第二百四十四話 ゴーストタウンのデビル狩り
取り合えず狙られたのは
レイベルニ・ファミリーの方だった。
「無事、街を出ました。」
夜明け前に屋敷から出立した彼等に
どこから見ていたのか下等悪魔の軍団が
襲い掛かろうとしたのだが
監視をしていたストレガが全て始末し
無事、見送ったそうだ。
「つきましてはお兄様、弾丸の補充を
お願いしたいのですが・・・。」
ストレガの体内に内蔵出来る弾丸は
決して多く無い
折角の鎧内部のデッドスペースだ。
砲身だけでなく薬莢に火薬を搭載した弾丸
まぁ要するに元の世界の一般的な弾丸だ。
これを砲身に合わせて作成
搭載しておいた。
体内のはいざという時用で
鎧を被っている限り
出来るだけこっちから消費しろと
言って置いたのだが
結構な搭載数だったのに・・・。
何対相手したのか知らないが
左の止め用近距離散弾
外してないなら13体屠っている計算だ。
ちなみに右の小手は
遠距離用の徹甲弾にしてある。
これで翼や手足、頭などを破壊し
攻撃力、移動力などを奪った後
接近、散弾で魔核のある胸部を吹き飛ばす戦法だ。
「お、おう。ご苦労だったな」
ストレガの笑顔の報告を
寝ぼけ眼で受け、胸部装甲が開き
主の居なくなった鎧に
弾丸の補給をしようとして
火薬臭さに驚く
小手も砲身に接している箇所は
青くイイ感じに焼けていた。
俺は補給ついでに排気にも
気を配った構造に変更しておいた。
「な、なんか所長変な匂いっすよ?」
キャリアの中からクフィールの
大声が聞こえた。
硝煙臭さは、まだこの世界では
馴染みが薄いだろう。
まさに、むせる。
朝食はリリアンとアリアが作ってくれた。
「無理をしていないか私がちゃんと見ていました」
そうリリアンから念を押されてしまった。
うーん、俺はあまりしゃしゃり出ない方が良さそうだ。
ストレガが臭いと言う事で
キャリアの外でキャンプセットを広げ
そこで朝食を頂く事になった。
ストレガの報告にアリアは深々と頭を下げ
お礼を言った。
「当ては有るのか」
逃げるにしても俺はそこが気になっていた。
俺の問いにアリアは直ぐに答えた。
リカルドの故郷、山沿いの辺境の村なら
マフィアの手も及んでいないそうだ。
何でも
田舎過ぎて手を出すメリットが無いそうだ。
体勢を立て直すなら打って付けだろう。
そこを目指す手筈になっているとの事だ。
ひとまず安心だ。
「我々はこれからどうしますかマスター。
そのフリューラと交渉ですか。」
ナリ君がそう聞いて来た。
当初の予定では渡りを付けたマフィア
その更に上司とパイプを持つ予定だったからだろう。
バイスの表情に嫌悪が露骨に出た。
悪魔と取引など容認出来るはずがない。
ハンスは笑顔を崩さない。
この辺は大物なのか
何も考えていないのか
・・・どっちもだな。
「いや、交渉の通じる相手じゃないな
かと言って放置も出来ない。」
フリューラのTOPが上位の悪魔なら
勇者を探すのは当然、抹殺して保身の為だ。
俺の方は何だろう
「地上のアモン」を迎え入れるつもりなのだろうか
いずれにせよ、ここはダークの報告を待ちたい
今日はこのまま潜伏しよう。
そう言いかけた時に
広域版完全膝カックン耐性に大量の反応が出た。
「・・・これは手間が省けたかな。」
俺がそう呟くと
ハンスが席を立ち片づけを開始した。
「時間はどの位ありますか」
まだ遠い。
俺はゆっくりで大丈夫だと告げた。
「バイス君、敵が来ますよ。片づけてしまいましょう」
「え?あ、ははい」
片づけながら皆に俺の予想と対応を説明した。
敵は目視でこちらを監視している。
恐ろしく視力の良い奴が
この街で一番高い建物
あの黒い教会の上部から見ているのだ。
これがこの周辺をいくら探っても何も出てこない理由。
俺達の動きに対してのレスポンスの遅れの理由だ。
教会の最上部から口頭で伝令し
近くの悪魔が駆けつけるまでのタイムラグだ。
そう仮定すると敵はアモンキャリアを知らないという事になる。
「なので、キャリアには・・・。」
万が一の運転手としてクフィール。
非戦闘員のリリアン、病み上がりのアリア
用心棒&命綱でバイス。
以上4名がここで隠れて待機だ。
馬車には存在の思いっきりバレてる。
鎧ストレガ、ナリ君と俺。
そして現時点での最強聖属性攻撃を誇るハンスの
超攻撃型の4人で迎え撃つ作戦だ。
