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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二百九十八話 ご招待

星寮に戻ると共用スペースで

アリアが作業しているだけで

ミカリンとウリハルの姿が見えなかった。


「お二人ならお風呂ですよ。」


またか

まだ明るいのに二回目だぞ。

午後の訓練でも汗だくになったのかな。

なんでも、あの風呂桶をウリハルは

大層お気に召したとの事だ。

昨日、俺が作ったのに

既に俺より使用していやがる。

まぁ喜んでくれてるのは嬉しいけど


「そうか、今日の夕飯なんだが」


俺がそう言いかけると

俺の話を遮るようにアリアは

作業を止め、顔を上げて言った。


「戒厳令なので今日は外には

出られませんよ。」


どうも「メタ・めた」に行くとでも

思っている様だ。

俺は続きを話した。


「いや、外じゃ無くてな花寮の・・・。」


俺は花寮での出来事を話し

テーンから夕飯の招待を受けた旨を説明した。


「私達も宜しいんでしょうか。」


「そう言ってあるし、むしろ来てもらった方が

向こうも助かるだろ。

相手も俺の仲間を覚えておきたいんじゃないか」


ペンのお尻を顎に当て

アリアは答えた。


「ですよね。既に特別な存在ですね。

何時からなんですか」


何時なんだろう。

俺はテーンから貰った封筒を

懐から取り出して言った。


「これに書いてあると思う。」


そのままアリアに差し出す。

アリアは受け取り

一回、表裏を確認して言った。


「開けてないんですか・・・。」


「帰ってから見ようと、読んでくれないか」


なんか蝋で封印してある

無駄に本格的な仕様で

その辺で引きちぎって開けるのは

躊躇われたのだ。

今度、ペーパーナイフでも作っておこう。


アリアは封を開き

中身を朗読してくれた。


仰々しい言い回しを省くと

時間は通常の夕飯スタート時で

場所かなんと一階の食堂ではなく

最上階にあるテーンの部屋だ。


イライザの部屋と広さが同じなら

ちょっとしたパーティ程度は

余裕の広さだ。


「このインビテーションカードが

そのまま通行証の役割も果たすようですね。」


「どうしよう。俺、ドレス持って無い」


コロコロと笑うアリア。

かわいいぞ。

学生だから制服で失礼は無いそうだ。


二人が風呂から上がり

続いてアリア、その後に俺が入って。

丁度よい頃合いになった。


四人で花寮に向かった。


入り口にはまだ聖騎士が陣取っていたが

今回は遠目からでも分かったようで

槍でバッテン封鎖をせず

例のあの音のスゴイ敬礼だ。


俺達はカードを見せるまでも無く

入り口を通過し

そしてハンス作、俺の肖像画に

女子軍団の足が止まった。


「似てるー!!」

「描いた方お上手ですね。」

「私達の部屋用に一つ描いていただきましょう」


いや要らんだろウリハル。

なんか恥ずかしいので

まだ鑑賞したがっている女子軍団を引っ張り

半ば強引に俺は進んだ。


「うわーっ綺麗ーー!!」


青写真で内部構造は知っていた。

ダンスホールがあるもの分かっていたハズだが

実際に目にした感動が

またも女子軍団の足を止めてしまった。


これは仕方ないか

野郎ならともかく

女子は興味深々だろうな

こういうの


見学したがっているの

がバリバリ伝わって来たので

俺は先に言って挨拶を済ませて来ると言い

単独で最上階に向かった。


「おぉー我が愛しの君よ

待ちかねたぞー。」


最上階で仁王立ちしている

石像が・・・じゃない

クワンちゃんだ。


クワンがそう声を掛けて来た。


豪華なドレスを身に纏い

10cmのヒールを履いて

髪型も盛り盛りで

更に巨大化している。

石像かと思ったのはそのせいだぞ。


赤を基調とし紫のリング状の

模様は綺麗っちゃ綺麗なんだが

毒々しい

ヒョウモン蛸を連想させた。


「・・・んん、どうした?

登って来ないのか」


階段を上る姿勢で

固まってしまった俺に

クワンはそう続けた。


なんだこのシチュエーション

覚えがあるぞ。


ありのまま今、起こった出来事を話すぜ

だ!!


これから俺は恐ろしいものの片鱗を

味わってしまうのか


何て返事しよう

 恐ろしくて

 綺麗だ。


 恐ろしくて

→綺麗だ。


「綺麗だ。不覚にも見とれて

動けなくなったぞ。」


俺のお世辞にクワンは

瞳孔が縮み、見る見る真っ赤になって

・・・吠えた。


「ここっここの正直者めぃ!!」


嬉しそうだ。

ただ照れ隠しは乱暴だ。

昼間の様に肩を回して

羽交い締めにされ連行された。


「クワンちゃん。抜け駆けはズルイぞ」


部屋の前には美女がいた。

こっちもヒール履いて巨大化していた。


テーンだ。


こっちは青と白を基調とし

清潔感が溢れていた。

有毒生物に捕食されそうなっている

今の俺には喉から手が出そうな程

求めてしまいそうだ。

つか

助けて。


「招待主が部屋に居ないでどうする?

