
ちょっと見て見たい気もしたが
姿勢を変えるのも面倒くさいので
気にしないでいたのだが
そのダーリンの呼び声が
どんどん近づいて来ていた。
「おいおい近くの席か
勘弁してくれよな。」
間近でイチャラブ始められたら
不快この上無いぞ。
多分、今の俺の表情は
バカップルを見た人独特の
歪んだ表情になっているに違いない。
「もう、何で無視するのぉ」
声の主は何と俺の背中を叩いて来た。
「ブッ」
あまりの驚きに食ってるモン
噴き出しそうになった。
必死で堪えて、周りの席の様子を見て見ると
今しがた俺がしていたあの表情だ。
違う
見るな
そんな目で俺を見るんじゃない。
俺は咀嚼も途中で
無理やり飲み込んでから
振り向いて言った。
「人違いです。」
振り向いてみれば
そこには満面の笑みを浮かべた
ファー先輩がいた。
「違わないよ。リディくん。えへ」
キャラがおかしくなってるぞ。
「おめでとー」
ミカリンが肉をモシャモシャしながら
褒めて来た。
「せ・・・説明していただけませんか」
アリアは・・・何だ
すっげー怖い顔してるぞ。
それに
説明して欲しいのは俺の方だ。
「・・・。」
ウリハルは興味津々で
俺とファーを見比べていた。
「ふふダーリン」
ファーはそう言って背中から抱き着いて来た。
そこそこある。
着やせするタイプか
って今はそうじゃない。
「HA・NA・SE」
何がダーリンだ。
電撃を出すのは俺の方だ。
少し乱暴にファーを振り払うと
ファーの尻に静電気(弱)を撃ち込んだ。
どんなにつねっても平気なお尻の皮だが
電気は来るみたいだ。
ファーは尻を押さえて跳ねまわっていた。
「ちょっとイイですかファー先輩」
俺はファーの頭を鷲掴みすると
力任せ、それも半魔化で
強引に引きずって食堂を出て行った。
何か悲鳴を上げているがお構い無しだ。
廊下、それも配膳の場所から
遠い方は人が少ないので
ガンガン引きずった。
突き当りの奥の階段で開放して尋問だ。
「何だ、その設定は」
「えっ?この年の男女で親しいって
設定って言ったら恋人でしょ」
「お前口説くとブラバムに殺されんだよ。」
「大丈夫、兄相手なら私の方が強いわ」
殺す気かよ。
ここでアリアの気配に気が付いた
工作員スキル使って接近しやがったな。
まぁ弁解する手間が省けるか
って弁解って変だよな。
「それに仲間に、もうそう言っちゃたし」
「親友って言えって言っただろ」
確かそう言ったハズだ。
しかしファーは髪の先端を
指でクルクル弄びながら答えた。
「だからー男女でそれは無いって
信じさせるならコレしかないわ」
確かに説得力と言う点では
その方が上か
「わ私が恋人じゃ・・・嫌?」
「嫌に決まってんだろ。」
俺の返事にショックを受けるファー。
騙されないぞ調停者め
「それにキャラ変わってんぞ。
好みで言えば、まだ以前の
クール-ビューティーの方がそそる」
途端に眼鏡の端を中指で
押し上げる仕草をするファー。
ノリが良いな。
コント向きな人かもしれない。




