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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二十七話 稽古3

尻もちを着いた状態のまま

クロードはブーツの先で

スパイクを軽く蹴る。

クーン

鈍い音が聞こえる。


これが全身を貫いていたのかも

知れないのだ。


「なんじゃあ・・・コレは?」


「スパイクという魔法で

出来た棘です。時間が経てば

勝手に消えますから放置で大丈夫ですよ」


「これも魔法なのか・・・・

火とか雷だけだと思っていたぜよ」


まぁ

攻撃呪文としては

そっちの方が優秀だしな。


もしかして土魔法は珍しいのか


「ミカリン・・・・。」


「・・・何。」


「もしかして私達が居ない方が

マスターは強いのでしょうか」


「そんな事は無いよ。ただ・・・」


「ただ?」


「うーん。企むと厄介な強さを

発揮する奴だよ。普段は僕等二人の動きを

読み切れないから深く企めないんだろうね

単独で強くなった様に見えるのはそのせいだと思う」


誰がタクラマカン砂漠だ。


「痛つつつ」


クロードが悶絶し始めた。

その時は気が高まっているから

分からない。


これは人間が生き残こる為の

脳の機能だ。


肉体を破壊してでも

運動が優先される危機的状況がある。

その時に動ける様に

脳が痛みの信号をカットするのだが


痛みとは肉体の損傷を知らせ

それ以上壊さない為に動きを制限する

安全装置だ。


安全な状況になったら脳は安全装置を入れ

正確な肉体の状態を知らせるのだ。


俺は簡錫をしまい

回復呪文用の短い杖に持ち替える。


回復呪文に限っては

こちらの方が効果が高いのだ。


教会の秘術と違い

魔法は自分の外の力を利用する。

その働き掛けに自らの魔力を消費するのだ。

働きかける先が異なると

媒体もそれぞれ異なった作用が出る

余裕が有るなら呪文ごとに得物を変えた方が

良い位だ。


初級の回復呪文でクロードは復活した。

骨折は無く、頭と肩とお尻に打ち身だった。

流石現役G級だ。


昼食までは、まだ時間があったが

精神的に

なんかもういいいか

みたいな感じになったので

稽古はそこまでになった。


家に入る前に

装備を外し汚れた体を拭く。


家に入ると食欲をそそる

良い匂いがした。

ジゼルさんが昼食を作っているのだ。


「あら、まだ出来ていないの

待ってて頂戴ね」


扉を開けた音で俺達だと判断したのか

姿は見えないが奥のキッチンから

ジゼルさんの声が聞こえた。


「あぁお茶が先に欲しいぜよ」


そう言ってクロードはソファに

座り込んだ。


「・・・お茶ですか」


ジゼルさんは

もしかしてロシアンティもどきが

飲みたいのか


そう思ったので俺は

アイテムストレージから

茶葉とジャムを取り出し

キッチンまで行った。


もう魔法使いの認識なので

堂々とやった。


「あの・・・良かったら」


「あら。いいの?」


俺の返事を聞く前に受け取った。

よっぽど気に入った様だ。


俺は入れ方を説明しながら手伝っていると

クロードが姿を現した。


「ジゼルの言う通り、そいつスゴいぜよ」


「でしょウフフ」


まるで自分の手柄のようにジゼルさんは喜ぶ。


「見た事の無い魔法だ。坊主

学園に行っていないのに

どうやって魔法を習得したんだ」


このセリフから察するに普通の人は

レベルが上がれば勝手に使えるモノでは

無いということだ。


なんて誤魔化すかな・・・・


俺が迷っている内に

クロードの方が勝手に諦めてくれた。


「まぁ無理に言わなくてもいいぜよ」


剣術の時と同じ反応だった。

追及してこないのは助かる。

ただ今後、同じ様に質問される事は

特に学園に入れば必ずあるだろう。

それまでにうまい言い訳を考えておかねば。


俺にとっては稽古よりも

稽古後の方が勉強になった。


そのまま昼飯になり

一休みすると俺は冒険者協会に

足を運んだ

アルコは学園に入れるのか

その疑問の答えを求めてだ。


結果的に良く分からない

という事だった。


受付嬢も上に取り合ってくれたのだが

詳しく知っている者がココには居なかった。


多分、大丈夫だと思うが保証は出来ない。


やはりココは最前線の砦だ。

学園の入学資格を尋ねられても

困るだけだろう。


「行ってみるしか無いな」


クロードの家に戻りがてら

店を回り、昨日の収入で

必要になりそうなアイテムを

いくつか入手する。


戻るとミカリンとアルコが

出発の準備を終えていてくれた。


俺達は世話になった礼を言う。

そうだ

旅立つ前に気になった事を聞いておこう。


「クロードさん」


「ん、何ぜよ」


「何でこんなに人が居るんですか」


冒険者協会。

ベレンでは悪天候でもない限り

昼は大体皆冒険に出払っているのだ。

しかし、ここブンドンの村は

この砦の中にまだ大勢の冒険者がいた。

俺はそれが気になったのだ。


クロードにそう説明した。


「あぁ・・・ここはな。」


エルフの要請で縄張り内に

作られた人の村。

純粋な冒険よりも

森の防衛が優先される。

いざと言う時、誰もいませんと言うワケには

いかないとの事だった。


しかし、そうなると

次の疑問が出て来た。


前回も通過した箇所だが

魔物の数はそうでも無い場所だ。

居なくは無いが

こんな大掛かりな防衛体制を

しくレベルでは無かったハズなのだ。


「坊主は・・・最近の事は知らねぇクセに

昔の事ばっかり良く知ってんな」


空白の十四年があるのです。

ジゼルさんとの雑談から

跳躍した細かい時間の特定に至ったのだ。

誘拐された日が覚え間違えていなければ

今はアレから14年目になる。

奇しくも

と言うべきか、やはりと言うべきか。

今の俺の年齢分と一致する時間だ。


クロード何か奥歯に物が挟まったような

言い方に変わったので俺の方から

水を向ける事にした。


「黒い体に白い仮面を付けた感じの

魔物ってこの辺りでも出るんですか」


「坊主!!どこでそいつを見た」


クロードが一瞬で殺気立った。

当たりのようだ。

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