第二百三十 話 クフィール改造計画2
そろそろオコルデ達を城に戻さなければ
ベレンから9大司教が来てしまう。
今後の方針に話題が移った所で
まず明日はオコルデ達の移動だ。
「全く飽きていない様子だそうですよ。」
二~三日で観光にも飽きるだろうと
タカを括っていたのだが
オコルデ達に同行してもらっている
リリアンからの報告をナリ君は言った。
「んーでもタイムリミットだ。」
体力的にキツいとも思っていたのだが
流石に若い、回復も速かった。
それどころか訓練になって
日増しにオコルデの体力は増強していき
活動範囲、時間の拡大はもちろん。
スポーツの分野まで観光体験コースが
及び始めているそうだ。
オコルデには悪いが公務は公務で
果たしてもらわねばならん。
はぁ説得か、やだな
オコルデは個人的に甘やかしたい。
かわいいからだ。
「その後はいかがしますかマスター。」
ナリ君がそう聞いて来たので
俺は返事の替わりに
魔族の試練はいいのかと聞き返したのだが
具体的にどうこうが無いので
俺の用事に全面的に付き合うつもりだと
言っていた。
ここは借りにしておくか
詠唱無しで雷が出せるナリ君の
攻撃の速さ、射程、命中率は
1型相手に最も頼りになる事は
今日、証明された。
俺が協力に感謝すると
偉く恐縮するナリ君。
俺が礼を言うのはそんなに珍しいのか。
「クリシアに入る。」
渡りを付けたハズのマフィアに
あっさり裏切られた。
彼等は今クリシアだ。
俺はこの事情を説明した。
「裏切り者の始末ですね。」
「ええ、馬鹿な人達。お兄様を裏切るなんて
それがどれほど愚かしい行為か・・・ふふ」
ナリ君とストレガが黒く微笑んでいた。
「ストーっプ、お仕置きに行くんじゃないからね」
俺は慌てて釘を刺した。
「は?では何をしに」
「見せしめも重要ですよ。お兄様」
魔族の王も魔導院・院長も
不満そうだ。
どうも肩書に魔の付く連中は
乱暴でいけない・・・・俺もか。
「何、せっかく知り合ったんだ。
本国で更なる上司へのパイプに
なってもらおうかとな。
裏切りはそれでチャラにすると言えば
こっちはロハで収穫はデカい。」
「成程、殺すより有用だ。
流石です、マスター。」
ナリ君のセリフに何か不満そうなストレガ。
もしかしてさすおにが言いたかったのか。
「なんか、おっかない話になってないすか」
クフィールがキョドっていた。
「弟子よ、これも試練だ。」
本来ならクリシア入りさせず
安全な場所で待機してもらいたいトコロだが
今日のMVPで証明されてしまった通り
今の所1型の奇襲を防ぐ事が出来る
唯一の存在だ。
どんなに危険でも中心にいてもらう。
俺はそう説明し
更なる説得の準備をしたのだが
それは肩透かしを食らった。
「わ分かりますた。ガンバルっす!!」
全力で嫌がるかと思っていたのだが
予想外に熱血な返事だ。
変なモノでも食ったか。
「自分、まだまだ成長出来るっす!」
疎外感
集団の中に合ってそれを感じ続けていた。
そこに一筋の光明
特別な才能
俺の適当な嘘を信じ
道中も熱心に戦闘をしていた。
事実レベルの上昇率
一番成長著しいのはクフィールだ。
まぁ3だったからな
それが今では・・・いくつだっけ
ヒタイングに到着した辺りでは確か13だったが
俺はステータス画面を開いて
ビビる。
「クフィールが23だと?!」
「まだ誕生日来てないから22っす!!」
年齢じゃねぇよ。
アレか
さっきの1型討伐か
バングは経験値美味しいからな
パーティに入っているから
何もしていなくても結構な数字が流れたのか。
ミカリンと違いファンファーレが脳内で
聞こえないタイプのクフィールは
レベルが上がった自覚が無いのだ。
俺はレベルの話を説明した。
「んー師匠いくつっすか」
「100だ。」
その時点でジト目になるクフィール。
「所長は・・・。」
「そう言えばいくつなんですか私」
メニュー画面を開けないストレガは
自分のレベルを知らなかった。
元々興味も無い様子だ。
「100だ。」
どうも100で頭打ちになるようだが
本当はまだ上がある。
言って見ればスピードメータの目盛が
そこまでしか刻んでいないから
100が限界の様に見えるだけなのだ。
これは不便だ。
もうアテにしてはいけない。
レベル100同士の戦いが
実は100と500と言う
圧倒的な差がある場合だって考えられる。
100から上は
勘で判断した方がまだマシだ。
「ナリさんは」
「今は70だ。」
これも特殊で
頭に被っている白いターバンを外せば
77、今回の1型討伐の経験値で
もっと上がっている可能性があった。
「あたし全然、弱いじゃないすか」
泣きそうになるクフィールだが
比べるメンツが悪い。
クフィールの今のレベル23は
冒険者でいえばGの手前
Hクラスに該当する実力者だぞ。
俺はそう説明して追加した。
「バイスは26だ。」
旅を始める前のレベルも説明してやる。
「超上昇株じゃないっすか!!」
涙を拭くのを忘れて笑顔のクフィール。
「ああ、お前の時代が来るな」
ほめ過ぎた。
でもこの位はいいか
実際にクフィールはよく頑張って来た。
「なので、これからの育成方針だがな」
ストレガを自由にしたい
クフィールには自己防衛をしてもらい
現場に滞在し1型の出現地点
その場所とタイミングを
指示してもらいたい。
「そうっすよね。自分の身くらい
守れるようにならないとっすね。」
鼻息荒くクフィールは答えた。
やる気満々だ。
「ちょっと装備を考えるよ。」
攻撃を一切考慮しなくて良い。
これは特別なケースだ。
一般の装備ではあり得ない状況なので
探すより俺が作った方がイイだろう。
「うぉお燃えて来たっすー!!」
なんか嫌ーっなパターンだな
これ死亡フラグとかじゃないよね。




