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ぞくデビ  作者: Tetra1031
237/524

第二百三十六話 模擬戦クフィール

「マスター。失礼ですが

これではクフィールの身を守る事にはならないかと」


ナリ君が苦言を呈して来た。


「如何に魔力の補助で怪力になろうとも

体術・武術で上回る相手なら

間合いに入るのは容易でしょう。」


その通りだ。

俺はストレージから練習用の木刀「祈年祭」

久しぶりだな

を取り出してナリ君に渡して言った。


「よし、ちょっと相手して見てくれ」


受け取ったナリ君は

あまりいい顔をしない。

武人気質の高い彼には

稽古といえども素人相手に

剣撃を叩き込むのは心苦しいのだろう。


「その辺も考えてあるんだ。

それもテストしたい。」


俺の言葉に渋々納得するナリ君。


「ハァそう言う事なら。」


「ぶぇえ無理!無理っすよ」


今度はクフィールが慌てた。


「死にはしない」


俺はそう言って強行させた。


適当に間合いを取って

正対したナリ君は魔族式に一礼した。


「えーっエーッッ」


礼も忘れ、既に防御体勢になるクフィール。

俺は冷酷に開始を告げた。


「始め!」


「くっそーやってやる、やってやるっす」


クフィールは覚悟を決めたのか

素人感バリバリながらも

ファイティングポーズを取った。

構えるナリ君。

俺はわざと聞こえる様に呟いた。


「・・・死ね。」


全員からクレームから入った。

みんな俺を叩いて来るが

おいクフィール

その装備で俺を叩くんじゃあない。

死ぬだろ俺が


仕切り直しだ。

俺のギャグで落ち着きを取り戻したのか

今度はクフィールも礼を返す。


「参る」

「来やがれクソ魔族王!!ミンチにしてやるっす」


・・・今度、礼儀作法も指導しないとな。


不規則なステップで前進

一気に間合いを詰めるナリ君。

うん

全然本気じゃないや


戸惑いながらも自分の間合いに入った瞬間

クフィールはストレートをかまそうとした。


「死ねうぉりゃあ!」


それを見える様にゆっくりギリギリで回避し

体勢を低くして間合いの内側に潜り込むナリ君

あっという間だ。


「御免」


身を捻りながらの回避前進は

そのままナリ君の剣撃に連動した動作になった。

がら空きの脇腹目掛け祈年祭の一振りが

クフィールを襲う。


カツン


軽い音だ。

寸止め、せいぜいここに当たりましたよ的な

おさわり程度で止めるつもりだったのだろう

聞こえた音はあまりに軽い音だった。

それでも音がするほどの勢いが残っていたのは

ナリ君の一撃はクフィールに届かず

その手前で止められてしまった。

勢いを殺しきる前だったせいだ。


「何ぃ?!」


素人目には全て連続した動作に見えたのではないだろうか

ほとんど停止する事無く

回転の勢いそのままナリ君は

クフィールの間合いの外まで離脱した。


ナリ君を含め

目の前で起きた出来事に皆、驚きの声を上げた。

俺は一人ガッツポーズだ。

まぁそういう風に作ったんだが

思惑通り作動してくれて嬉しい。


「な何が起きたっすか?」


当の本人だけ分かっていなかった。

まぁ見えにくいわな。


クフィールの四肢を補助している4本のアーム

何も補助していない五本目のアームが

背中側からナリ君の一撃を防いでいたのだ。


「クフィールはともかく

自動で動くその五本目はちょっと手ごわいぞ」


俺はニヤニヤしながら

ナリ君にそうアドバイスした。


「成程、では」


ナリ君はそう言うと

するどくダッシュした。

ちょっと本気だ。


「ぶぇ?!」


先ほどとは違い戦速だ。

位置もいやらしい

避けるか迎え撃つか判断に迷う微妙な角度から

素早く間合いに侵入する。

クフィールは硬直してしまい

ほぼ無防備のままあっさり間合いを取られた。


先ほどと同じ位置に剣を振るう

今度は速い剣速だ。

五本目アームは先程と同じように

これも防いだ。


さっきと異なるのはここからだ。

五本目の受けを確認せず

ナリ君は剣撃を放つと同時にクフィールに

背を向けながら回転し

一瞬で反対側回り込み

反対側の脇腹目掛け

二の太刀を打ち込む


「御免」


これなら

一の太刀を受けた五本目のアーム

その防御が間に合わない攻撃

ナリ君は勝利を確信し

そう言った。

優しい彼は当たる瞬間だけは勢いを殺す。

これ攻撃より力必要なのに偉いなぁ


カツン


「くっそぉおおう!!」


