第二百二十三話 なんじゃ我
「後、一つ提案があるんだが」
俺はそう言ってブットバスを
キャリアの外に誘った。
オコルデ、その他には内緒にしたい内容だ。
それを察したブットバスは迷う事無く
俺の後について外に出て来た。
「提案とは?」
「まず俺達だけじゃオコルデの扱いに
不安がある。そちらも安心できないだろうし
ここはブットバスも同行してくれないか。」
「・・・成程。」
「後、旅と言ってもこれから行く
ヒタイングの港町、そこで観光してもらうだけだ。
俺達は教会その他、少し捜査活動をするが
その時、ブットバスが一緒なら何かと
都合が付きやすいとも思うしな。」
「そこから先もオコルデが
ついて行きたいと言い出したら・・・。」
「恐らく無い。今まで引きこもっていたんだ。
長距離の旅をする体力は無い。
それにその先は少し危険になるんだ。
恐らくクリシアに乗り込むからな
流石に連れては行けない。」
「なんと、クリシア本国に乗り込む気とは・・。」
これはブットバスも予想していなかったのか
少しの驚きと共にそう言った。
「ああ、それでも行きたいと
言い出した場合は二人掛かりで説得だ。
これで行きたいが・・・どうだ。」
「う・・・うむ、それならば」
ブットバスは 諸手を挙げて賛成とはいかない様子だ。
もう一押しだな。
よし、ここはイケメンになって説得だ。
俺は冒険者ゼータにチェンジした。
「ブットバス。」
「きゃあああああああああああああああああああ」
しまった。
そう言えば最後にこの姿だった時
何も着ていなかったんだっけ
そのまま再登録しその後も変えていない。
俺は全裸になってブットバスに迫っていた。
まぁいいや
このまま説得してみよう。
「ブットバス。」
俺はフルチンのまま笑顔で
ブットバスに迫った。
「いやああ来ないでぇえええ!!」
あれ?駄目なのか
流石にイケメンでもここで全裸は無いか。
騎士団長とは思えない
乙女な悲鳴を聞きつけ
キャリアから飛び出して来る面々に
なんて言い訳しようか考えようとしたが
俺が考える前に
女子軍団の総攻撃が始まってしまった。
一通り攻撃を受けノックアウトされた。
その後、ブットバスは城に一旦戻り
城の騒動を治めて来るのと
旅に必要な物を持って
再びココに来る手筈になった。
「なぜ裸なのですか。」
「犯罪ですよ。」
男子チームからも苦言だ。
何でだっけ?
・・・・ストレガのせいか。
取り合えず服だ。
買って置いた夏服に着替えた。
「あ・・あのブスも同行するのですか」
心配そうに聞いて来るオコルデ。
嫌なのかな
俺はそう尋ね直すと
逆のようだ。
オコルデは嬉しそうだった。
「良かったな。」
「はい。」
いい笑顔だ。
ブットバスが戻って来るまでに
結構な時間が必要になった。
まぁ収めただけ大したモンだ。
大きな荷物と二人乗りで現れ
1人はそのまま馬で城に戻り
荷物とブットバスが残った。
ブットバスは騎士団の衣装から
普通の町娘の様な普段着に着替えていた。
マズい
どストライクだ。
メチャクチャにしたい。
「改めて宜しくお願い致します。」
家出や誘拐などでは無く
公式のお忍び視察になった。
これならバイスも文句は無い
俺達は二人を歓迎した。
「ようし、飛ばすぜぇ」
「お隣!!宜しいでしょうか」
キラッキラした目で
訴えるオコルデ。
もう靴脱いで向き変えて
外の景色を眺める電車に乗った
昭和の小学生のノリだな。
俺はストレガの様子を窺うと
ストレガは大丈夫な方の笑顔で頷いた。
「陛下・・・。」
ブットバスは早くも苦労性だ。
「心配だろ、ブットバスも来い」
俺は二人にシートベルトの着用方法を
指導してからキャリアを駆る。
「いやっほー!!ご機嫌だぜー!!」
3割増し程度で飛ばす。
遅れを取り戻す為というよりは
前半のノロノロのストレス発散だ。
「ホレ!オコルデも叫んで見ろって」
「ぃ・・・いやっほおおお!!」
大声を出し馴れていないのだろう
所々、声が裏返る
かわいい
「きゃああああああああああ」
馬とは全く乗った感じが異なる
ブットバスはジェットコースターに乗った
乙女状態だ。
これはこれでかわいい。
途中、休憩の為に一回
乗り物酔いの為の嘔吐で
オコルデ、ブットバス用に
それぞれ一回停車した。
「あれは・・・キツい。」
初期の自分を思い出しているのだろう
ナリ君はその後ろ姿を
同情たっぷりの目で見ながらそう言った。
俺は二人に乗り物酔いにも効果の有る
回復魔法を掛けてやり
夕方前には港町周辺に到着した。
「アレは・・・ワーレイ家の・・・
リディ殿、済まない一度止めてもらえないだろうか」
解体されたとはいえ
貴族は資産、人脈、市民からの人望など
大きな力を有していた。
オノーレ家は王直属の宮廷騎士として
今言ったワーレイ家は治安統括
いわゆる警察の任を預かっているのだそうだ。
野次馬が近づかないように立っている者に
キャリア上からブットバスは話しかけた。
変装のせいで最初はぞんざいな態度で
返答したが声の主が分かると
大慌てで取り繕い
責任者を呼びに行った。
そして直ぐに偉そうな貴族衣装を
身にまとった男を連れて戻って来た。
待っている間にシートベルトを外し
ブットバスはキャリアを下りて
小走りに戻って来た二人に
合流し、何やら話をしていた。
「ん、なんじゃ我ではないか」
止まった事で何事かと
客室からオコルデが出て来て
前方で話をしている者達を見てそう言った。
ナンジャ・ワーレイを
自動翻訳が誤訳したようだ。
あの連れられて来た偉そうな貴族の名前だった。




