第二百五十四話 悪ふざけで死亡
まさか悪ふざけで死ぬ事になろうとは
俺はもう一度、翼を展開して
全力で踏ん張って見たが
結果は同じだった。
あのイメージした回廊
その外側は物質の存在出来ない世界
それだけでは無く
あらゆる物理法則が成り立たない空間でもあった。
操作しようにも重力が
重力として作用しないのだ。
遠のいて行くゲートの回廊。
ダークが何やら叫んでいる様だが
振動する空気も無い。
何て言っているのか聞こえなかったが
丁度良いか
聞きたくない
超恥ずかしい。
俺は先程までの出来事を思い起こした。
悪魔力の補充によって
引っかかった世界はその存在を取り戻したが
これはあくまで対処だ。
俺がここを離れれば
また枯渇し同じ状態になってしまう。
仮に俺が永遠に滞在したとしても
その
引っかかった世界は
一時的に引っかかっているだけの
不安定な状態だ。
何かの拍子に淀みから出て
本来の状態
消滅
この事態は避けられない。
それがいつ起きてもおかしくないとの事だ。
いくら俺が力を注ぎ
世界の存在を強固にしても
それは避けられない。
どんなに家を頑丈に改築しても
建っている崖が崩れては
どうにもならないのだ。
俺はその引っかかった世界を
固定する方法は無いのかと尋ねたが
誰も方法を知らなかった。
仮にあったとしても
外の空間
物体の存在出来ない消滅空間での
作業を避けられないから
事実上不可能だろうとの予想だ。
となると
方法は一つしか無かった。
この引っかかった世界を捨て
人間界に避難するのだ。
今なら平民といえど
状態は最高だし
俺と一緒に通過すれば
ゲートの負荷からも解放される。
安全に移動が可能だ。
皆に喜びと不安が入り混じった。
何がそんなに不安なのか
ダークに聞いて見たら
もう二度と魔界には戻れなくなるそうだ。
以前ヴィータが言っていた。
振動数の違いから本体は長期滞在が出来ない。
だからアンナも普段からこちらに居ないのだ。
これは天使も
悪魔も同じなのでこちらの世界では
受肉か金属粒子の義体で活動する。
召喚も同様だ。
依り代の仮の体の致命的な破損
及び本体から受信デバイスたる核の破壊で
強制的に現界は終了し
意識は元の本体に戻る仕組みだが
これから行うのは
その本体の移動だ。
消滅を避けるために
振動数とやらを人間界に合わせなければならない。
そうすれば人間界に適応できるのだ。
では召喚及び降臨で
なぜそうしないのか
それには理由がいくつもある。
本体なのでこちらでの死がそのまま死に直結する。
振動数は下げる事は容易だが
上げる事は出来ないそうだ。
一度下げたが最後だ。
さらにそれによって能力も下がる。
全く持って本体の移動は
メリットがないどころか
危険ですらあるのだ。
「このまま消滅してしまうよりは
マシというものでござるよ。」
ダークは冷静にそう言った。
受け入れがたいが悩む事は無かった。
移動は即、行われた。
前出の様にいつ崩壊するか分からないのだ。
結構な人数だったが
数回の往復で
住人全員を無事に
黒い教会まで移動させることが出来た。
外見が明らかに人間と異なるが
かつての魔都デスデバレイズの盛況ぶりから
まだ余裕で人間に近い外見だ。
先の事はゆっくり相談して考えてもらうとして
当面は黒い教会内で保護してもらう事になった。
丁度、百名程の空きも出来たので余裕だ。
アンナが引っかかった世界に
最後のお別れを言いたいと言ったので
俺とダークが付き添って
もう一往復した。
「ありがとう、さようなら・・・ごめんなさい」
肩を震わせアンナはそう言い。
俺は何とも、どう声を掛けて良いかも分からず
ただただ終わるのを待った。
やがて気持ちを切り替えたアンナは
涙の残る顔で精一杯の笑顔を作り
帰還を提案した。
なんとか
そう
そんな落ち込んだアンナを笑わせようと
どうせ俺は飛べるから安全だし
そう思って
悪ふざけで「おおぅっと」とか言って
回廊の外に飛び出してしまったのだ。
ドッキリは大成功だった。
ダークもアンナも悲鳴を上げた。
しかし喜びもつかの間
直ぐに俺が悲鳴を上げる事になった。
ここ飛べない。
以上、回想シーンでした。
絶体絶命のピンチに陥ったアモン。
彼は元の世界に再び帰る事が出来るのか?
次回、ぞくデビ第255話「アモン死す」
ご期待下さい。
・・・。
駄目だ
ギャグも冴えない。
回廊はとっくに見えなくなった。
模様は相変わらず蠢いていて
その内、自分が落ちているのか
登っているのかもよく分からない状態だ。
そもそも、ここには距離が存在しない。
俺の脳裏にみんなの顔が浮かんだ。
ミカリン・アルコ・ブリッペ・グレア
ストレガ・ヨハン・ハンス・パウル
ユークリッド・バイス・ギガ・ゲア・ガウ
オコルデ・ブットバス・ダガ
プラプリ・ボーシス・プル
ナリ君・リリアン・ビルジバイツ・梟・・・
梟とダガ以外
みんな冷たく見下した表情だ・・・。
そりゃそうだよな
こんな恥ずかしい最後って無いよな
ゴメンなさい。
穴があったら入りたい
逃げ隠れしたい
俺の
おれの逃げ隠れ出来る
俺だけの場所って
何処にあるんだろう
そう思った瞬間
俺の尻は柔らかく平らなモノに
着地した。
・・・ベッドだ。
そして、ここは都内のアパートだ。
鏡に写る俺は宮本たけしの姿だった。
うそだろ
ここまで来て
夢オチとか
殺されるぞ、そんなの
そんな不安に駆られる俺だが
窓の外に見えるハズの
東武東上線が見えない
風景は白黒の蠢く虹模様のままだった。
消滅空間に
宮本たけしのアパート
俺の部屋だけが
現れたのだ。
「どういう事だ?」
「おヌシが行きたがった場所じゃよ。
幻じゃがな」
すぐ近くで声がした。
咄嗟に身をひるがえして
声の方向を確認するが
誰も居ない。
しかし
俺が居るはずだと認識すると
人型の白黒虹模様が
先ほどの俺が座っていた場所の隣に
ゆっくりと出現した。
「ん?何者か分からんのでイメージ出来んようじゃな」
恐らく向こうは俺を認識している。
顔が
多分こっちを向いた。
声に合わせて開いた口が確認できた。
「これじゃ不便じゃろ、適当にイメージして
もらう為にも自己紹介せんとな」
その人影は座ったままそう言って
言葉を続けた。
「ワシは12柱の一人で
時の神ケイシオンちゅうモンじゃ」
何か聞いた事あるぞ。
何だっけ。




