第二百七十一話 初めての人斬り
しばらく眺めていると
東の方角からバラバラと
まるで逃げているようにやって来る
モヒカン達が確認出来た。
「ようにじゃなくて逃げているのか。」
若いのを中心にした戦士系だ。
確かナナイの手下になった連中じゃないか。
それに気が付いた俺は
着陸を後回しにして
逃亡とは反対方向へと飛んだ。
この先に彼等の脅威があるに違いない。
MAPを開き
ナナイの位置を見る
やはりこの先にいる様だ。
すぐにパーティの範囲に入り
ナナイのステータスが更新される。
HP減っている。
遠慮なく笑う。
「何してんだあいつ」
とは言うものの
あれでも13将だ。
特に最近は刀に凝っているせいで
アイツのサーベルの技が気になる。
何だかんだで物理で
この体を貫通させたのは
今の所ナナイだけだ。
ベネットに迫る技の持ち主だろう。
死んでも頭は下げないが
どうしてもと言うなら
教わってやらなくも無いのが
俺の本音だ。
大体、俺が召喚したってのに
何にもして・・・・るのか
俺が放置しているんだ。
ともかくだ。
ナナイのHPを減らせる相手となると
真向勝負なら上位天使以上だ。
或いは特殊な戦法を行使する相手、1型だ。
どっちにしろ
俺も真面目になった方がいいな。
そう言えばダークどうしたっけ
・・・昨日から完全隠密のままだ。
解除し忘れてたゴメン。
ナナイが見えた。
誰も居ない荒野で
1人サーベルを抜き構えている。
相手は見えない
周囲を探る様な姿勢から
相手は1型で間違いないだろう。
「行け!ダーク」
「ハッ!!」
着陸姿勢に入った俺の影から
弾丸の様にダークは飛び出した。
速い。
走りながらクナイを投げる。
着弾先に申し合わせた様に
波紋が現れドンピシャのタイミングで命中した。
クフィールは持ち前の属性「時空系」
ハンスは「風属性」
ダークは「勘」
といずれもバラバラだが
どいつもこいつも俺より的確に察知する。
「ナナイ殿ーっ!!」
着弾したところへナナイは
振り向きざまサーベルを繰り出すが
これは空振ったようだ。
「ダークか?!済まない」
「常に背後でござる」
挨拶もしない
必要最低限の発言だけのダークは
長時間完全隠密のうっぷんを晴らすかの如く
動く動く
ナナイを忠心に
半径10m程度の円周を
回ると火炎が巻き起こり
地面に火の輪が出来上がった。
行動の意味が分からないが
何かカッコイイ
その後互いに背を預ける恰好で構えた。
俺は一連の連携を羨ましがりながら
着陸態勢だ。
何か悔しいので俺もかっこつけよう
減速無し地表付近で翼を収納し
地面を割りながら立ったままスライディングだ。
コレ恰好いいんだよね。
よし
行くぞ。
俺のスタンディングスライディングは
1秒と持たず
躓き、派手に転倒した。
俺は
レース中に取れちゃったタイヤみたいに転がった。
超恥ずかしい。
肉体にダメーシは無いが
精神的ダメージがデカい。
何か「アモン殿ー!」とか
「何をやっているのだ」とか聞こえるし。
止めて
注目しないで
「俺に構うな!!」
カッコよく言うつもりが
語尾が少し笑ってしまった。
ナナイがボソッと「構っていられるか」と
ボヤいていた。
ごもっともです。
相性が悪いのだろうか
どうもナナイが絡むと
俺は何かにつけ上手く行かない。
そうだ
全部ナナイのせいだ。
うつ伏せで大の字に地面に伏し
口内の泥を吐き出しながら
俺はそう思った。
起き上がり戦闘を見る
火炎陣の中心で背中合わせで
待ち構える二人。
俺は成程と思った。
火炎より外はこの二人には
攻撃に適した距離では無い
1型も遠距離攻撃を仕掛けて来た例は
今のところない。
1型は当然陣の中に出て来なければ
いけないのだが炎の規模から言って
中の暑さ、いや熱さだな。
相当な温度になるだろう。
もう全方位ケバブ焼きだ。
昔はシシカバブって呼んでた。
生き物にはキツいが
義体の二人には問題にならない温度だ。