ナリ君の狙い通り五本目の防御は間に合わなかったが

六本目のアームが代わりに剣を受けた。


ナリ君は憤慨しながらも

華麗な動作で再び間合いの外へ離脱した。


「何本あるんですか?!」


怒ってる。

俺は爆笑しながら答えた。


「全部で8本だ。」


俺は先程から狼狽えるばかり

蜂の羽音が聞こえ身近にいるが

どこだか分からずキョロキョロしているような

状態になってしまっているクフィールに

アドバイスを飛ばした。


「そういう訳でクフィール。防御は

他の4本に任せて、お前は攻撃にのみ専念しろ

一発でいい、叩き込めれば勝てるぞ。」


青ざめるナリ君。


「そんなに運良くいくっすかねー」


ナリ君の体術を体感したクフィール

素人の攻撃では当たる気がしないのだろう。

そうボヤいたが俺は追加して言った。


「相手の運が悪い場合もある」


0の奴だっているんだ。


「分かったすーうおおおおお」


そう言って手足を滅茶苦茶に振り回すクフィール。

トランザム小学生か。


「あっ馬鹿」


ストレガが声を上げた。

拡張手足の重心移動を会得していない状態だったので

振り回した手足でバランスを崩してしまったのだ。


「あわわわわ!!」


仰向けに転ぶ

その恐怖に顔が引きつるクフィール。


「大丈夫だ。」


俺がそう声を掛けると同時に

フリーアーム4本が地面を捉え転倒を阻止した。


「起きようとすれば、そのまま補助してくれるし

寝ようとすれば軟着陸させてくれるぞ。」


この辺の設定は悩ましかった。

回避の為にわざと派手にエビぞるつもりが

転倒防止機能が止めてしまう。

体術に優れた者の姿勢変更と

体勢を崩した転倒途中の判断が出来ないのだ。


仮にこの設定のままチャッキー君に

装備させると絶対怒る。

「邪魔しかしねぇっすよコレ!!」

脳内でそのセリフが再生された。


「おおおお楽っスー」


起きようとしたのだろう

フリーアームがクフィールを起こした。


そこからの稽古は未知領域に入った。

滅茶苦茶に振り回すクフィールの攻撃を

華麗に躱しながら

縦横無尽、時には頭上まで跳躍したナリ君の

攻撃をことごとくフリーアームがブロック

互いに決定打が入らないまま

まっさきにクフィールの息が切れた。


「はぁはぁ水飲みたいっす」


根を上げるクフィール。

今こそ勝機と見たナリ君が

猛攻を仕掛けるが

動く気の無くなった本人を無視して

二本のフリーアームが移動を担当

残りの二本が防御を担当

クフィールはなすがままに

人形の様に揺らされている状態だ。


「お兄様、クフィールの居る意味は」


ストレガの疑問は誰しもが思っただろう。

だが、思い出して欲しい。


「いや、クフィールを守る装備のテストだから」


本人捨てたらテストにならない。

そして次に根を上げたのが装備だった。


ジリリリリリリ


ベルトからベルの音が響いた。


「クリスタルの魔力が切れるぞ。

停止しない限り、ここからはクフィールの

魔力を消費するからなマインドダウンに注意しろ」


稼働時間。

何もせずぼーっと突っ立ているだけでも

この装備は魔力の消費が軽減されない。

何もしないという姿勢制御を行っているのだ。

ざっと見たトコロ全開戦闘では3~5分が

稼働限界だ。


「うえええギブアアップっす」


自己魔力消費に切り替わった瞬間

クフィールはそう宣言した。

メニューを開いてMPの消費を見ていた

俺が止める前に自分から言うあたりは

クフィールらしい

これがリリアンだとマインドダウンまで

頑張ってしまうだろう。


消費量もスゴイ

人外の怪力となるとこれも致し方なしだ。

義手の様に姿勢制御を含まず

力も人並みなら消費も少ないのだろうが

パワードスーツとなると極端に魔力を消費した。


「はぁ・・・はぁ・・・・。」


地面に突き刺した祈年祭に

両手で体重を預ける様にナリ君は

肩で息をしていた。

悔しそうだ。


「ご苦労。素晴らしいデータが取れたよ」


俺が声を掛けると

ナリ君は祈年祭を返却してきた。

おぅおぅ

削れてる削れてる。

いっぱい打ち込んだもんね。


「雷を使わないでくれてありがとうな。

それをやられたら防ぎようが無い

まぁテストにもならなくなるんだが」


祈年祭をしまいながら

俺がそう言うと

ナリ君は見た事も無い表情になっていた。


その手があったか


そう思っている様子だった。


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