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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二百八十六話 勇者の役割

「なぁ本当に男性用で良かったのか」


食事が終了し

お客さん達を見送った後

後片付けをある程度まで手伝い

俺達も星寮に向け

馬車を走らせていた。


腕時計を女性用で無く

男性用に変えて欲しいと

ウリハルは願い出たのだ。


「はい。こっちの方がカッコ良くて頼もしいです。」


細い腕なので金属ベルトのパーツは

これもう一個分になるんじゃないかってくらい外した。

パウルのアイデアで

文字盤側のガラスの上に

スライド式の蓋を追加した。

バルバリスの紋章をレリーフにしてある。

これでパッと見には時計だと

分かる者はいないとの事だ。

どう見ても腕時計だろと思ったが

このサイズの時計が無いのだ

俺の元の世界とは感覚が違うのだろう。


「あの・・・リディ様。」


お礼はもういいぞ。

そう思った。


「様は要らんぞ」


そう言ったのだが

ウリハルは首を横に振った。


「公の場所ではそう致しますが

仲間・・・うちでは様無しで

・・・・いいえ、その」


何だ?

本人も取っ散らかっている様子だ。

言いたい事がまとまるまで待つことにした。

やがてウリハルは覚悟を決めたかのように

真っ直ぐな瞳で聞いて来た。


「リディ様は魔勇者アモン様なのですか。」


ああ

ミカリンを始め司教連中もカシオも

堂々と俺をアモン呼ばわりだったもんな。


「そうだよ。内緒な」


こいつの場合はどこまで

知っているのだろう。

魔勇者と言う言い方から察するに

やはり母親のガバガバだろうか。


「何?魔勇者って・・・。」


ミカリンがビックリしていた。

そうか

ミカリンの方はミカリンの方で

その呼び方は知らないよな。


俺が説明を始めるまでも無く

ウリハルが口を開いた。


「母様が良く聞かせて下さいました。

勇者の偉業は全て勇者だけの

手によるモノでは無かったと

教会や仲間そして魔勇者たるアモンが

成し遂げたモノだと。

自分はその代表として賞賛を受けたが

申し訳なく心苦しいと

特に魔勇者アモンは

真に賞賛されるべき功労者だったと」


「えー嘘だよ。」


何、即否定してんのミカリン。

お前は黙ってろよ

俺の話だろうが


「父様を始め皆そう仰いますが

私には母様が嘘をついているとは

思っておりません。何か公には出来ない

理由があるとは思うのですが

私には教えて頂けないのでしょうか

子供だから、それとも未熟だからでしょうか」


「何で?アモン」


「俺が言うなって言ったからだろ」


なんかパウルとそんなやり取りを

した様な記憶があるが

当時の俺はブリッペ対策の

穴掘りに全力投球で

良く覚えていない

いや

絶対に思い出せない自信があった。


「丁度良い、これも勇者の役割だ。

ウリハルお前も覚えて置け、人々の羨望の対象は

清廉潔白な存在で届かない別次元高貴さが必要なんだ。

そんじょそこいらに居るような奴とか

悪事に手を染めた様な無頼漢とか

そういう連中を

人々は絶対に賞賛したくないんだ。

自分があんな奴より下

これに我慢できない。

ああ、あのお方ならばと言える

至高の存在

これが相手なら自分が格下でも

当然で恥ずかしい事じゃないと

思えないと素直に賞賛出来ないんだ。」


ちょっと早口になってしまった。


「民衆、価値が無いクセにプライドはあるんだね」


ミカリンがつまらなさそうに言った。

俺は続けて補足しておいた。


「それは言い過ぎだ。

民衆というだけで民衆の価値が立派に

存在している。

良い言い方をすれば勇者とは

自らが成りたい、成れたら良いのにと

思える理想の体現なんだよ。」


なんか納得がいっていない様子のウリハル。


「実際に俺が続けって声掛けても

だーれも来ないが

お前の母ちゃんが続けって言ったら

万の軍勢がうおーだ。」


「僕は続くよ。」


はいはいありがとうねミカリン。


「私だって続きますよ。」


アリアもそう言ってくれるのは嬉しいけど

今は前見てね、運転中でしょ。


「ま、二~三人ってとこだ。

だが勇者の一声は多くの人々を

良い方向に導く。

更にその場に居なくてもな

もうすぐ来るって情報だけで

味方は奮起して持ちこたえたり

敵は今の内に逃げるかって

なったりもする。

本人の体の中に勇者の力の全てが

詰まっているわけじゃないのさ。」


自分の体を確認する様に触るウリハル。

うん

ペッタンコだね。


「だから今度、母ちゃんに会ったら

言って置け、申し訳ないと思って居るのは

こっちだと

俺は賞賛とそれに付随する責務を

勇者に押し付けて逃げたんだよ」


青い瞳が真っ直ぐに俺を見つめている。


「後な、親や教会がお前に偽りを

吹き込んでいたとしても

それは許してやれ

必ずしも人を善い方向に導かない真実もある。

不必要に見せて不安や恐怖に陥れるだけ

そんな真実は言わぬが花だ。」


「生徒会長の偽乳とかかな」


折角、カッコよく決めたつもりが

ミカリンの心無い突っ込みに

噴き出してしまった。

否定出来ない

条件満たして該当してる所もいやだ。


「偽乳??」


首を傾げるウリハル。


「そうだ許してやれ。」


やっと意味が分かったのか

甲高い素っ頓狂な声で

ウリハルは驚いた。


「イライザの胸は偽物

作り物だというのですか?!」


生徒会長の名前イライザか

いかにも苛めが好きそうな名前だな。


そこからはチーム貧乳の

胸囲の格差社会についての会合になった。

何か輪に入れそうも無い

俺はボンヤリと外を眺めた。


祭りとなると豹変するが

魔族は普段は夜あまり騒がないので

ひっそりとしていた。

その静寂と打って変わって

橋の向こう

ベレンはまるで眠らない街の様に

明るく賑わっている。


再び静寂な内壁に戻るまでは

この喧噪の中を馬車は進んだ。


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