更にその熱さは大気にも及び
空気は激しく乱れ上昇をしている。
これなら
ハンス式の大気変動での察知も
視覚的にも行いやすくなる寸法だ。
いかに出現場所を速く特定出来るかが
勝負の分かれ目な1型戦においては
有効しかない陣形と言っていい。
陣を引いた直後の数回
ダークのクナイで出てくる前に
迎え討たれていた。
何人居るのか知らないが
外、こちら側の様子も理解したのか
今は出て来る気配が無い。
攻めあぐねているのだろう。
しかし、今度はそうなると
陣の外にいる俺を狙うんじゃないか
俺は毛髪にあたる部位
今まで意識して稼働させてこなかったが
その毛髪にゴキブリのお尻の二本の角
あれと同じ役目を与えていた。
尾角と呼ばれる器官で
気流を感知し視覚外からのスリッパ攻撃を
これで捉えて回避に役立てているそうだ。
毛髪が捉えた感覚
そのタイミングに合わせて
俺は背後に手を回し
背中から創業祭を生成しながら
背負い投げの要領で勢いよくぶった切った。
一番切れ味の乗る
切っ先は出口より後方になってしまった。
その為に手元付近
振り回す円周の中心に近い部分
相対的に速度も距離も出ない為
切れ味は各段に落ちてしまう。
その部分に1型の顎が引っかかり
そのままめり込み、穴から強引に
引っ張り出すと
そのまま背負い投げの勢いで
1型は発射された格好になった。
「べっぶぅ!」
1型はそのまま
炎の壁を貫通してナナイに命中し
ナナイもろとも反対側の炎の壁に
二人仲良く飛び込んだ。
「あちちちち燃える燃える」
ナナイの悲鳴が聞こえる。
俺はたまらず爆笑してしまった。
やっぱり相性が悪い。
「やりすぎでござるよ。」
いや、わざとじゃないよ
口調から怒っていると言うより
呆れている感じで
ダークは慌てる様子も無く
ゆっくりとナナイの方へ歩き
懐から何やらビンを取り出し
中身を適当に巻いた。
その部分の炎はまるで幻だったかのように
一発消火された。
緊張感の無いダークの様子から
俺が仕留めたのが最後だったと思い
念の為に確認を入れた。
「今ので最後か」
この程度の炎では俺には全く問題にならないので
俺は歩いて、まだ燃えている手前の
炎の壁を通り過ぎ
ダークにそう聞いた。
「で、ござる。」
ダークは俺に振り返る事無く
衣服が燃えてボロボロになった
ナナイに手を貸してやっていた。
隣に倒れている1型を見て
俺は無いハズの胃が裏返る錯覚を覚えた。
1型は人間ベースだった。
下級悪魔と違ってグロい状態だった。
支配が消え、黒いボディは元の姿に
戻っているのだが、上半身を
中途半端に縦に切断され
中には新鮮な臓器が覗いて見えていた。
仮面は下半分が創業祭の刃で
破壊されて赤い紋様は既に無くなっていた。
外れ掛かった仮面の向こうには
褐色の肌と頭部の金髪モヒカンが見て取れた。
逃亡していたモヒカン軍団は
親分を置いて逃げたのでは無く
親分の命令で離れたのだ。
倒すどころか敵の数を増やしてしまう。
「アモン殿?どうかしたでござるか」
表情に出していないつもりだったが
バレバレなのか俺の様子の急変に
気付いたダークが心配してきた。
「なんだ、まるで初めて人を斬ったような顔して」
からかうような調子でナナイも言って来たが
やり返す事が出来ない。
初めてじゃないかな・・・。
悪魔光線で蒸発させたりはしていたが
物理、刃物で殺害は
悪魔や天使、魔物などで馴れてはいたが
純粋に刃物で人を斬ったのは初めてだ。
うわぁ
何か嫌だ。
嫌悪感しか湧かないわ
俺は人斬りには向いていないようだ。
食用に動物の解体をしているので
こういうグロいのは馴れているハズだ。
現に見える骨や臓器も
動物のモノと質的に大差が無い。
無いのだが
それはそれで、また嫌なのだ。
特別であって欲しい
食用動物と同じだなんて嫌だ。
返事をしない俺を見て
察してくれたのか
ダークは死体に再び火を放ってくれた。
俺は両手を合わせ祈った。




