第二百八十一話 夕飯エスケープ
途中で昼食を寮の食堂で挟み
午後の早い段階で
全てのスタンプを完了した。
喉が渇いたので再び寮の
食堂で終了までの時間を潰した。
「楽勝だったねー。」
ミカリンがそう言った。
丁度ウリハルがトイレで不在だ。
俺は言った。
「勇者に配慮した簡単コースだぞ。」
「そうなの?」
ミカリンは少し意外だと言った感じだ。
アリアは表情を変えない
気が付いていた様だ。
花寮は一番目立つ建物だ。クリア
学舎は一番デカイ建物だ。
一期生は今学舎に居ないのだから
一番ひっそりした学舎が一期生用だ。クリア
学舎をウロウロすれば教師の一人も見かける。
人に質問がOKなのだから
その教師に全て教えてもらう事が可能だし
知らない教師だったとしても
どうせ教師棟まで行くのだ。
残りの天文台も魔法具保管室も
知っている者が絶対に居る。
すれ違いざま他のグループのお題を見たが
ヒドイのになると文芸部部室とか
そもそも部室が存在するか怪しいお題まであった。
「アリアの方はどうだ。」
「ん何か頼んでいたの?」
本来ならダークに頼む仕事だが
ドーマならまだしもベレン
それも内壁では、流石に悪魔は活動できない。
俺の影で隠密していれば
連れて歩けない事も無いが
出られないのに連れまわしても無意味だ。
なので置いて来た。
「メタ・めた」の地下で作業の
ノルマを与え、それ以外は自由にさせた。
そんな訳で調査はアリアに頼んだのだ。
「中々粒ぞろいですよ。流石は名門ですね」
頼んだのは要人のピックアップだ。
剣でも魔法でもこの学園のトップクラスの者
各権力者の親戚縁者。
など、押さえて置いた方が良い生徒及び教師だ。
「そうかぁ?」
俺はレベル表記が邪魔くさいので
1は非表示にしてしまっていた。
だいぶスッキリで
たまに2と3が居た
教師棟では二桁の者もいた。
「レベル1ばっかりだぞ。」
「強い人がいないのはあたしも分かるよ」
ミカリンも同意した。
「リディ様達から見ればそうなのでしょうが」
要するにレベルが高過ぎるのだ。
レベル100の俺が10cmの物差しだとすると
1レベルで1ミリだ。
ただ、その1ミリの中でも
髪の毛の細さとシャーペンの芯では
何倍もの差が存在する。
もうすぐ2になろうかというレベル1と
なったばかりのレベル1では
同じレベル1でも倍近くの差が存在しているのだ。
アリアの説明を聞いて納得だ。
「思い出せミカリン。ウサギみたいなのから
初めてイノシシみたいなのを倒した
湖畔での日々を、今ではどっちも差が無いが
あの当時は血の滲む様な努力で
イノシシみたいなのに挑んでいたじゃないか」
最初は隠れたモンな
絶対負けるって分かってたから
「うん、また食べたいよね。」
「そう言う事じゃない。」
そこでウリハルがお手洗いから
戻って来てしまった。
アリアは素早く言って
話を終わらせた。
「後で書類にして渡しますね。」
席に着くとウリハルが質問してきた。
「今日はこの後はどうなるのでしょうか」
室長のアリアが連絡を聞いていた。
ここで今後の予定を述べる。
全員ゴールで終了ではなく
時間切れがあるそうだ。
その後は夕飯で自由時間。
二日目の朝からはクラス分けに従い
各教室で本格的な学園生活のスタートだ。
「そうですか。お夕飯が楽しみですね」
ウリハルの言葉に
愛想笑いを浮かべるアリア。
ウンザリ顔を隠さないミカリン。
昼飯で分かっていたのだが
ここのメシは不味いのだ。
いや
普通なのかな
「メタ・めた」のメシが美味すぎるんだ。
ブリッペは勿論、他の娘が担当の時も
ブリッペが手伝うので結局
素材の限界を叩き出す至高の味だ。
