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ぞくデビ  作者: Tetra1031
243/524

第二百四十二話 追いかけて。

フリューラ・ファミリー


迫りくるバルバリスの恐怖

彼等が崇拝する神に対する最も強力なカウンターである悪魔

元々クリシアの土着信仰を巧みに悪魔崇拝にすり替え

多くの一般国民の支持を取り付け

黒い教会を設立し、ここ十数年で

一気にマフィアの最大勢力にまで上り詰めた。

古豪レイベルニ・ファミリーは

言って見ればヒタイングに進出という名目の

逃亡でもあった。

正体不明の手段で次々と各構成員は

フリューラ・ファミリーに吸収されていった。

中にはボスを殺害してファミリーを全て

差し出した者までいるそうだ。


「ホントに悪魔が運営してたとはね・・・。

で、その悪魔を歯牙にもかけないなんて

強いの知ってたよ。でも強すぎでしょ

サンハン機関・・・神様でもついてるの」


嫌味でも皮肉でも無く

マスターは素直に賞賛していた。


「昔いたよな。ハンス」


「今でも大事な仲間ですよ。会いたいですね」


「でもさアイツ基本、食っちゃ寝で何もしないんだよなー。」


「ア・・・イーさん別行動の時は

フル稼働なさってましたよ。

イーさんがいる時しかお休みになれなかった。

頼られていたんですよ、羨ましい

ああ、あの頃私に今の力があれば・・・。」


神なのだから当たり前だが

強力な聖属性攻撃が可能だった。

今この場に居てくれれば

究極に頼もしかっただろう。


今は四大天使が二名いるが

呼びに戻っている暇は無いな。


「まぁそう言うワケだ。巻き添えで

死にたく無ければ、適当にどっか逃げていろ」


俺のセリフにアリアが質問してきた。


「私達を見逃してくれるの?

