表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
269/524

第二百六十八話 気にするトコロ

アリアのバロードでの用事。

バロードを取り仕切っているマフィアは

フリューラの兄弟分のマフィアだ。


この世界では報復が当たり前なので

事前にそれを手打ちにする交渉に

アリアは一人乗り込んだが


まだバロードではフリューラ崩壊が噂程度で

絶対的な力を誇っていたフリューラが負けるはずがない

これは混乱を招く為だけのフェイクと判断され

そのまま拉致られた。


あのハゲ親父はマフィアと言うよりは

パトロンのような立場で

金とマフィアの力に溺れ

やりたい放題状態だったようだ。


あの剣士は金で雇われた用心棒だった。


フリューラのバックに悪魔が付いている

その噂を知っていた。

丁度良いので俺は悪魔男爵バロンに変化し

「もっと強い悪魔がレイベルニに付いた」と

納得させておいた。


生かしてやるから

報復を止めてレイベルニに庇護を

求めた方が賢いぞ。

と宣伝を頼んだ。


アリアは流石にサンバダの衣装では

外に出られないというので

屋敷の中から適当な衣装を拝借して

表門から堂々と出ていく


俺の着陸は結構大きな音だったのだろう

夜中だと言うのに野次馬が

屋敷を取り囲んでいた。

中から出て来た俺達に皆

何が起きたのか聞いて来たが

「知らん。マフィア同士の抗争じゃないかな

そのドタバタに乗じて攫われた恋人を

奪取してきただけだ。」と答えて

人垣を押し通った。


はぐれない様にアリアの手を

しかっりと握って足早に立ち去る。


「宿はどこなんだ。」


「えっ?ええ!!」


野次馬から遠ざかったのは良いが

どっちに行っていいのか分からない

俺はそう聞いたのだが

何だかアリアは上の空だ。

薬物は抜けたハズだが

二日酔いみたいな状態なのだろうか


「あの・・あのですね、あの」


暗くて表情が見て取れない

足を見ると震えている様だ。


ああ

あれか

ホッとしたら恐怖が襲って来た感じか

それにしては美味しい感情が漏れていないが

堪えているのか。


どうせ人通りも無い。


俺は強引にアリアを抱きしめると

頭を撫でて優しく言ってやる。


「怖かったな。もう大丈夫だ」


震えはピタリととまり

アリアの方から結構な力で

しがみ付いて来た。

カブトムシ並みの抱き着き力だ。


よしよし

可哀想に。


なんか

いっつまでも抱っこ状態だ。

痺れを切らしながらも

俺は優しく取り繕って言った。


「宿はドコなんだ。」


「はい・・・こっちです」


マンガにしたら目がグルグルの状態で

少しフラついているアリア。

心配だったので

お姫様抱っこを申し出たが

手をブンブン振って大丈夫と答えた。


到着した宿は

観光地から多少離れた場所で

建物も簡素

って言うか普通だよな。

バロードの中心部付近の建物が

余る金に物言わせて

意味不明に凝った作りのモノが多いのだ。

京都駅みたいな感じだ。


部屋も質素だ。

冒険者協会の下っ端の部屋を思い出させる。


さっさと片づけて

俺の家に行きたい。

あの剣士が上手く脅してくれればいいが

仇ーっとか言って鉄砲玉が襲ってきても

おかしくは無いのだ。


「あの・・・・」


そう思って部屋を見回している俺に

アリアは何かモジモジして言い始めた。


「ここシャワーも無いし・・・。」


何だぁ

風呂でも入るつもりだったのか

意外に大物なんだな。


「いいだろ別に」


そう答えた俺に

何か

信じられないこの人

みたいな表情のアリア。

頭部を隠す為に

この時期では目立つフード付きの上着で

顔も半分位しか見えなかったが

それでも読み取れた。


まぁ女の子だから

分からなくも無いが

俺の家まで我慢しろ。


「それに・・・・その

やっぱり毛が生えるまで待って欲しいの」


・・・・。

ああ

そう言う事ですか。

ゴメンゴメン

鈍感だったね

女子にそこまで言わせるなんて

ダメ男だな俺は

いやね

イケメン冒険者の恰好してるけど

中身がブサメン日本男子だから

どーも

スマートに運べない。


よしよし

ここはアレだ。

カッコよく決めるぜ。


「俺はパイパンでも気にしないぜ」


引っ叩かれた。

髪の毛の事だった。


取り合えずそう言う事は

安全な場所へ移動してからにしてくれと頼み

荷物を纏めて

足早に宿を後にした。


二回目の夜間飛行にアリアは大喜びで

機嫌も直ったようだ。


郊外の丘、秘密の縦穴から

地下通路を通る所ではキャーキャー

言っていた。

空と違い、近くに壁とかがあると

体感速度は増すので

やっぱり怖いのかとも思ったが

ジェットコースター的恐怖の様で

美味しい感情では無かった。

なので飛行したままガレージ真下まで来た。


ここで降りてもらい

俺もチンチクリン化する。


「この上だ。」


「スゴイ、リディ君のおうちって

秘密基地みたいなのね。」


この姿の時はリディ呼びなんだな。


石造りの階段を上って

ハッチを開ける。

大きなゴミ回収箱の床に偽装した

扉が開きそのままガレージだ。


「おかえりー。」


「おぅただいま」


ミカリンがガレージに居た。