「あっ俺はちょっと用事でメタ・めたに
戻るからみんなは・・・。」
「ズルーいぃっ!!」
「お手伝いしますよっその用事!!」
最後まで言わせてもらえない。
ミカリンとアリアが凄い勢いで
食いついて来た。
「よし、全員でエスケープだっ!!」
ウリハルだけ置いて行くのも可哀想だ。
4人で「メタ・めた」に夕飯を食いに行く事にした。
席を立つ際に流れる動作の中自然に
アリアが俺に囁いた。
「二人尾行がいます」
まぁ居るだろうな
ウリハル本人も知らない護衛が
新入生の中に紛れていると考えた方がイイ。
この逃避行は早くも
そのあぶり出しに成功するきっかけに
いや
初めからそのつもりさぁ
エスケープのつもりだったのだが
終了の後、アリアが寮母に外出を告げ
普通に外出出来た。
そう言えばウォターシュート事件も
学園外のレストランだったっけな。
学園の4人乗り馬車も無料で借りる事が出来た。
御者はアリアに任せた。
ウリハルも乗馬は身に着けているが
馬車の御者は経験がなく
俺もミカリンも旅の道中で
幾度か試したのだが
お世辞にも上手とは言えない腕前だ。
特に俺の場合
少しでも俺がムカつくと
馬が怖がって暴れるのだ。
オーラ漏れていないハズなんだが
馬はその辺り敏感な生き物だ。
尾行は馬車を使用せずに
途中まで付いてきていたが
今はいないそうだ。
アリア曰く、街中の仲間と
交代したとの予想だ。
こっちは尾行馴れしているのか
アリアも撒くなどのアクションを
起してリアクションを見ないと
誰が尾行か特定できないと言っていた。
危険な尾行では無い
ウリハルを影から守る役目だ。
「メタ・めた」の事も知っているだろうし
そのまま放置しろと言って置いた。
程なくして
ドーマに到着した。
門番は初めは怪訝な顔だったが
俺が顔を出すと表情が和らいだ。
「そんな馬車に乗っているから
一体誰が来たのかと。」
「今日から学生だ。コイツで
来る事も増えるんでヨロシクな。
あ、そうだ・・・。」
俺は懐に手を入れ
クリシアで入手した現地の酒
それを一瓶手渡す。
クリシアの土産だと言って手渡すと
門番は大層喜んだ。
酒が好きそうだと睨んでいたが
大当たりだった。
すんげぇ嬉しそうだ。
「マメだねぇ。」
感心半分、呆れ半分でミカリンがそう言った。
「んー彼には色々迷惑をかけてしまっていてな」
多分、ゲート破壊して進入したのは
俺だけなんじゃないかな。
「ここが、ドーマですか・・。」
珍しそうに街並みを見回すウリハル。
聞いて見れば初めて来たそうだ。
そういえば門番にも
目を丸くしていたっけな。
「魔族とは会った事はあるか?」
これは愚問か
新入生、星寮のメンツにも数人見かけていた。
「知り合いでは、まだ一人も・・。」
「抵抗、恐怖などのプレッシャーを
感じたりはしていないか?」
そういうのは無いそうだ。
ただ角などが珍しく
ついジロジロ見てしまう自分に
はしたないと抵抗感を感じてしまうと
言っていた。
「すぐ慣れる。これから行く
俺の家にも一人居るが
今は怖い人じゃないなから安心しろ」
「今は?」
首を傾げるウリハル。
ミカリンがすかさず突っ込ん出来た。
「だから、そう言う事を言うんじゃありません。」
ごめんねグレアちゃん。
人間街はゲートからすぐの場所だ。
一つ角を曲がれば
直ぐに「メタ・めた」が見えて来るのだが
「何事?!」
ミカリンが声を上げた。
俺も見て見ると
「メタ・めた」の横
ガレージの正面は馬車も泊められるように
広く空けてあるのだが
そこが馬車で埋まっていた。
馬車に飾られた紋章を
それぞれ見てアリアが呟いた。
「教会と魔導院それにドーマの
首脳陣御用達の馬車ですね。」




