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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二百三十五話 クリシア潜入

国境はいつの間にか越えていた。


バルバリスとクリシアは別の国だというのに

バルバリス国内の移動の方が

検閲が厳しいのはどういう事だ。


街道沿いに進めば門はあるにはあるのだが

馬車を利用せず徒歩で道なき道を進めば

いくらでも行き来が可能だ。


「少し休むか。」


振り返って俺はそう言った。

皆、まだイケると言っていたが

リリアンから微妙に苦痛が漏れているの感じたので

俺命令でここで小休止だ。


これより微弱な苦痛でクフィール辺りは

死ぬとか言い出すというのに

リリアンの表情は至って普通だ。

顔に出したりしない我慢強い子だ。


そのクフィールもレベル上昇のお陰で

旅を始めた頃よりかなりたくましくなって

最近はグズる事も少なくなった。


ストレージから休憩セット出すと

ストレガはお茶の準備に入った。


「バイス達の方はそろそろですかね。」


出されたお茶で乾いた喉を潤したナリ君は

そう言って来た。


「そうだなぁ」


ホテルを出て教会手配の馬車で

オコルデとブットバスは城へ

その後、ハンスとバイスは教会に行って

連絡を済ませた後

クリシアの教会に用があるという名目で

クリシアに入る手筈になった。


その馬車に潜入する案もあったのだが

この人数だ。

流石に不自然だ。


「ハンスさん・・・私は」


何か言いづらそうにストレガはそう申し出て

ハンスも気づいた様な感じで


「あ、そうですよね。」


と、その案は却下になった。


国境に壁も無く

特に警備もしていないので

普通に密入国で行こうとなった。


普通に密入国ってなんだ。


その時のお互いの行動スケジュールの

打合せでは今頃、教会の馬車は

街道の検閲所辺りだろう。


俺、ストレガ、ナリ君、リリアン、クフィールの

五名は徒歩で国境越えだ。


俺は昨日のやり取りを思い出しながら

ナリ君の予想を肯定し

思い出しついでにストレガに聞いた。


「なぁ何でストレガは教会の馬車に同乗出来ないんだ。」


誰か聞けよ。

ストレガ以外みんな思っていた様で

俺の質問に皆、関心無さげに注目していた。

バレバレだよ君たち。


「えっ?ええーっとう」


ストレガらしからぬ反応だ。

ストレガは少し困った顔で考えてから

語り出した。


「はぁーどうせ町に入ればバレますでしょうし

言っておいた方が何かと宜しいでしょう。」


そう前置きして話した内容は

恐ろしい内容だった。


俺が復活する以前から

俺の偽者は定期的に出現していて

その度にストレガは淡い期待を

常に裏切られ続けながらも偽者と

対峙しては退治していった。


当然の事ながら勇者と同様に

俺の偽者もクリシアマフィアが

関わっていたそうで

その内、ストレガの行動範囲は

クリシア国内に及んだ。

教会はあるものの

秘術・魔法など絵本の世界だったクリシア

まぁ俺が広めなければバルバリスもそうだったんだが

とにかく魔法が絵空事のクリシアに

突如、ほうきにまたがって空を駆け

屈強の戦士達をいとも簡単に雷で蹴散らす女が現れ


クリシアは大パニックに陥った。


マフィアはモチロン

軍まで出動する騒ぎに発展するが

一生懸命なストレガは

丁寧に全て返り討ちにしてしまい

収集不能な無政府状態が何日も続く事になったそうだ。


以来

クリシア語で魔女=ストレガと言われる始末だ。

固有名詞だったのに語源になりやがった。


「私・・・クリシアではお尋ねの身で・・・。

見つかると恐らく大騒ぎに・・・えへっ」


おお

ストレガちゃんの貴重なテヘペロだ。


しかし感動する俺の隣では

ポカーンと開いた口の幅で

お茶がダラダラと漏れるナリ君。


「何でついて来たんすか・・・所長。」


ストレガの言う事には何でも

絶対服従だったあのクフィールが

何考えてんだコイツとでも言いたげな表情で

そう言った。


俺はクリシアがバルバリスに

裏から工作を仕掛けている理由が

何となく納得いってしまった。


「マスター。このまま人里に出るのは

大変危険だと進言いたします。」

「若に同意です・・・ここまで来てしまってからで

心苦しいのですが何とか出来ませんか」

「スンマセン師匠、あたしがもっとしっかりしていれば」


「えっ?えっ?えっ?」


三人の判を押したかのような対応に

キョロキョロするストレガ。

何がいけないのか分かっていない様子だ。


「ストレガ。

お前は真面目で一生懸命で賢い良い子だ。

だが、少々常識外れな面がある。」


あれ?

俺の言葉に同意するハズの三人が

何か変な目で俺を見ている気がする。

くっ負けるもんか続ける俺。


「ともかく外見をなんとかせにゃ

今後、身動きが取れんな。」


俺はお茶を飲みながら

少し考え

直ぐに思いついた。

丁度、考えていた事の良いテストができそうだ。


「クフィ。朝、お前やった新装備

ちょっと起動してみろ」


「え、あ、はい。」


自分に振られると思っていなかったのか

クフィは少しビックリして

席を立ち上がり、ローブを脱いだ。


「マスター。新装備とは」


どんなに危険でも戦線に参加してもらい

ストレガを自由にするために

クフィールには自衛してもらう

その為の装備を夜なべして急遽作り

朝、装着させていた。

適当な所でテストするつもりだったので

これも丁度良い。


俺はそうナリ君と他の二人にも

聞こえる様に説明した。


「師匠・・・どうすんでしたっけ?」


起動方法を覚えていないか


「ベルトの上のボタンがロック解除

それを押しながら正面のクリスタルを押し込む」


ぶつかってスイッチンにならない様な

親切設計だ。


「ああハイハイっす・・・・いくっすよー

スイッチ・オン・・・びひゃああ」


掛け声と同時に悲鳴が上がる。

背中の板は折りたたまれたアームだ。

それが起動と同時に四枚の細長い板が

瞬時に両手、両足の延長戦上に伸びる。


パっと見

肘と膝からが異様に長い状態になるクフィール。

膝から下に伸びる板は地面まで伸び

クフィールを上げ底状態にして

本当の足は宙に浮いた格好だ。


突然、背が高くなった事でビックリしたのだろう。


「マリオの義手、その研究の延長でな」


自在に動く、延長した手足だ。

動力はベルトにはめ込んだキング・クリスタル

板は魔法の使用も考慮して金属ではない

カーボン製だ。

板の先は関節も同じ本数の指があり

本人と自動で連動している。


俺は更に細かい説明を皆にした。

元の世界ならパワードスーツの一言で済むのだが

その概念が無いこちらでは

説明が面倒だった。


「まぁ使えば直ぐ理解出来る。

クフィ、試しにそこの岩持ち上げてみろ」


「は、はいっす」


おっかなびっくりの挙動で

ヨタヨタ動く、慣れないうちは

延長した手足の距離の差や

触感などのフィードバックの無さで

挙動はどうしても探りながらの

不自然さがでてしまう。


「何と?!」


大きな岩をあっさりと持ち上げるクフィール。

皆、驚きの声を上げた。


うん、やがては巨大ロボもつくれそうだ。


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