特に驚く事は無かったが

不審と言えば不審だ。

ガレージに用など俺しか無いハズだ。


「何か飛び出していったからさぁ」


悪魔化した俺の位置

ミカリンは体感でそれが分かる。

また宇宙旅行にでも行かれたのかと

心配させてしまったか。


「ん、ちょっと迎えにな・・・アリアだ。」


「え?誰かいるの」


グダった感じで椅子に身を預けていたミカリンは

慌てて椅子から立ち上がった。


俺は手を取ってエスコートしてやるが

流石は工作員、軽い身のこなしで

ゴミ回収箱の高い側面から

綺麗に跳躍して着地した。


「あ、くクリシアのマフィア

レイベルニ・ファミリーのアリアです。

リ・・・アモン様にはおお世話になっています。」


誰か居た事に驚いている様子だ。

文章も何か変だぞ。


「いらっしゃーいって、また女子が増えるの」


アリアを見たミカリンは愛想よくアリアを

歓迎し俺には

呆れた調子でそう言った。


「カシオはジジィだったぞ」


女子ばかりでは無いだろう


「これで客室無くなるよ」


3階の間取りとメンバーを思い浮かべる俺。

ミカリン、ブリッペ、アルコ、グレア、でアリアか

物置替わりの一部屋を数えると

6室完売だ。


「部屋いっぱいあるから余裕だと思っていた。」


当初はそうだったんだが

男子用の二階ですら

俺、ナリ君、ストレガ、カシオと4部屋だ。


なんか大所帯になってきたな。


もう遅いのでミカリンに部屋までの

案内を頼み、ちゃんとした紹介は朝にした。


「途中まで一緒だった子に似とるわい」


「本人だ。」


「冗談じゃ」


本当かカシオ?

老人がやると冗談に見えない。


朝食がてらアリアを紹介した。

ニット帽子は俺が先に説明した。

最近はそうでも無いらしいが

昔気質な人には

屋内、それも食事時に帽子は礼を欠く。


俺が先に理由を説明すると

女子軍団からは同情の嵐で

本人がドン引きする程だった。

まぁ

手厚く迎え入れて貰って良かった。


食後は今後の活動についての話題になった。

カシオはここで隠居。

グレアは店長を続けたいと申し出てくれた。

有難いのでそのままお願いした。

ブリッペもこのまま手伝いその他だ。

俺とミカリンは学園に入学し

寮に入るが頻繁にここに戻る。


寮自体が遠方から出て来た学生の為の

施設の意味合いが強いのと

もう一つは親の加護から

離れる事に慣れる意味合いで

近くても貴族は入る慣例になっているそうだ。


アルコは何と通いで

学園では無く、一般常識がメインの

学校に入学する事になった。

これはアルコたっての希望だ。


「内容を確認しましたら私には

こちらの方が有意義だと思いました。

お許し願えませんでしょうかマスター。」


ベアーマンの集落で得た常識と

人間社会じゃ大分異なるからなぁ。

俺は何よりアルコが能動的に

動いた事が嬉しかった。

俺の方から言いつけるばっかりで

自分からは我儘を全然言わない10歳児だ。

心配だったのだ。


「許すも何も無い。頑張るんだよ」


今度、黄色い帽子とランドセルを

作っておこうか・・・・


その姿のアルコを想像して止めた。

犯罪の匂いしかしない。


「ねーアリアちゃんは」


ミカリンが大人しく聞いているアリアに

そう振った。

俺は慌てて制した。


「アリアは立て続けにドンパチがあって

体の方は魔法で回復しているとはいえ

精神的には疲労やダメージも大きい。

急かすな、しばらく

少しゆっくり休んでていいぞ。」


ミカリンは嫌らしい笑顔で

俺に突っ込んで来た。


「あれーアリアちゃんには優しいね」


「いや、俺はみんなに優しいぞ

ブリッペ以外は」


すかさずブリッペが食いついて来た。


「何でブリッペだけ差別するのー

ずるいブリッペ甘やかされたーい」


「そう言う所があるから

特別厳しくします。」


アリアはモジモジと

申し訳なさそうに言った。


「だ大丈夫です。何か仕事を

頂ければやりますし

無ければ外に働きに行って

最低でも家賃と食費ぐらいは

入れられる様にその・・・。」


グレアが店長の顔でアリアに

色々尋ねた。


おお

面接か


幾つかの質疑応答の後

グレアは俺に聞いて来た。


「オーナー、彼女は労働力として

ここに招いたのですか。」


「んにゃ、違うよ。」


連れて来たと言うよりは

・・・・勝手についてきたんだよな。

昨夜のバロードが目的なら

もう終わった。

クリシアに帰ると言わず

ドーマまでついて来たと言う事は

ベレンにもマフィアがいて

同様の用事があるのかも知れない。


ここは聞いておくか

昨日みたいなのはもうゴメンだ。


「アリア。バロードみたいな用事が

ベレンにもあるのか」


ドーマはほぼ魔族だけの都市だ。

人族のマフィアは流石にいないだろう。

となると、すぐ隣のベレンが怪しい。

あるなら入学前にさっさと

片づけてしまいたい所だ。


「あっいいえ。バロードだけです。

後は問題無いです。」


俺とアリアのやり取りの最中

グレア、アルコ、ブリッペ、ミカリンが

何か顔をつき合わせて相談している。


・・・アリアを苛める相談じゃないよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