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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二百四十九話 試して人質交渉

ぱっと見は知能指数が高そうなおっさん二人だった。

清潔感が漂う身なりもしっかりしている。

ただ見た目の平和さと打って変わって

内心から漏れる感情は

犯人と人質のそれだった。


「左が悪魔で右は人間だな。」


俺はデビルアイで解析した結果を呟く


「右はクリシアの首相ですよ」


ハンスがそう教えてくれた。


接近してくる者が二名なので

こちらも二名で出る事にした。

俺とハンスだ。

まぁ俺の影の中に3人目がいるので

ちょっとズルい。


まだ気絶中の仲間がいるので

ストレガとナリ君は警戒態勢で

キャリアを守ってもらっている。


向こうもこちらを確認している。

歩く速度を落とす事無く

俺達は近づき

10m程度まで来た所で俺は言った。


「そこで止まれ」


悪魔光線を相手の足元に照射し

強引に足を止めさせた。


「言うとおりにする攻撃はしないでくれ

我々は話合いに来た。」


首相の方は汗ダラダラだ。

一発の正体不明の光線で

それまで何とか保っていた固い表情が

一瞬で崩れ、何とも哀れな顔になった。

恐怖も漏れまくりだ。


「100人以上で襲い掛かって来て

敵わないから今度は話合いだぁ?」


今度は悪魔の顔スレスレに

悪魔光線を照射した。

一切反応出来ていない

悪魔の方も恐怖の感情が漏れる。


まぁ出だしの脅しはこんなモンでいいか。


「襲い掛かって来たのはそちらだ。

我々のボスがお会いになる。そう言ったのに

問答無用で虐殺した。」


表面上は冷静を取りつくろう悪魔は

冷静な声でそう言った。


「悪魔100体で来て話し合いもクソもあるか

身を守っただけだ。」


ヤクザが人を攫うのと変わらん。


「そうだ。こちらの出方が悪かった。

だから今度はこうして危険を冒して少人数で

来ているのだ。」


なんか一方的で恩着せがましい言い方だ。

まぁ昨日の100体の謝罪賠償とか

言い出さないようなのでそれは良しだ。


「そっちのおっさんは首相か

あんたは何者だ。」


こちらが知っている事に

首相は安堵した様子だ。

地位のお陰で無下に殺されないと思っているのだ。


「私はフリューラ・ファミリーで

幹部をしている。名はベルタと言う。」


「俺は三半機関のイー、こっちはハン。

依頼主は明かせないが目的は

クリシアマイフィアの壊滅だ。

ちなみに人質の保護は言われていないので

どんなお偉い政治家が来ても関係無い」


安堵もつかの間

再び首相から恐怖が漏れる。

あまり美味しくないな。

俺は続けた。


「面倒なら更地にしても良い許可が下りている」


流石にこの言葉は大袈裟だと思われた。

俺を馬鹿にしたような感情が漏れたので

すかさず追加の脅しを掛けた。


誰も居ないのは周知だ。

冒険者ゼータ状態で打てる

最大出力の悪魔光線で

ハンスの立っていない方向の横側を

薙ぎ払う。


鼓膜を破く勢いで轟音が響き渡った。

近場の建物は全てプラズマ化し

地震の様に足元は振動した。


「こんな風にな」


聞こえたかな。

大気はまだゴワワアンとか言ってるし

弾け飛び落下に移った建造物の残骸が

地面にぶち当たる音と振動が凄い。

イオン化した空気の変な匂いが鼻についた。


「分かったか、じゃあ死ね」


俺は一歩前へ歩み出た。


首相は泡を吹いて尻もちをつき

完全にパニック状態だ。

恐怖を通り越し脳内の電気信号は

激しく不規則に暴れまわっていた。


悪魔の方も膝をつき

当初の偉そうな態度は完全に消え去った。


「どうか、どうか我らのボスと

お会いになって下さい。そして

我らの王として君臨して下さい!」


こっちの方は恐怖というより

快感で溢れていた。


「スマン、ハン。首相の方をケア出来るか」


「えっ?あ、はい」


悪魔光線大規模破壊に

呆気に取られていた様だ。

俺のこう言うのは馴れているだろうに

