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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二百八十 話 花寮スタンプ

召集が掛かり一階の食堂に

新入生は集められた。

室長のみが更に前で集められ

何やら連絡を受けていた。


最上階の高級ホテル並みの部屋と

違いここは普通の内装だ。


「学園内の施設及び設備の

案内だそうです・・・。」


アリアはそう言って

受け取った用紙を広げて見せたが

建物の青写真みたいな図だけで

文字が見当たらなかった。


「これじゃ何処がドコだか分からなくない」


すかさずミカリンが突っ込みを入れた。


「はい。そのオリテーション形式と言いましょうか

指定された施設の記入とスタンプを・・・。」


成程ね。

自分達で苦労して発見した場所は

ただ案内され連れまわされた場所より

キッチリ頭に入るだろう。

何か協力して作業をする事

これも初対面のルームメイトと

親睦を深めるのと同時に

各々の性格も把握しやすいだろう。

ただ


「入っちゃいけない場所もあるんじゃないか」


その俺の疑問にもアリアは即答した。


「当然、お題にそう言う場所は含まれませんし

進入禁止の入り口には今日はガードが付いているそうです。

それに入室は基本無いそうで」


正解なら入り口にスタンプマンがいるそうだ。

クソ

間違いついでに女子更衣室に入れない仕組みだ。

やるなハンスめ


その他の注意事項。

「騒がない」 授業中の場所もあるしな。

「人に聞くのは有り」 これ無しだと終わらない可能性もある。

「班で固まって行動」 手分けもサボりも無しか


「で、俺達はいくつ回ればイイんだ。」


アリアは青写真とは別のスタンプカードを

取り出して見せた。

これも班ごとで異なるようだ。

まぁ同じにしたら民族大移動で

スタンプ待ちが偉い時間になってしまうだろう。


俺達のお題


〇花寮入り口

〇1期生校舎入り口

〇職員棟入り口

〇天文台入り口

〇魔法具保管室


「見当もつかないや。リディよろしく」


ミカリン早くも諦めました。

まぁどうせ手分け出来ないが

してもバレないとも思うが

花寮辺りの連中だと

既に家柄カーストで

「行ってこい、俺はここで待つ」

なんて奴が出て来るんだろうな。


「そうですね。リディの指揮で良いと思います。

私はこのまま地図とスタンプ係りをやります。」


アリアも同意だ。

問題は


「リディよろしくお願いします。」


無い様だ。

ウリハルもリーダーがやりたいワケでは無い様子だ。

前回のガバガバも単独で勝手に動き回っていた。

ハンスやチャッキーに指示を出しているとか

思えない、むしろ勝手に動き回る勇者を

気を利かせてサポートしていた様なパーティーに思えた。


ウリハルを鍛えているのがガバガバなら

指揮能力は無さそうだ。


宜しくお願いしますと俺に言ったと言う事は

丁度良い今ならすんなりウリハルを

パーティに入れる事が出来そうだ。


「引き受けた。全員、俺の指揮下に入れよ」


念押ししておく

宜しくお願いしますが嘘でなければ

もうメニューで見られるハズだ。


俺はメニューを開いて確認した。


「あの・・・何を・・・。」


何も無い空間を見つめ

指をスライドさせ始めた俺を

不審に思ったウリハルは困惑して

そう言ったが

ミカリンが素早くフォローに入ってくれた。


「あーこれリディにしか見えない魔法で

何か確認する行動だよ。

すぐ終わるから気にしないで待ってて」


レベルは1だが身体能力は一番高い。

今の偽装した俺達は数値以上の力が出せるので

遅れを取ったりはしないが

流石サラブレッドだな。

気になるのはステータスのどこにも「勇者」とは

表記されていない事だ。

種族は人でクラスが戦士

武装していない今はジョブは空欄

ステータスはノーマル。

どれも弄る事は出来なかった。


まぁ後でゆっくり考えるか

今考え込んでも待たせているみんなに悪い。

俺はメニューを閉じて言った。


「じゃ近い所から行くか。」


俺を先頭にウリハル、アリアと続き

ミカリンは俺の斜め後ろで

ウリハルを横からガードする位置にいた。