「ぶええ、あたしの魔力量じゃ
長距離は動かせないっすよー。」
クフィールは早くも根を上げた。
まぁそうだろうな。
「敵がこっち向かった時点で
俺が飛んで来て替わる。それまで持たせればいい」
「絶対っすよー。絶対すよー。」
いつぞやのやる気はどこへやらクフィールは
昨日、馬車の中から覗き見た
悪魔との戦闘ですっかり戦意喪失していた。
責めはすまい
悪魔を見た人間としては普通の反応だろう。
アリアも沈痛な表情だ。
私も戦います。
そう言いたいが役に立たず殺されるのが
身に染みて分かっているのだろう。
俺はアリアに任せろと言った後
役割を与えた。
「この街の地理に詳しいのは
お前だけだ、万が一の脱出の際には
道案内頼むぞ。」
「は・・・はい、任せて下さい。」
役が無い。
これは辛いモノだ。
何でもイイ
役割と言うモノが必要だ。
これがあるだけで目の輝きは変わる。
バイスは既にケースからネルエッダを
出して背に刺していた。
「リリアン。行ってくる」
「ご武運を」
魔族チームは放置でよさそうだ。
ハンスが御者席に座り俺は隣に
攻撃部隊の出発だ。
「どこへ向かえば良いですか。」
そう聞いて来るハンスに俺は指先で
方向を指示した。
「教会の方ですね。」
要するに中心部だ。
大挙して押しかけてきている。
敵の軍団は直ぐにかち合った。
丁度良くガレージから離れ
直ぐ戻れる距離だ。
「作戦は如何致しますかマスター」
くぐもったナリ君の声
見れば頭部メットを展開したフルアーマーだ。
普段着ターバンを見慣れて来た頃だったので
ちょっと新鮮だ。
自分でデザインしたくせに
その禍々しさに引く
レベルは79と表示されていた。
1型や悪魔でレベルアップしていたのだ。
「全滅だよね。兄さん」
演技入ったストレガ。
アルと呼ぶべきか
がナリ君の横に並んで
同じくくぐもった声でそう言った。
振り返ると無表情の鎧戦士二人
まぁ仮面だから表情は見えない。
なんかスゴイ絵だな。
「悪魔は良いですが人は殺めたくありません」
ハンス君は一人、反対意見だ。
まぁそっちが普通だよね。
俺はデビルアイで軍団を走査して言った。
「人居ない。全員悪魔だ。」
見事なまでに下等悪魔勢ぞろいだ。
前回の降臨でもこんなに揃った事ないぞ。
100名を超える悪魔軍団だ。
「では無差別に攻撃しますね。」
笑顔でそう言う司教。
なんか・・・いいのかそれで。
向こうも俺達を確認した様子だ。
道を塞ぐように展開して
俺達を待っていた。
適当な間合いを空けて
俺達は馬車から下りた。
借り物だし馬も死なせたくない。
待ち受ける軍団の姿が視認出来た。
昨日の連中と違って身なりがしっかりしていた。
警察に当たる警護部隊の制服や
政治家っぽい恰好のやつ
その他、ありとあらゆる制服のオンパレードだ。
それも下っ端じゃない服装も混じっている。
この事がクリシアが完全に悪魔の支配下に
ある事を確認させた。
真ん中で偉そうにふんぞり返る
宗教家っぽいやつが声を張り上げた。
「お前らがザド達をやった連中だな。」
誰だ。
昨日の3匹の内の誰かか
それともストレガが
朝市で売りつくし処分セールした中の誰かか
まぁどうでもいい。
「喜べ、ボスがお会いになるそうだ。」
俺は右手を挙手し停止した。
皆もそれに習う。
俺は悪魔軍団を無視して皆に言った。
「えーキルスコアの一番高かった人には
俺から賞品が出ます。」
「キルスコア・・・とは何ですかマスター」
緊張感の欠片の無いナリ君が
気合の抜けた声でそう聞いて来た。
返事はストレガがしてくれた。
「敵を倒した数だよ。要するに
一番多く倒した人が勝ちって事」
一般市民居ないから
演技しなくてイイんだけど
どうも鎧を着こむ=アルに
ストレガ内ではそうスイッチが入るっぽい。
「俺がココで数える&後方に抜ける奴始末係りを
やるので全員突撃ね」
俺がそう言うと
ネルエッダを構えるハンス。
お
真剣だ。
「おい、拒む様なら殺してイイって許可もらってるんだぞ」
真ん中の偉そうな宗教家が
馬鹿にした様な口調で言った。
これも無視だ。
ここに必要な情報を持ってそうな
悪魔は居ない。
「はい戦闘準備」
俺の掛け声で皆
突撃体勢を取った。
「おいコラぁ!!」
いい加減ブチ切れた感じの宗教家
そいつ目掛けて
俺は悪魔光線を放ちながら言った。
「戦闘開始!!」
今の所一位俺。




