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ぞくデビ  作者: Tetra1031
296/524

第二百九十五話 クワンちゃん

ハンスと別れ

地下の訓練場まで下りる事にした。

恐らくテーンはそこに居るとの事だ。


他の寮と同じように地下が訓練場と

なっている作りだ。


下りる途中で見た二階の

ダンスホールはもう

シャンデリアとかぶら下がってるわ

そのまま映画の撮影にも使えそうなレベルだった。


あんな高い場所のシャンデリアって

どうやって掃除してるんだろう。


地上の豪華絢爛さと打って変わり

地下は装飾など一切見受けられない

質実剛健な印象だ。


ちょっと意外だったが

アレか

白鳥の水面下みたいなイメージでいいのか

戦闘系じゃない貴族は

地下まで足を運ぶことは無い

ここはガチ騎士の領域という事か


階段から廊下を進むと

部屋の入口に1期生と思われる者が

二人、門番をしていた。


俺の身に着けている肩掛けの色で

直ぐに他寮生と気が付き

驚きながら俺の行く手を阻んだ。


「部外者は入れませんお引き取りを」

「どうして他寮生が」


テーンと手合わせしたいと

簡単に説明したのだが

「何を言ってるんだお前は」的な勢いで

全否定されてしまった。

取りつく島も無い感じだ。


「最強と謳われるテーン様に

挑戦を希望する者は枚挙に暇がありません。」

「全校生徒を相手にしていては

自らの鍛錬の時間も無くなってしまいます。」


どっかで聞いた様なセリフだ。

説得は無理そうだ。

こいつらには何の権限も無い

許可を出す判断そのものの仕事が無いのだ。

入れるな。徹頭徹尾ソレだけだ。

なので交渉のしようが無いのだ。


どうするか

静電気セーターで気絶させて押し入るか

そう思った時、廊下の向かい側から

新たな人影がこちらに近づいて来て言った。


「騒がしいぞヒヨっこ共、何事か」


訓練着だというのに

溢れる気品が損なわれていない。

麗しい。一言で表現するならば

その一言一択だ。


170cmくらいで俺より高い

キレイな金髪で青い瞳

まぁ花寮生はこの人種が多いので

ここでは目立たないな。


歩き方の足運びだけで

訓練を積んだ者だと分かった。

レベルは5だ。

この大女がテーンか

それなら話は早い、ツイてる。


「クワン様!」

「申し訳ありません。他寮生が・・・」


テーンじゃないのか

クワンと呼ばれた上級生は

門番係りからこれまでの経緯を聞くと

俺を値踏みする様に一瞥して笑った。


「はっははは。星寮の連中でも

剣を持つのだな。ペンの方がお似合いだぞ」


「全く同意だ。だからこうして

他の寮に足を運ばねばならない。」


これは言われても仕方が無い。

事務系を集めたのだから当然と言えば

当然なのだが、もう見た目からして

細いの多いんだ星寮は


「ふん大体、手合わせを希望する

恰好には見えないぞ。」


「必要無いからだ。子供相手に

本気になれば、それは恥ずべき行為だ」


挑発したのに

クワンは怒らない。

それどころか憐れむ様な目で俺を見た。

どうも、ただ生意気なだけのクソガキだと

思って居る様だ。


・・・ほぼ合ってるのか

だけ では無いが。


「・・・良いだろう」


少し考えてからクワンはそう呟いた。


「クワン様!」

「なりませんよ」


駄目出しする門番係り達に

クワンは高笑いと共に言った。


「どうせ退屈していたところだ。

休憩の間の見世物として

私が相手してやろうじゃないか」


「いや、俺が希望しているのは

テーンとか言う奴なんだが。」


「はっはは、私に勝てたら

テーンともやらせてやろう。

あの頭の固いテーンでも

それなら動いてくれるだろう」


そう言うとクワンは乱暴に俺に

俺の肩に手を掛け

強引に引き寄せた。

首の辺りにクワンの胸が当たる。

うーん、こんなんでも嬉しくなってしまう

自分が情けない。


そのままクワンに連行されるように

訓練場内部に入った。


「全員、休憩だーっ。その間