どうした。


すかさずハンスが首相に魔法で沈静を施す。

すぐに目が正気に戻り、口元の泡を慌てて拭い出した。

一瞬で瓦礫と化したゴーストタウンを

呆然と眺めていた。


悪魔の方は薄気味悪い笑顔のまま

不快な感情をまき散らしている。

好かれる事、人は基本これを嫌がらないモノだが

相手によるのだ。

人と悪魔の両方の俺がコイツを嫌悪した。


「ボスとやらに会おう、準備する。ちょっと待ってろ」


そう言って踵を返しハンスとガレージまで戻った。


「流石です。お兄様」

鎧の中の笑顔が目に浮かぶほどストレガは嬉しそうに言った。


「マスター。あれは全開ですか

それともまだ余力を残していますか」

喜びと恐怖の入り混じった複雑なナリ君。


「何が起きているんですか・・・。」

意識を取り戻したものの状況を把握しきれなく

呆然としているバイス。


リリアンは口を真一文字に閉じ固まっていた。


アリアは窓の隙間から

惨劇を見たまま硬直してしまっていた。


クフィールはまだ寝ているそうだ。

凄まじい轟音と振動だったろうに

大物だな。


「ここまでする必要はあったのでしょうか」


ガレージに戻ったタイミングで

ハンスが苦言を呈した


「良い手だったでござるよ」


俺の影の中からダークが出て来て解説を始めた。

なんと隠密に長けた部隊が裏手から

回り込もうとしている途中だったそうだ。

それに気が付きアドバイスをする前に

俺が悪魔光線で全て薙ぎ払った。


完全膝カックン耐性も俺を中心とした技だ。

隠密していても接近すれば分かるのだが

俺に近づいて来ない離れた者の

精度は距離が開けば開くほど落ちる様だ。


「ふっ気づいていたか」


カッコよく言う俺。

俺は知らなかったがな


「当然でござるよ」


極めて普通に返事するダーク。

こいつはどうやって感知しているんだろうか


「表の二人は油断を誘う罠か卑怯な」


怒るナリ君。

リリアンも不快感を隠さなかった。


「これを逆手に取って話し合いを有利に

出来ませんかね。」


バイスがそう言うがハンスが遮った。


「とぼけられて終わりでしょうね。」


「えーっとだな・・。」


俺は今の交渉を説明した。


「昨日の結果から真っ向勝負より

なんとしても話し合いに

その場に引きずり出す事と

有利に進めるために

人質などの弱みを握る方向に転換した

拉致が失敗しても表の首相が保険

こんなトコロでしょうか。」


ストレガが分析し

一同頷く。


「そうなると、やっぱり

俺とダークだけで行く。

残りは馬車でヒタイングの教会まで

戻っていてくれ。

ナリ君、ストレガ、ハンス

みんなを守ってくれ。」


俺は頭を下げて頼んだ。

皆、黙って考え込んでしまった。

ナリ君がその沈黙を破る。


「御意。マスターご武運を」


「若、よろしいのですか

私はともかく若だけでも」


そう言いかけたリリアンの頭に

手を置き優しく撫でるナリ君。


「傍にいない方が相手の為になる事もある。

これもきっとそうなのだろう。

バイスにもいつか我が言った言葉

己が義を果たせ。

・・・我も我の義を果たそう」


嬉しそうに

そしてどこか申し訳なさそうに

リリアンは頷いた。


「ダークさん!!」


「ぬっ、何でござるか」


まさかストレガが自分に話しかけて来ると

ダークは思っていなかったのだろう

少し慌てて返事をした。


「お兄様を必ずこちらの世界に

戻してください。お願いします!!」


鎧の腹部からガコンって音がした。

中で頭を下げてぶつけた様だ。


「臣下の意地、一命に変えても

お見せするでござる。」


何かカッコつけて無いかダーク

まぁいいけど


「ハンス、マフィア一掃後の

クリシアの統治ってプランあるのか」


俺はハンスにそう聞いた。

いつもの笑顔でハンスは答えた。


「いくつものケースに合わせて

パウルが所持しているハズですよ。」


「じゃあ安心だ」


確認したい事だけ確認したら

ぶっ潰してやる。


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