表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
291/524

第二百九十 話 戒厳令

「あの、一体何が・・・。」


俺はテーブルに座り、広げっぱなしの

資料をボンヤリと見ていた。

アリアがお茶を入れて戻って来て

そう聞いて来た。


「んー生徒会長が不審者に襲われたらしい」


「えぇ?!」


「幸い怪我とかは無い様だが

その不審者がまだ捕まっていないようでな。」


「そんな事が・・・。」


「厳戒態勢を取るとさ。」


「ですね。・・・襲われた場所は?」


俺はアリアにハンスに聞いたままを

説明した。

アリアは顎に指を当て真剣に聞いていた。


「花寮は寮のなかでは一番警備が

厳重です。学園内に忍び込めても

花寮となると私でも厳しいですよ。

生徒の立場を利用すれば話は別ですが」


キャーとか怖いとかでは無く

どう潜入したかを考察しているのか

流石は工作員エージェントだ。


「それがな、どうも不審者は」


俺はここで声のトーンを落とし

少し前かがみで距離を縮めた。

その仕草に気が付いたアリアも

前かがみになって顔を近づけてくれた。


うーん

元の世界の匂いとは多少異なるが

アリアからほんのり石鹸の香りが

ああ

胸元が

俺の目が自然とRECモードに


「不審者は?」


俺が黙ったままなので

アリアが小声で促して来た。


どうしよう「俺だーっ」って言って

押し倒してみるか


「ラテラを襲った相手と同種と

ハンスは見ているらしい。」


やましい考えを振り払い

俺は敢えてバングと言う単語を

使わないで伝えた。

アリアの顔色が変わる。


すぐ思いつくとは思うが

先に言ってしまおう。


「勇者を狙っている。

花寮はハンスが撒いた偽情報なんだ。」


「・・・・えっ?」


慌ててウリハルの部屋の扉を見るアリア。

連られて俺もみてしまう。

見たついでにデビルアイで中の様子を

走査したがウリハルはベッドの上で

熟睡しているようだ。


「内緒だぞ。奴らが何処からどうやって

情報得ているのか調べる意味もあるんだ。」


頷くアリア。

ラテラの惨劇を身を持って知っているだけに

目の真剣さがハンパ無かった。


「ウリハル様には、襲撃者の事は

何と説明すればよろしいでしょうか。」


「呼称はまだ伏せよう、不審者とだけ

言って置こう。」


今の所はそれで良い。

だってバングじゃないしな

その変態不審者さん。


「そうだ。情報と言えば」


アリアは態度と声を一転させ

普通に戻り、テーブルの上の資料を

纏め始めた。


もっとお顔を近くで見ていたかったのに


「お待たせしました。」


順番があったようだ。

キチンと並び変えてから

アリアは資料を差し出した。


ああ

要人のまとめを頼んで置いたっけな

急がんでも良かったのに

偉い子だ。


俺はお礼を言って受け取り

茶を飲みながら資料に目を通した。


アリアはいずれここにも現れる事を

心配していたが「俺が居るから大丈夫」と

言ったら本気で安心していた。


まぁいいか。


その後は就寝になり

夜は何事も起きずに朝を迎えた。


ギリギリまで起きてこないミカリンは

寝ぐせのまま朝食を摂りに

一階まで下りる事になった。


室長に集合が掛かり

寮母から何やら連絡を受けていた。

その最中も驚きの声を上げる

室長も見受けられた。

襲撃など知らない者がほとんどだろう。


「戒厳令が引かれました。

今日は予定を全て中止で皆

寮内で待機だそうです。」


アリアから伝令を受けた。

24時間はとハンスが言っていたので

まぁこうなるか。


美味しい不安が溢れるかと

期待したのだが

反して不味い感情が食堂に満ちた。


みんな興味津々だ。


大きな私語は怒られるので

皆ここでは我慢だ。

食後は噂話の大合戦が始まりそうだ。


そして予想通りそうなった。


取り囲まれるかもと

思って居たが

その予想は外れた。

何かみんな遠巻きだ。