私の技を見学していろーっ!!」


扉を開けると同時に声を張り上げるクワン。

この娘、いちいち大声だ。


上級生が乱取り中だった様だ。


周囲を囲み見学している1期生も

綺麗に等間隔に整列して起立していた。

ダラけているような雰囲気は一切無い。


この瞬間にこのクワンが

花寮の標準ではなく

異端な存在である事が理解出来た。

いわゆる困ったちゃんだ。


「していろー!!」


俺もクワンの物まねで続いた。


「なんだ、その子は・・・

星寮の1期生か」


皆、硬直する中

上座に当たる位置で

騎士立ちと言おうか

あの剣を正面に柄に両手乗せる立ち方

1人その体勢で偉そうな女子だけが

クワンに反応した。


「おう、こいつとやる

私が負けたら相手してやってくれ」


「してやってくれ」


なんかクワンを気に入って来た俺だ。


「クワンちゃん・・・またそう言う事を」


情けないといった響きを含み

その者は言った。

このセリフからもクワンが

困ったちゃんなのだと想像出来た。

毎度毎度、好き勝手をやって

回りを振り回す問題児

しかし実力があるため文句も言えない

そんな感じだ。


話の流れから

やはりこいつがテーンなのだろう。

レベルも6だ。


「私より強い相手ならば問題はあるまい?

弱者相手では剣が鈍る

しかし実戦から遠ざかっても鈍る

普段からそう言って私にばかり

負担が掛かっている。

申し訳ないとは思わないか

少しは私も遊びたいのだがな」


「だがな」


これは言っても聞かないな。

そんな表情になったテーンは

手で何やら合図を下す。

それに連動して稽古していた者は

壁際に移動した。

担当が決まっている様で

待機していた1期生が

剣を受け取りタオルを手渡すなど

世話をしていった。


その様子を確認した後、テーンは

手招きしてクワンを呼んだ。


ここからは悪魔耳で聞いた二人の会話だ。


「怪我でもさせたら問題になる。」


「私の腕は知っているだろう?」


「しかし・・・。」


「坊やがごめんなさいするまで

遊んでやるだけだ。ここで

やって置けば良い宣伝になるぞ

馬鹿な挑戦者が減ってくれれば

万々歳ではないか。」


あー午前中の俺達だ。

見事に逆の立場だ。


説得に渋々了承するテーン。

金髪というより

少しオレンジがかった頭髪で

瞳も青というより青っぽい灰色だ。


これはクワンが並んでいるせいで

余計にそう見えるだけかもしれない。

顔は美形には違いないが少し強面だ

しかし声は優しい感じのお姉さんだ。

黙っていればクワンの方が

カワイイ顔しているのも面白い。

背格好が似ている二人だが

並んで立つと違いが目立つ

良いペアの様な気がした。


「待たせたなー」


一旦、奥の別部屋に入って

クワンは武器を持って直ぐ出て来て

そう言った。


デカい

大剣だ。


「クワンちゃん!それは・・・。」


慌てると言うより呆れる感じで

テーンが言った。


周囲のモブ上級生が

口々に解説をしてくれた。


伝説の魔神が使っていた剣らしい


確かに創業祭を彷彿とさせる剣だ。

俺は念のためデビルアイで解析したが

普通の大剣だ。

どうやって作ったのか

中が空洞なので見た目よりも軽い。

軽いと言ってもあれだけの

鉄を使っているのだから

重量は相当なモノになるはずだ。

いくら騎士とは言え女子が振れるのか


「真剣勝負だぁー。

誰か坊やに剣を貸してやっておくれ」


「あっ、あります。」


俺はそう言って背中に手を回し

創業祭を出した。

サイズが大人の冒険者ゼータ用だったので

出す際にチンチクリンサイズに

縮小しながら出した。

久しぶりだな創業祭。

半魔化の腕力でなければ持てない

デビルアイついでだ。

相手も大剣だし

同じ方が面白いだろう。


クワンのに比べると

見た目には見劣りする質素さだ。

つか

あんな豪華なレリーフは

戦闘において意味無いだろ。



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