壁際から飛び出してこない限り

ミカリンがどの位置からでも

最速で向か撃つ恰好だ。


今までの旅路のクセだな。

学園の中なんだから

魔物に襲われる事なんて無い

そんな位置取りしなくてもイイのに

と思いつつも

そんなミカリンを頼もしく感じた。


「近いトコロって?」


ミカリンの質問に俺は

まだ付けっぱなしの名札を指さした。

星の俺達は黄色だ。

残りの3色、赤、青、白は

青=月

白=雪

こんな所だろう。

俺はそう説明した。


「名札の話などしていません。

どこに向かうかの質問ではないのですか」


真後ろのウリハルから

そんな突っ込みが入った。


えーっ想像力皆無なのか


アリアが気を利かせて解説してくれた。


「つまり赤の名札の列が連れていかれた

建物こそが花寮だと。」


「おーっ成程!!流石リーダーに

推されるだけの事はありますね。」


大袈裟に驚くウリハル。

ほめ殺しに入ったのかと思う程

俺を賞賛し始めた。

初めは馬鹿にしているのかと思ったが

漏れて来る不味い感情からも

本気で賞賛している事が分かった。


うーん、ちょっと手の込んだ嫌味は

通じないタイプだ。

京都人が最も嫌がる人種だ。

ウリハルならぶぶ漬けを

喜んで平らげるだろう。


俺達は赤い名札連中が連れていかれた

建物に向かった。


もう間違えようが無い

城かと誤解するほど偉そうな建物だ。

貴族、上流階級のお坊ちゃんお嬢ちゃんが

お泊りになられるのでござりますれば

こんなモンなんでしょうかね。


振り返り星寮を見上げると

無駄な虚飾のない合理的な美しさ

機能美を感じる。

これを見た後で花寮を見ると

実は馬鹿にしているのではないかと

勘繰りたくなる感じだ。


建っている位置も壁際で

外からも目立つ


その内側に隠れる様に星寮だ。

・・・もしかして盾代わりに

しているのだろうか。


外の廊下も学舎のある建物まで

屋根が付いていて悪天候でも

お濡れ遊ばせないだろう

その恩恵に預かる恰好で

星寮も濡れずに済む

ありがたやありがたや


花寮にすぐ到着

アリアは早速スタンプ係りに

カードを提出していた。


「あら・・・・。」


花寮入り口から

生徒会長様が丁度出て来るトコロだった。


「これは生徒会長様。お久しぶりでございます。

・・・喉乾いてませんか?」


俺は例の気持ちの悪い笑顔で

恭しく挨拶した。


「結構よ・・・って、これは!!」


俺達を見回し視線は

俺より後ろの人物を見てから

生徒会長は

慌てて深々を頭を下げた。


取り巻きも気が付き

遅れながらも

続いて頭を下げた。


「頭をお上げください。

ここでは私は只の新入生。

そのように扱う事を希望します。

宜しくお願い致します先輩方」


ウリハルはそう言って一礼をした。


お前なぁ

その言い方、逆に脅しだぞ。

外に出たら覚えてろよって事か。


俺は敢えて突っ込まずに見守った。

ウリハルは裏の気持ちなどなく

正直に言ったのだが

やはり相手にはそうは伝わっていない。


面白い珍味が流れて来る。


(ムカつく、もう勇者なんて要らないんだよ)

(偉そうに金くい虫が)

(誰かヒドイ目に遭わせろよ)


これは嫉妬に入る部類か

気持ちよく醜い感情が駄々洩れだ。

しかも、どいつもこいつも

表情は高貴で穏やかだ。

スゴイな

感心するわ。


表情だけでなく優雅に

挨拶の言葉を述べる生徒会長と

醜い仲間達。


ウリハルは笑顔で満足そうだ。


「良い方達ですね。」


純粋培養すぎて

言葉通りにしか受け止めていない。


ど う す る 


真実を教えて地獄に叩き落とすか

勇者の悪感情

純白のつぼみが絶望に黒く染まる。

先ほどの下劣な連中とは

比べ物に鳴らない程の

極上な味わいだろう

おかしいな

人化なのに乾く


「リディ?」


ふと気が付くと

不思議そうな顔で俺を覗き込むウリハル。

生徒会長達の背中が

すぐそこに見えた。

挨拶が終わったばかりなのだろう。

アリアもミカリンも

ウリハルの言葉で俺を見た。


「何でもない次に行こう」


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