第二百十七話 身長57m
そんなワケで牢に繋がれた。
みなさんお元気ですか。
冒険者ゼータ姿は
ここでは披露していなかったので
見知らぬ男が全裸で
騎士団長に飛び掛かった格好になった。
殺されても文句は言えん
そう思ったので抵抗せず
大人しく捕まった。
小さい城のクセに地下牢があった。
真っ裸じゃアレなのか
布を腰巻に巻いてくれた。
これで十字架に磔なら絵になったのだが
ヒゲが無いのでちょっと様にならないな。
天井から下がった鎖で両手を繋がれていた。
この鎖の長さが中途半端で
立つには長いが
座るには短い
手首に全体重を掛け
膝が床に付かない
それをいい事に
しばらくブランコをして遊んだ。
「あっはっは久しぶりだぁーヨーゼフー」
これが晴れた公園なら
童心に帰れたのかもしれないが
牢屋でやると虚しいな。
すぐ飽きた。
次に思いついたは
超電〇スピンだ。
早速試して見よう。
俺は回転しながら
捩れて短くなっていく鎖が
綺麗にツイストマカロニみたいに
なるように調節しながら
立ち上がっていき
もう
つま先がバレリーナかって位なるまで
限界まで鎖を捻り
そしてリリース。
「あぁあぁあぁあぁあぁあ」
ロータリースピーカー
その名の通りスピーカーが回転して
いるかのような音になるエフェクター
(発音としてはイフェクターだが何故か音楽業界では古くからエと呼んでいた。)
がある。
今の俺は実際に回転しているのだから
俺の叫びに天然のエフェクトが掛かるかなと
思ったのだが
叫んでいる本人には効果は分からなかった。
誰か部屋で聞いていてくれれば
「どう?」
「バッチリだぜ」
とか出来たのだが
誰も居ないので
成功したのか失敗したのか分からない。
残念だ。
床が回転しながら見る見る迫って来た。
俺は膝を曲げ鎖が戻り切ると
勢いそのまま
今度は巻き上げて行く
「次は逆回転だぁ」
ワクワクしながら叫ぶものの
巻き上げる勢いはそうでも無く
つまらない逆回転になった。
「人の力ではこれが限界か」
俺は禁を破って悪魔の力に頼る事にした。
重力操作を使い上昇すると
鎖は一段階の捻りでは収まらず
二段階そして三段階
まだまだ巻ける。
もう捻れない限界まで巻くと
鎖はボール状だ。
「ふっコレだけじゃあ無いんだぜ」
落下の力が回転を生み出す原動力だ。
鎖の強度をなんとなく計算し
俺は今度は体重を30倍にしてから
リリースした。
「おおおおおおおおおお」
凄い回転だ。
さっきとは比べ物にならないスピードだ。
腰の布は遠心力に耐え切れず
途中で飛んだ。
だが
止めるワケいはいかない。
フルチン大回転は止まらない。
「巻き上げまで3・・・2・・・1」
俺は迫りくる床を目測で計り
巻き上げまでのカウントダウンをした。
これは
この勢いなら
すんごい巻き上げが期待できるぞ。
行けーっ俺!!
「0!!!!」
ビッキーン
回転の負荷は考えていたが
伸びきった際の衝撃まで考慮していなかった。
鎖は伸び切った瞬間
青いZのように狂おしく身もだえして
切れた。
「ぐっはあああああああ!」
回転しながら床に刺さる俺。
半魔化金属ボディで良かった。
生身ならどうなっていたか
始める前に
〇電磁スピンと言ったが
本当にそうなってしまった。
俺ドリルは岩の床を砕きながら
捲りあげ刺さって行く
「しまった向きが逆だ」
超〇磁スピンは頭方向からだ。
ん
てことは次はどうやって巻けばいいんだ。
あれか
吊り輪の様にプルプルしながら
逆立ち状態で巻いて行けばいいのか
でも、それだと足が絡まない程度の
長さまでしか巻けないので
今回より威力は落ちてしまうな。
鎖の強度を上げるか
どうせ切れたので用意するんだし
そうしよう。
そんな事を思いながら
俺は床を掘削して行った。
突然、抵抗が抜け
俺は落下状態に入った。
「何だ?!」
最下層かと思っていたのだが
違ったようだ。
地下牢より更に下の階層に出たのだ。
「女湯とかか!!」
そう期待したのだが
地下牢より下にそんな施設を
作るはずがない
リトじゃないんだから
何かする度ラッキースケベに遭うワケが無い。
俺は咄嗟に悪魔化し翼を展開し滞空した。
翼を開くタイミングで回転も止めた。
今のはちょっとカッコ良かったと思う。
一緒に落下した破片が激突する音が聞こえた。
そんなに巨大では無いが
城のどの部屋よりも高い天井を持つようだ。
俺はセンサー系を起動させて
周囲の確認を行う。
地下牢のロウソクの灯りで
俺が開けた天井の穴
肉眼で見えるのはそれだけで
辺りは真っ暗だ。
暗視モードでみると
その部屋
いや部屋じゃないな
壁は岩肌そのままだ。
縦穴状の洞窟の上に城を建築した格好なのか
大き目の地下空洞になっていた。
ゆっくりと地面まで下りた。
入る時に見た感じでは
この城は火サスのラストでもお馴染みの
崖に建っているような恰好だ。
高さ的にはまだ海面まで行っていないだろう。
横穴も無い
壁、床、天井に該当する岩だけ
生きているモノも動く物もなかった。
ただ一つを除いて
岩しかなかった。
その一つとは
「煮干し?」
それにしてはデカイ
乾燥した魚だ。
「いや、これは・・・。」
その魚のミイラには
人の手足が生えていたのだ。
出展:超電磁ロボ コンバトラーV
5機のマシンが合体して身長57mの巨大ロボになる。
必殺技は超電磁スピンだ。放送当時の小学生男子は
回る椅子などを見つける度に再現を試み
吐く者、頭部を床に強打する者
みんな失敗していた。
先生に「何でこんな事したの」と聞かれて
正直に話しても分かってもらえなかった。
バイク盗んで走り出してやる。