裏切者なのに・・・。」


マスターの話からは裏切りの要素は無い。

鵜呑みして信じるのか

この世界、結果が全て

まぁマフィアの常識でそう考えての

裏切りという事なのだろう。


が、俺はマフィアじゃない。


「・・・別に裏切ってないだろ

むしろ俺の来訪は不幸を連れて来た。

恨んでもいいぞ。」


「アレ?信じちゃうの?」


マスターがからかう様に言って来たが

俺は真面目に答えた。


「真偽を正す必要は無い

むしろ手間暇が惜しい

どっちだろうがあまり影響は無いさ

障害になるマフィアは潰す

フリューラは決定。

あんた達は見送りだ。

今後の動向次第でまた会いに来るよ。」


ちょこっとだけオーラを出して釘を刺しておく

俺に続いてハンスが口を開いた

批判が飛んでくるかと思ったが

出たセリフは逆だった。


「治療の際、我々は

二度と傷付かないようにと

祈りを込めています。

無駄にしないで下さいね。」


コラ聖職者

巧みな脅しだぞ・・・。

いや

彼の場合は言葉通りに純粋にそう思っているだろうな。


俺は席を立った。


「世話になった・・・したのか

まぁどっちでもいいや。お元気で」


俺は笑顔で握手を求めた。


「信じてもらえるかどうか分からないけど

感謝しているヨ。勢力を回復出来た暁には

サンハン機関に服従を誓う。」


マスターはそう言って

握り返してきた。


「信じるねぇ・・・未だ

名前も教えてくれない相手をか?」


マスターは笑って答えた。


「どうせ知ってるんでしょうに

いや、礼の問題だネ。失礼した。

ミウラ・レイベルニだ。」


「俺の失礼も詫びて置こう。

イーは今回の作戦に置ける偽名だ。

・・・アリア、これから起こる

ドタバタが終わってから

俺の本名はミウラに明かしてやってくれ」


「・・・え?」


ポカーンとするアリアに向かって正対すると

俺は一瞬だけチンチクリンに戻って

直ぐまた冒険者ゼータになった。


「あっ!!」


両手で口を押さえ

目を見開き硬直するアリア。


俺はすれ違い様耳元で囁いた。


「ネックレス似合っているよ。

大事に身に着けている限り

世界のドコにいても俺はお前の所に

訪れる事が出来るだろう。」


そのまま通り過ぎると野郎どもに

「行くぞ」と声を掛けて部屋を出た。


「今日は安静に栄養のあるものを

食べて、明日には移動出来る位

回復するでしょう。ではさようなら」


後ろで律儀に医者的なアドバイスを

するハンス君の声が聞こえた。


表に出るとナリ君とストレガは

壊れた鎧を丁寧に分解して

並べていた。

丁度、終わった所っぽい

追加攻撃は無かった様だ。

クフィールとリリアンも馬車から

出て来ていて手伝っていた様だ。


俺は礼を言うと鎧パーツを

ひとまずストレージにしまい

今夜はこの付近で隠れて一泊すると

宣言した。


「そうして頂けると心強いですね。

あの方たち傷は治りましたが

今日は動けませんから」


そう

悪魔の追加攻撃があった場合は

蹴散らしておこう

「メタめた」は

アフターサービスもバッチリなのだ。


「ならばここに宿泊してしまえば良いのでは」


そう言うナリ君に俺は説明した


「次に狙うのがあいつらなのか

3匹始末した俺らなのか

同じ場所では判断が出来ない。

敵の動向、その傾向を探る為にも

すぐに駆け付けられる近くが望ましいんだ。」


「御意。流石マスター深いですね」


そう深ーい思慮があるのだよ。

決して

一度さよならを言った手前

やっぱり泊めて下さいって言うのが

恥ずかしくて出来ないワケじゃあないんだ。


俺達は馬車に戻り

御者席には練習の為にナリ君と俺が座った。

ナリ君の馬の扱いは一見すると素人っぽくない

熟練の御者の様に動きがスムーズだ。

というか

この男、何をするにもポーズだけはカッコいい。


少し走らせた所で

ナリ君は不自然に減速して言った。


「差し出がましいの承知の上

質問させて頂いてもよろしいでしょうかマスター。」


「ん?ナニ」


「同じ立場である我には振り切るには

正直心苦しいのです。振り切る理由を

教えてきた抱ければ幸いかと」


振り切る?

何言ってんだ。


俺は言葉の意味に気が付き

席から身を乗り出して後方を確認した。


懸命に後を追って走っている少女がいた。

アリアだ。


どうやって気が着いたんだナリ君は

完全膝カックン耐性、これからは

常時入れっぱなしにしようかな。

こう言う時恥ずかしい。


「いや、待っていたってのもあるんだ。

ナイス減速、停止してくれ」


俺は馬車の停止を待たずに

御者席から飛び降りた。


俺に聞こえない様に呟いたナリ君の声を

悪魔耳はしっかり拾っていた。


「妃探しは我の用事だったはずだが・・・フフ」


はぁ

何言っているんだ。


まぁ放置でいいや。

俺は小走りで馬車の後ろ辺りまで行くと

そこで待った。


アリアはもうすぐ到着する位近づいていたのだ。


俺の前まで辿り着いたアリアは

両手を膝について息を整えるのに

全力だ。

話は落ち着いてからするかと思って

黙っていたのだが

息も切れ切れながらアリアは訴えて来た。


「私を・・・連れて行って・・・ください!」


予定外の停車に馬車の中の面々も

不審がって表に出て来ていた。

女子軍団は口々に誰だと聞いて来た。


俺は渡りを付けたマフィアと

アリアの説明をかいつまんで話した。


「なぁにぃー魔導院に潜伏していたスパイですってぇ!

ダメですダメです。つか殺しましょうお兄様」


「そうっすね、今度もスパイじゃないっすか」


うわー魔導院チームから大不評です。

窘めようとする前にアリアが答えた。


「そうです。いつだって偽って来ました。

今度はそうじゃないなんて、そんなの

誰だって信じません。」


「スパイしたいのか」


俺は普通に聞いた。

アリアは首を横に振った。


「違うってさ」


笑顔で言う俺に頭痛をガマンするような仕草で

ストレガは言った。


「じゃ何だって言うんですか

信じませんけど言うだけ言ってみなさい。」


アリアの様子が変だ。

息はすっかり整ったが

顔は不自然に真っ赤だ。

体調でも悪いのか

魔導院脱出の時より

運動量は少ないハズだ。

やはり治療は成功しても

体力的なモノの回復には時間が足りていないのか


そんな俺の考えをよそに

アリアは一人一人手招きした。

選んだの女子だけ

ハンスもバイスも

しっしってされていた。

指さして笑ってやったが

俺もしっしってされてしまった。


笑いが取れたのは嬉しいが

納得がいかない。


俺達に

聞こえない様に少し離れた女子の塊。

何やら話している。


「救世主様、スーは賛成です」

「お兄様、私も賛成です」


この豹変振り

・・・・

何を話した。


「うーん、どうしたモンすかねー」


クフィールだけ微妙だ。

誘導するか

俺は一言言った。


「ちなみに、その娘ラテラの実姉な」


「賛成っすー。」


俺は好きだよ。

クフィールのその現金な所。


「じゃあ可決で」


ストレガがそう言いかけた所で

俺が遮る!

何で女子だけで決めんだよ。


「男子チームがまだだろうが

なぁみんな!!」


そう言って振り返る俺に

即、返事が返って来た。


「良いと思います」

「宜しくお願いします」

「その意味で停車を促したのですが」


ですよねー。

嫌がる男子なんていないですよね。


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