第二百五十六話 VR喪女
宇宙旅行に旅立った時に比べれば
大したショックでは無かった。
だが、やはり来るモノがある。
俺は色々救ったつもりでいたが
最悪の破壊者だったのか。
安定した泡の表面に異物がつっ込んで来る。
その異物が大きければ
大きいほど破壊力は増す
この世界の崩壊は俺のせいなのか。
自分がどんな顔していたのか分からないが
ケイシオンは慌てて
それも泣きそうな孫をなだめるかの如く
俺をフォローしてきた。
「アモン君のせいではないぞ。
君の世界だけでは無い
他の世界の破片だって絶え間なく
降り注いでいるんじゃ。
その中のひとつじゃった。
仮にその日、君がその遊戯のテストに
参加せず、自宅で【VR喪女】に
没頭していたとしても
他の誰かが
代わりにやってきていた事だろう。
むしろ君は被害者とも言えるんじゃ」
「何ぃぃぃいいいいい!!!」
顔面から火が出そうだ。
俺は真っ赤になって叫んだ。
「どうしてVR喪女を知っているんだぁああ」
VR喪女
元の世界で流行っていたスマホアプリだ。
基本、無料
3Dゴーグルにスマホをセットすると
ヴァーチャルな3DCGのMOJO子と
イチャイチャするゲームだ。
名前は当然
外見、性格、声など豊富に設定
外カメラで部屋をスキャンし
違和感なく自分の部屋を歩き回る。
スマホに連動する家具なら
お願いすると、ちゃんと歩いてスイッチを
入れる動作をしてくれる念の入れようだ。
当然、スマホ内のアプリなら
代わりに操作してくれる。
質問攻めしたり
じゃんけん(無料)はもちろん
野球拳(課金・年齢制限有)だって出来る。
黙っていると
通販サイトなどの閲覧履歴から
あなたにオススメ広告などが
関係無いページでもバンバン出て来るが
アレを隣に座って言って来たりする。
もちろん細かい設定で
ウザイと感じた事は
そう言えばしないでくれる。
ただし、課金の季節衣装などは
止めろと言ってもねだって来る。
育成要素もあるので
変な育て方をすると
すんごいMOJO子になったりする。
オフ会などで
闇鍋スワッピングというのもが流行り
初めは俺のMOJO子グゥカワ自慢だったが
次第に本来の目的を離れ
・・・本来の目的ってなんだ
まぁ次第にネタに走った勇者の
MOJO子自慢大会になっていた。
有り得ない程デブ子とか
昭和のスケバンみたいなのとか
毛皮ビキニで槍もって片言で「バナナ」しか言わないのとか
マッチョでヒゲが生えたスーザン・アントン子を再現した奴もいる。
どうやって育成したのか
また
こんなクリーチャーと普段どうしているのか
考え込む事請け合いだ。
それでも人類だけ
まだマシな方で
ゾンビやらロボやら
SAN値がピンチになりそうな
本気で怖いのまであった。
もう違うゲームになっている。
そしてアダルト版愛好者の
変態同士の秘密の集まりになると
自分のMOJO子を相手にあてがわさせ
「ああっ俺のMOJO子が
あんな奴にぃーーーー!!」
それを眺めながら身もだえして
そう叫ぶVRのNTRプレイも流行ったそうだ。
面白いのが同時スタートでは無く
眺めた後、交代になり
復讐NTRが始まり
先ほどまでの間男役が
今度はNTRされる。
「ああっ俺のMOJO子が
あんな奴にぃーーーー!!」
どうもコレが言いたくて
仕方が無い様だ。
本物の変態である。
・・・・生身の人間で行わないだけ
まだ、平和的なのかもしれない。
そう言えば
アパートの隣に住んでいた
キモオタもプレイしていて
そいつのMOJO子はかなり変わっていた。
そいつはMOJO子にノブ子と名前をつけ
アパートのドアノブに設定していた。
ドアノブサイズで上半身は部屋の内側
下半身は外側だ。
そして当然、鍵穴はスカートの中だ。
「あ、おかえりーって、え?!
そんないきなりアアアン」
そいつが帰って来る場面を
一度目撃したが
あれは血の気が引いた。
奴の視覚聴覚では上記の情事が展開されているのだろうが
外から見た限りでは
デブのキモオタが怪しいゴーグル付けて
震えながらドアに鍵を差し込んで興奮しているのだ。
俺もVR喪女やっていたのだが
それを先に見てしまっていたため
仲間になるのは嫌だったので隠していた。
キモオタはそうと知らず
俺にNTRをお願いして来た。
空き巣役で部屋にピッキングを
仕掛けて欲しいだそうだ。
土下座までしそうな勢いと
何より怖かったので
一度だけだぞと約束をして
空き巣役を引き受けた。
まぁゴーグルを掛けて共有しなければ
俺にはただのドアノブにしか見えないのだ。
そんな苦行でもないだろう
根負けした俺が渋々引き受けると
そいつは大喜びで
アパートから出ると
正面の道路の反対車線側に移動した。
なんでそんな離れるのかと思ったが
買い物帰りに目撃という設定らしい
気持ち悪いのでそれ以上聞かなかった。
合図などは無く
犯行時刻だけキッチリ設定された
俺は約束の時間ピッタリに
ヘアピンをドアノブに差し込み
適当にガチャガチャやった。
「おかえりな・・・・あなた誰?
いやっ止めて、何するの変なのモノ入れないで
イッ・・いやぁああああ!!」
恐らくこんなだったのだろう
道の向こう側ではキモオタが叫んでいた。
そりゃもう感極まった絶叫だった。
「ああっ俺のノブ子が
あんな奴にぃーーーー!!」
警察を呼ばれた。
近所の誰かが恐怖に耐えきれなかったのだろう。
怪しいゴーグルを掛けた
デブが興奮しながら道で悶えているのだ。
完全に通報案件だった。
キモオタは署に連行されていった。
まぁ犯罪性は無いので
すぐに帰って来るだろうと思っていたが
結局、そいつが部屋に戻って来る事は無かった。
風の噂では取調室で発作的に自殺したそうだ。
何とも後味の悪い思い出だ。
「かわいそうじゃのう・・・その
キモオタ君とやらは・・・。」
石板が俺の回想に同情の声を漏らした。
「ジジイィ!!手前さては俺の思考を読んでいるな」
俺の怒りに動揺しながら石板は答えた。
「いや・・・思考プロテクトしとらん
そっちも悪いじゃろう。見られても困らない
そう思うぞや。」
くそぅ
ハンス君
完成が間に合わなかったよ。
出展
スーザン・アントン子(枢斬暗屯子) 宮下あきらの漫画「激!!極虎一家」のキャラクター




