第二百三十三話 実は首脳会談
人目に付くのは好ましくないとの事で
スィートに集合になった。
その豪華な内装にオコルデ、ブットバス以外は
しばし目を奪われた。
「ヴィータ様と宿泊したベレンのホテルを
思い出しますねぇ。」
感慨深げにハンスが俺にそう言って来たが
「俺は泊まれて無ぇ!」
「そうでした。はっはっはっ」
ババァル処刑騒ぎで俺だけ別行動になったのだ。
「師匠・・・一泊いくらなんすか」
クフィールが恐る恐る尋ねて来た。
答えようとしたのだが
「ああ、やっぱりイイっす」
と断られた。
この辺のこいつの庶民感覚は好きだ。
迎えに出て来たブットバスに
バイスは事情を説明すると
ブットバスはいつもの気高いオーラは
どこへやら、まるで無垢な少女の様になって言った。
「え?では、あの時の司祭さま?!」
その反応を見たハンス君は
一歩前へ出て挨拶をした。
「お久しぶりですね、ブットバス。お美しく
かつ立派になられた。」
口に両手を当て
目には見る見る涙を浮かべた
ブットバスは慌てて踵を返した
「しょ少々お待ちください!
陛下ーっオコルデー!!」
大感激だ。
何で直した俺より
失敗したハンスの方が扱いが上なの
面白くない。
さっきからずーっとハンスのターンだ。
ブットバスと一緒に迎えに出て来たリリアンは
そんなやり取りに構わず
ナリ君の元に駆け寄り
何やら話をしていた。
今日のオコルデ報告だろう。
俺達は直ぐにリビングに案内された。
ストレガがクフィールを連れ
ブットバスにもてなしの準備を名乗り出た。
積もる話があるのではと
気を利かせたのだ。
「か忝い。頼めるか」
やっぱりハンスと話がしたい様だ
ブットバスにしては珍しく
お言葉に甘えていた。
「流石っすねー」
「いえ、クフィが気が利かないだけです」
そのやり取りを見たリリアンは
ナリ君を振り返ると
何も言わずただ頷くナリ君。
「私もお手伝いいたします。」
そうして残りは席に着いた。
「すみません・・・良く覚えていなくて」
なんか恥ずかしそうにオコルデが謝った。
笑顔で答えるハンス。
「凄く幼かったからですからね。
それにしてもお美しく成長された。」
小刻みに手を振って答えるオコルデ。
「わ私もこの姿は馴れていないのです。
それに全ては救世主様のお陰です。」
いいぞオコルデ
もっと褒めろ。
「私からもお礼を申し上げます。」
座ったまま俺の方を向きハンスは頭を下げた。
そして続けた。
「それにしても小さくなられましたね。」
ハンス君にはお馴染みの姿の
子供バージョンだ。
それまでは冒険者ゼータ姿だった。
そのせいで
食事を殆ど摂り忘れていて今は
空腹に襲われている。
ストレガになんでもいいから
俺用に食事を作れと頼んで置いた。
待ち遠しい。
「なぁあの手紙、俺がココに
訪れる予言でもあったのか?」
治療を断念した際に陛下に預けて行った封筒の事だ。
まるで俺が復活するのが
分かっていたかのような書き方だった。
そんな秘術を隠しているなら
是非暴いておきたい。
「いいえ、そうなって欲しい
その願い、祈りを込めての手紙です。
私もパウルもアモンさんの復活を
何よりも優先し、その可能性を
模索し続けていましたからね。
願を掛けた、そんな感じでしょうか。」
自分が死んだ後でも
いつか未来にはきっと。
そんな気持ちだったそうだ。
確かに、もうこの世にはいないでしょうみたいな
変な文章だったっけな。
「ちなみに私の情熱はお二人以上ですよ。」
出来上がった料理を俺の前に置きながら
ストレガはそう言った。
張り合ってどうする。
俺に出された料理を見て
ハンスは声を上げた。
「あ、それは!」
俺の好みの料理だ。
兄弟3人で暮らしていた時代に
良く作ってくれた料理だ。
俺と同様に悪魔ボディのストレガは味覚を体験出来ない。
人化出来ないので尚更、味付けは難しいと思われたのだが
あっという間に教えた俺よりも
上手く作れる様になってしまった。
マジで生前はシェフかなんかだったんじゃないか
俺が居なくなった後も
俺の家に司教共が集まり続けた原因のひとつだ。
ハンスも頂いた事があるのだろう
思わず声に出てしまったようだ。
欲しいのか。
「はい。」
分かっていたのか
ストレガはもう一皿同じ料理を
ハンスの前に置いた。
「やった。ずっと食べたかったんですよ」
本気で嬉しそうだ。
・・・・。
世の女性たちよ
男を虜にしたいなら
そいつの胃袋を掴め
話はハンス主導で教会の要望から
スタートしていった。
彼が言うと何にも裏が無さそうに聞こえた。
俺は内容よりもキラキラした少女の目になって
ハンスを見るブットバスが可愛く、見とれていた。
クールな感じもイイが
こっちの方が男子受け・・・俺の趣味なだけか
「どうですかアモンさん」
「ゴメン全然聞いて無いよ。」
「そうですか、実はですね」
突然、振られたが
慌てる事無く正直に返す。
俺をよく理解しているハンス君は
めげる事も怒る事もしないで
もう一度俺の為だけに説明してくれた。
そういえばハンスって怒った事あるのかなぁ。
「王家として政権を取り戻す気はございませんが」
オコルデが恐る恐る発言し
ブットバスが補足した。
「ですが、証明は難しいですよね。
人質でも差し出せれば、まだアレですが・・・。」
ダガを人質にすればイイんじゃないか
そう思ったが
皆、真面目な様子だ。
ここは堪えろ俺。
「はい、確認しました。以後この件は
一切不問と致します。」
顔を見合わせるオコルデとブットバス
そんな調子の良い事があるハズが無いといった表情だ。
「ただし」いつハンスがそう言い出すか待っている様子だ。
「えーと、それだけで宜しいのか」
いつまでもハンスが「ただし」と言い出さないので
ブットバスが確認を入れて来た。
ハンスは笑って説明してくれた。
教会内のそう言った声を封じる為だけの
9大司教派遣で、その御墨付きが
必要なだけだそうだ。
笑っているが
万が一ヒタイング謀反の時は
その責をハンスが負う事になるんだぞ。
それを企む奴が・・・居ないんだろうな
居てもパウルが何とかしそうだ。
「ヒタイング教会の撤廃とか
言い出さない限りは教会側には
どうこうと言う意志は有りません。
・・・あっ、お祝いの意志はありますよ。」
ドッと場に笑いが零れた。
ハンス君、話術も上達したな。
しかし、折角温まった場を
凍り付かせるようにハンスは
声色を変えて話し出した。
「ヒタイングの危機は王家では無く
蔓延っているマフィアの方ですからね。
アモンさん、どうするおつもりですか。
滅ぼしますか。」
何で俺=ジェノサイド・・・・だよな。
そう警戒するのも道理か。
「無論、我とマスターなら一日で」
「動く物全て破壊すれば後腐れもありません。」
魔の付く二人が
さっきの俺の注意も忘れ
即答した。
「なまじ残すと代わりとなる政府機関が
必要になってきますが
それなら不要ですね。」
おい司教
虐殺を見過ごすな。
「いや、さっきも言ったけどな」
俺は今後の行動を説明した。




