第二百五十七話 破滅と融合
ここで疑問が湧いた。
世界が弾け、俺がその破片だと言うのはおかしい
俺の世界は存続していて
少なくとも20年以上は経過しているのだ。
これはオリジナル俺のログインで証明出来る。
俺はその疑問をそのまま石板にぶつけてみた。
帰って来た返答は想像を超えた。
「弾ける際に隣に吸収された世界じゃ」
泡は近ければ近い程
同じ歴史を辿っているそうだ。
それこそ隣の泡は
朝食のオカズが目玉焼きか卵焼きかの差だそうだ。
世界が弾けなくても
成分の移動は恒常的に(個人的に)発生していて
当人は違う世界に来た事を自覚出来ないそうだ。
既視感は脳の錯覚では無く
前の世界で先に体験した事実だし
「あれ、この人もっと前に亡くなっていなかったっけ」
有名人の訃報を聞いた時に感じる勘違いもそうだ。
上記を感じた事がある人は移動した人だそうだ。
「絶え間なく壊れては産まれ、常に混ざっておる」
「ふーん、じゃあ2000年も歴史があった
元の世界の俺の国は希少なのか」
笑われた。
そんなに長く持つ泡は無いそうだ。
「混ざった異物、その整合性を世界は保とうとする
というか無茶苦茶な解釈で納得しておるのじゃな。
例えば・・・ダーゥンとやらの言う進化論じゃ」
イが抜けているが
そのまま流した。
「猿は永遠に猿のままじゃし、人は最初から人じゃ
そうあれ、と創造されたのじゃ」
だからミッシングリンックなど
永遠に発見されない。
無いのだから
これは不思議と異を唱える気にならなかった。
擬態
枯れ葉そっくりな虫がいたりするが
枯れ葉に近い外見の固体が生き残り
より洗練されていったと言うが
それにしては客観的に似すぎている。
明らかに外から見て似ている。
だんだん近づいたと言うより
見て作ったと言う方が納得だ。
そんなに近くなる前に捕食されて全滅する
可能性の方が高いし
その虫を全く違う環境に置けば
違う枯れ葉の姿に変化していった
そんな実験結果も聞いたことが無い。
「後、化石もそうじゃ
仮にここが元の世界の本当の君の部屋で
ワシとアモン君が死んだとする。
化石になると思うかね」
成る気がしない。
「しかし、恐竜とやらは
そんな感じで化石になっておるよな。
巣の卵やら草食竜に襲い掛かかっている肉食竜やら
足跡やら、ついさっきまでの生活が窺える状態でな
変じゃろう。」
思考を読んでいるのは間違いない
今俺は化石と地層を考えていたのだ。
「地層もしかりじゃ
木の年輪の様に地面は降り注いでは来ない。
土の誕生は皆同じ時期じゃ
何年度産の土など無い。」
「土には粘土なあれど年度は無いのか」
「ぶうぅおわはっははっは!!」
石板が爆笑を始めた。
ギャグと呼べる程のレベルでは無い
初めは馬鹿にしているのかと思ったが
「ヒィー年度粘土ははははははは」
本気でウケている。
天界で動く事も出来ず
限られた神や天使と会って
会話・・・もしてないのか
していても恐らくギャグを言う感じでは無いな
ウルやラハを思い出して
俺は結論づけた。
神、ギャグ馴れしてない。
「川の底に常に積もって行くなどと言うが
陸地では関係なかろう
第一風などで運ばれる土だって
何処かの地層から剥がれて飛んでくるのだしな
ピラミッドや古墳が埋もれていないのに
それを建造した人々の住居だけは埋もれたと言うのか
地層がずれてしまうのぉ
何億年後に掘り出した新人類は
古墳やピラミッドを作った人類の姿を
どう特定するのやら」
そうだ。
恐竜の地層を鵜呑みにするなら
雪だるまのように年々平均的に
埋もれて行かねばならない。
そして年々巨大化していく
その土はどこから来るというのか
「じゃあ恐竜は・・・」
「遥か昔に合体した遠い泡の痕跡じゃ」
四大文明が申し合わせた様に
同じ時期に発生している事。
オーパーツ
これらも世界の融合と
その誤差の補正の結果だと言う。
「後、面白い所ではな音楽ってあるじゃろ
あれもかなり遠い世界の残滓で
そこでは言語として使用されていたものじゃ」
感情を揺さぶるワケだ。
歌詞を乗せる作業は
ある意味翻訳なのだ。
世界の破滅と融合
俺が居た世界も
昨日始まった2000年の歴史を持つ
世界だったのかもしれない
そうなると
これは
「人類は破滅を経験出来ないし理解出来ない」
破滅しないって事か
「恐竜の様になる可能性はあるぞや」
融合した先の支配種族になれなかった場合は
そう滅ぶと言う事だ。
ほぼ変わら無い隣の世界との融合は
問題が生じないが
離れた世界との融合は誤差が大きすぎる
世界の力だけでは補正しきれないというのだ。
ここで閃いた。
思わず声が出た。
「まさか、バングは」
石板は変わらない口調で肯定し補足した。
「・・・彼等も生き残りを掛けておるのじゃ」