迎えの雑用を進んでこなしてやったんだ。

感謝されこそすれ非難されるいわれは無いぞ。」


俺をヘッドロック状態で捕えたまま

クワンちゃんはテーンを挑発した。


なんだろう

絵が頭に思い浮かんだ。


獲物と捕らえた豹と

それを横取りしようするライオン

そんなー

サバンナのぉ

日常がぁー

森本ぉ俺です。


「客人の頭を抱え込んで

エスコートする貴族があるか

リディ君を解放したまえ」


お気持ちは嬉しいですがテーンさん。

ヒールのせいで丁度、顔面が

良い位置で僕は幸せなので


「おぉっと確かに

はしたないな。失礼失礼」


解放されてしまった。


「エスコートなら

・・・こうか」


なんか肘打の途中みたいなポーズになるクワン

それを見てクスリと笑い

反対側の俺の隣に来てで見本を示すテーン。


「こうだよ。」


両手に花の結婚式行進状態なんだが

俺がチンチクリンなせいで

どうみても


捕まった宇宙人にしか見えない。


やっぱり男性は背が高い方が絵になるね。

くそぅ

今から冒険者ゼータ化してやろうか。

そう思っていると

後ろからミカリンの声が聞こえた。


「あー捕まってる!!」


ほら

やっぱりそうとしか見えないよね。


振り返るに二人に

俺は事前に話していた連れだと言った。

一緒に来なかったのは

途中のダンスホールに

目を奪われていたからだと

追加説明も入れて置いた。


ミカリンの後ろからアリアも

階段を上り終えて顔を出した。


連れが見てるとなると

恥ずかしいのか

テーンもクワンもエスコートポーズを

慌てて解除した。


照れ隠しなのかクワンは

普段よりも大き目の声で吠えた。


「何だ何だリディ坊や

既にハーレムを持っていたのか。

見た目を裏切る強者っぷりは

剣の腕だけでは無いようだなぁ。

益々気に入ったぞー。」


黙っていればゴージャスなBIGお嬢様なのに

初対面でコレである。

ミカリンもアリアも面食らい

愛想笑いが引きつっていた。


また慣れ過ぎたせいで

特に弄る事も無く

普通に自己紹介を始めるテーンだ。

クワンは放置が一番なのか。


「よく来てくれた私は・・・・」


そこで言葉が止まるテーン。

どうしたのかの注目が

俺達だけでなくクワンからも注がれた。


「どうした?テーン」


見る見る顔面が青白くなっていき

ワナワナと震え始めたかと思ったら

テーンが物凄い速度で跪いた。


膝で床を割るつもりなのかと思う程だ。


テーン急変の原因が

アリアの後ろからひょっこり現れた。


「お久しぶりですね。テーン

クワンも元気そうで嬉しいですよ。」


甲高い変な声でウリハルは挨拶をした。


「ででででででで殿下ぁああああああ!!」


喉チンコが見える程

口を大きく開いて叫ぶクワン。

ただでさえ大き目の口が全開だ。

俺は食われるのかと思った。


奥歯まで虫歯の無い

綺麗な歯並びだった。

下あごの方は角度的に見えないので

分からないが


テーンの膝床割りの音だけでも

警備の聖騎士がこっちを向いた。

そこへクワンの本日一番の絶叫だ。


今ここに現れたのが何者なのか

認識出来た聖騎士が次々と

ガシャッガッシャ音を立てて

アチコチで跪いていた。


「剣で私を圧倒するだけでなく

策においても恐ろしい罠を仕掛けるとは

策士としても脅威だ。

はは・・・どうするテーン。

完全にしてやられたぞ。

これで二人とも縛り首だ。」


クワンが呆けていた。

触っていないのにアホ毛がピョンピョン出ていた。

どうやったんだろう。


「ぐぅ・・・これはヒドイぞ

リディ君・・・・・。」


テーンはガチ泣きだ。


「え?何で??」


俺は二人の態度にマジで慌てた。


事情を聞いて見ると

なんでも貴族皇族の風習で

招待とは上の者が下の者に行うモノで

逆は無礼千万。

やる場合は決闘を申し込む時とか

下剋上で上がった貴族が

仕返し的な意味合いで招待したりとか

かなり屈辱的な意味合いだったりとか


とにかく逆をやるのは

禁忌中の禁忌だ。

それを仕掛けた俺は

今後は禁忌キッズとでも名乗ろうかな


「いいんですよ。ここでは

あなた達が上級生なんですから」


屈託の無い笑顔でそう言うウリハル。

クワンとテーンの口から

エクトプラズムが出ていく幻が見えた。


正直に言っているだけなのに

そう聞こえない。


剣を振るうより

話す方が殺傷力が高いってのも

困った勇者だ。


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