第二十五話 稽古1
夕飯を御馳走になり
俺達三人は使用していない部屋を
割り当てられた。
質素ではあるが
まともな寝具がある。
「では会議である」
今日は情報量は大漁だ。
今後の方針を左右する。
「まず名前だが・・・。」
俺がそう切り出すと
アルコがすかさず食いついて来た。
「変える事は無いと思います。」
「賛成ー。本名なんだし」
ミカリンもアルコの意見に乗っかる。
「うむ。ではそのままで行こう」
ただ、からかわれたりしそうだな。
「因みに変更は出来なかった」
俺はメニュー画面を開いて
自分の名前の欄をタップするが
何も起きない。
ミカリンもアルコも同様だ。
決定したが最後の項目だ。
「ミカリンをミカリンポに
しようとしたが、それもダメだった」
「止めてよ」
マジで怒るミカリン。
そうだ、名付で思い出した。
「そういえばさぁブリってさ」
「うん」
ミカ=ミカリン
ラハ=ラハッチ
ウル=ウルポン
と、同僚を以上のあだ名で呼んでいた。
最近、名付の機会が増えたせいか
このブリのセンスは
個人的に中々のモノを感じる。
被らせず
一見親しみが篭っているが
個人の特徴をイイ感じで馬鹿にしてる感が
たまらん。
付けた時は気にしなかったが
ここまで一緒にいて
ミカリンはもはやミカリン以外の
何者でもない
もうミカと呼べない。
そんな名付の巨匠は
「あいつ自分の事は何て呼ぶの?」
「ブリッペ」
キタネェ響きだ。
思わず笑ってしまった。
もし会う機会があれば
是非ともその名前で呼ぼう。
「さて、次の議題だが」
仕切り直しだ。
「次の目的地はエルフの里」
頷くミカリン。
アルコは手を上げた。
「はい。アルコくん」
「はい。そこでの活動は
何をするのですか」
大きく頷く俺。
「俺の知人に会うだけだ。
他には」
「・・・ありません」
すまんな特に二人にする事は無いな。
「で、その後はバロードを
経由してベレンに入る」
ここで目がキラキラするアルコ。
憧れの聖地だね。
良かったね。
絵本と違うからって
ガッカリするなよ。
「そしてベレンでは
その学園とやらに入学し
冒険者の資格所得を目指します。」
ミカリンがジト目だが
ふふ、お前のそう言う視線は
なんでもないと言っているのだ。
「なんで冒険者になりたいのさ」
ミカリンがジト目のまま
質問してきた。
「身分が保証される。なにより
旅がしやすい。冒険者でなければ
行けないもある、情報も手に入りやすい
実力さえあれば稼ぎもイイ
将来何をするにも有利だ」
ここでアルコが再び挙手した。
「はい。アルコくん」
「私も入学できるのでしょうか」
「分からん。けど多分大丈夫だろう
ドワーフを始め多種多様な人種が
いるのが冒険者だからな。
良くも悪くも実力次第だ。」
とは言ったものの
これは前回、古い制度かもしれない。
今はどうなんだろうか
まぁ明日、ココの協会で聞いて見るか。
話はそこまでになり
その後は濡れタオルで体を清め
就寝となった。
風呂はこの村には無かったのだ。
二人とも湖の丸太小屋の風呂に
入りたがっていた。
よほど風呂が気に入ったようだ。
ベレンに着くまで風呂が無い事を
伝えると二人ともガックリしていた。
翌朝、食事の後はクロードの提案で
稽古になった。
クロードが直々に見てくれると言うのだ。
俺はアイテムストレージから
レプリバーンを取り出すと
ミカリンに渡す。
俺は祈年祭を装備した。
「三人同時でいいぜよ」
相変わらずの自信家だ。
表示は味方のみなので
クロードのレベルが分からない
是非、知りたいトコロだ。
「ぶちのめして配下にしてやるか」
「いいねぇ僕の手下にしていい」
俺もミカリンも始めはこんな調子だったが
現実は残酷だった。
三人掛かりでもクロードに一太刀も入らなかった。
特に俺のもどかしさは半端が無い
かつて知ったる相手の剣だが
前回と違い。
体が追いついて来ない。
見えない
避けられない
当てられない
全てにおいて肉体の遅さ鈍さに
イライラしっぱなしだ。
あっという間に体力が底を尽き
俺達は這いつくばってしまった。
「兄に勝てる人です」
アルコの感想から最低でも
レベル40以上って事か
20付近が3人でも相手にならないのも
致し方なしだ。
くそぅクロードのクセに
悔しいーーー
「んーお前ら師匠は誰ぜよ
そろぞれ違う様だが・・・。」
俺は仰向けに寝転がったまま
荒い呼吸のまま考えた。
何て言えばいいのか分からない。
昔の魔王の剣術をコピーしましたとは
言えないしなぁ。
ミカリンも返答に困っている。
「私は兄の直伝ですが・・・私に
聞いているのでは無いですよね」
一応答えるが
剣士が剣士に聞いているのだと
アルコは理解している様子だ。
返事が無い事をどう勘違いしたのか
クロードは言った。
「まぁ無理に言わなくてもいいぜよ
ただ、こりゃあ参ったな」
えー
そんなにダメか
「制度の不備っつーか
デメリットと言うべきか」
後頭部をポリポリと掻きながら
クロードは続けた。
「お前らより弱っちーのが
新卒で冒険者になってるぜよ。
即戦力なのに学園に入らないと
冒険者になれないっつー
この制度が裏目に出てるぜよ」
こんなに一方的にボコられて
そう言われても
なんか馬鹿にされている様な気がするが
クロードはこれでも最上級のG級だ。
下はいくらでもあるだろう。
信じても良さそうだ。
「剣術だけを習うワケでは無いでしょう」
息も整って来た俺はそう言った。
「まぁそうだな。ん?
坊主は魔法使いじゃなかったっけか」
うーん
脳筋二人が前に行くせいで
結果的にそーなっただけなんだが
何て言おうか
「遠慮するな魔法で来いよ」
「魔法は剣と違って寸止め出来ません」
とは言ったものの
これだけレベル差があれば
クロードに効くワケないか
剣士相手の魔法の立ち回り
これは俺にとって良い経験になるだ。
ここは乗るか
「安心しろって、まず当たらないぜよ」
笑うクロード
まぁその通りだな。
俺はメニューを開き
魔法使いでセット登録しておいた
装備にチェンジする。
今の手持ちで一番魔法に特化した装備だ。
ちなみに防御は紙レベルだ。
俺の出で立ちは
一瞬で魔法使いになった。
クロードは今回一番のビックリ顔だ。
「そ・・・その着替えも魔法なのか」
うーん、次からは
何か掛け声とかポーズとか
考えておこう。