これは勇者姫のせいか

昨日の俺のせいか

まさかとは思うがミカリンの

肌の色のせいか


とにかく助かった。

俺達は食事を終えると

部屋に戻った。


俺は内心、いつウリハルが

「私達で不審者を捕えませんか」と

言い出すかと冷や冷やしていたのだが

意外にも殊勝だった。

聞いて見れば俺が入浴中に

ハンスにキツ目に釘を刺され済みだそうだ。

「確かに今の私では足手まといですね」

俺が風呂から出て来たのが

丁度ウリハルがそう言った直後だった。

あの不満気な顔はそう言う事だ。


そのせいなのか

部屋に戻るとウリハルは

着替えて練習用の剣を持ち

地下の訓練場に行くと言い出した。


「面白そうだねー僕も付き合うよ」


ミカリンが乗り気だ。

この戦闘系天使、戦闘に関する事だけは

非常に積極的だ。


ここでウリハルの実力を見て置くのも

丁度良い、俺も参加する事にした。


アリアは情報収集に歩き回りたいと

言っていたので任せた。


俺とミカリンも訓練着に着替え

久しぶりのレプリバーンと祈年祭だ。


この星寮が建設されて何年だか

詳しくは知らないが

新築という事はあるまい

なのに

地下訓練場は新設かと思える程

綺麗だった。


これは宜しくない。

訓練場なんだからもっと傷だらけでないと


すっぽ抜けた剣が刺さった跡とか

何度も繰り返したせいで

足を運ぶ場所だけ削れて凹んでいたりとか


何年も経って新品って

それはつまり

ここの寮生は代々訓練してないって事だ。


一般事務&要人客人の星寮では

それも致し方なしか。


「腕が鳴るーっ」


レプリバーンを華麗にグルングルン回すミカリン

凄くうれしそうだ。

久しぶりだもんな。


ウリハルは一礼してから入室し

入念に防具を装着中だった。

丁寧な奴だ。


「それっ!」


ウリハルを見ていた俺を

ミカリンが襲う。


礼もへったくれ無いな。

・・・へったくれって

そう言えば何なんだろう。


片足のみの跳躍で横っ飛び

頭上からレプリバーンを振り下ろすミカリン。

左側かよ嫌らしいな。

俺は頭上に祈年祭を掲げると

手首を折る様にして剣を垂らし

レプリバーンを受け流す。


レプリバーンの余る勢いを利用して

例の意味は無いがカッコイイ剣回転だ。


そのついでに向きをミカリンに

正対させる。


「防具は?」


ミカリンは振り下ろした勢いそのまま

体を横回転させ、そのまま追撃してきた。


「着けて訓練した事無いじゃん」


剣が無ければ

バレエでも踊っているかのような

ミカリンの体捌きだ。

レベル1の偽装効果で

本来の威力とスピードが出ていない。

これは余裕かと思ったが

受ける俺の方も

本来のスピードとパワーでは無い

結構ギリギリで受け流す。

知っているから捌けるが

初見なら三手持たないだろう。


「それは防具が無かった頃だろう」


怒涛の連携

このまま追い詰めてトドメを刺すパターンだ。


このままいつも通り

やられるのも癪だ。

ウリハルも見ているしな


ちょっとビックリさせて見るか


バロード侍を思い出し

後ろに飛び距離を取った。

構えを取る為だ。

奴の居合、その再現を試みた。


距離を詰めるステップに移るミカリン

それに呼応する様に俺は前へ

一気に俺の間合いだ。


斬!!


斬れなかった・・・。

レプリバーンはミカリンの体を

キッチリと守り

俺の居合の勢いを回転力に変換すると

そのまま追撃も決まらない後方へと

ミカリンは脱出した。


やっぱ上手いな。


「駄目か。」


「何ソレ?!」


初めて見る俺の居合。

決まりこそしなかったが

焦らせる事位は出来たようだ。


「遠征の土産だ。こんな剣術を

使う相手と会ってな。」


ミカリンに警戒の色が見て取れた。

剣術オンリーの稽古では

初めてじゃ無いかな

それ程、剣術に関しては

圧倒的にミカリンに分があったのだ。

今までは

だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