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ぞくデビ  作者: Tetra1031
212/524

第二百十一話 3の2と4

この部屋の壁の一部

クローゼットと言うか押し入れと言うか

とにかく収納があり

その扉の向こうから

珍味が流れていた。


リリアン、そこに居るのか。


いい加減に本題入れ

その珍味がそう言っていた。


本題って・・・そうか

ナリ君、魔族には本題なんだよな。

俺は話を切り出した。


「ところでナリ君、本題の方だが」


「本題?」


首を傾げるナリ君。


「試練だよ。」


「あぁ・・・やはりここまで

魔族を見かけていませんね。」


すっかり頭から抜けていた様子だ。

俺はリリアンの懸念を晴らすべく続けた。


「そうだな、魔族ではないが

ブットバスはどうだ。

礼儀正しいし腕も立つ美人だよな。」


俺がそう言うと

ナリ君は飲んでいた茶をテーブルに

置き身を乗り出して来た。


「おぉマスター。そうですかそうですか」


何だ

リリアンの不安が的中してしまったのか


「ふふ、ハーレム要員ですか

それとも正式な妻になさりますか

とにかく我は協力を惜しみませんよ。」


俺かよ


「いや、俺じゃなくてさ。」


人差し指で自分を刺しながら

変な表情になるナリ君。


「はぁ?我ですか・・・。」


はい

これは妄想にも出演記録が無さそうだ。


「マスターはブットバス殿が我に

相応しいとお考えなのか。」


「いや・・・ホラ神託だっけ、北に来て

出会った相手なワケじゃないか。」


「フム・・・。」


「好みとしてはどうだ?」


「好み・・・?ですか・・・。」


考え込んでしまったナリ君。

少年期から青年期に至るまでの間

森の中で人目を忍び孤独に生き抜いた男だ。

好みそのものが自分でも分かっていないのだろう。


「どんな女性に傍にいて欲しいと考える。」


リリアンの恋の相関図は

取り合えずハズレだな。


だが丁度良い機会だ。

理想の相手をイメージしておくに

越したことは無いだろう

俺は答えやすい様に誘導してみた。


「・・・・。」

「・・・・。」


すっかり考え込んでしまったナリ君。

つかここまで具体的なモノ無しで来たのか。

アレですか恋のエンジェルが弓矢でズバーッって

一目惚れを待っていた感じか。


「浮かびません。」


「そうか、じゃこれからは品定めと言っては

言葉が悪いかも知れないが

出会う女性を妃としてどうか

この基準で見てみたらどうだ。」


「・・・はぁ。」


やる気無っ

しかも何か変な目で俺を見てるし

誰の試練だと思ってんだ。


「まぁこの旅が空振りに終わっても

俺には何の損も無いから

無理強いしないけどね。」


「いえ、アドバイスありがとうございます」


改めて恐縮するナリ君。

心なしかクローゼットの中でリリアンが

ガックリしている姿が目に浮かんだ。


取り合えずナリ君は俺に対して

どうこうって言うのは無さそうなので

残り二人の情報を取ってしまおう。

俺はナリ君に最後に会った二人の様子を尋ねた。


「若造の方は」


バイスの事だよね。


「落ち込んでいるだけだと

思うのでマスターがお怒りで無いなら

問題と思われますが・・・。」



ハァ


がの後を聞かねばなるまい。


「ストレガか・・・。」


「はい、何と表現したら良いか

何か生き物でない、作り物の様な

感じ・・・様子・・・

すいません上手に言葉に出来ません。」


何ソレ

怖いんですけど


ストレガは最後だ。

みんなで相談してから

迎え撃とう

怖すぎる。


ここでバイスを呼びにいくのに

ナリ君に一緒に来てくれと

二人で部屋を出た。


クローゼットの広さを知らないが

リリアンに脱出の機会を与えないと

ムレムレになってしまう危険がある。

いやだ、汗でブラウスが体に貼り付いて

透けちゃうーって言う艶姿を

目に焼き付けておきたいが

我慢だ。


廊下に出てクフィールに

さり気無くクローゼットのリリアンの

救出を頼むとブットバスにバイスの

部屋までの案内を頼んだ。

「何故、我も」と言うナリ君に

俺はヒソヒソ声でブットバスの

後ろ姿を、特にデカ目の尻を指さし


「どうやねん。」

「どう・・・と言われましても」


女の品定め初級編を実施だ。

これなら話の流れ的に不自然ではないだろう

今、ナリ君に部屋に戻られると

リリアンが隠れていたのがバレてしまう

どうしても一旦、部屋の出入りを確認出来ない状態に

なってもらう必要があったのだ。


つか

さっきから俺は何の苦労をしているんだ。


バイスは実に簡単だった。

部屋に入るなり俺を確認すると

色々な事を謝罪し始めた。

自分の功績の為だけにヒタイングに赴き

俺ばかりに負担を掛け

あまつさえ礼など要らぬと勝手に言ってしまった。

俺の要求した礼こそ、今後の捜査に

役立つ事だったとか

もう、喋る喋る。

きっと一晩中反省していたに違いない。


基本、真面目な奴だからな


「怒って無いから安心しろ」


俺がそう言っても納得しない。


「いえ、飛び出して行かれたのは・・・。」


「我も騙されたのだが、マスターは」


ここでナリ君が先程の話を

説明に入ってくれた。


「なっ何ですってぇ?!」


偽勇者の命を救い

バックのクリシアマフィアとも交渉済みだ。


「それをたった一日で・・・。」


「これがマスターだ。」


ここでブットバスが悔しそうに言った。


「やはり偽者を送り込んでいたのは

クリシアマフィアだったのですか。

我々も追ってはいたのですが・・・。」


傍で話を聞いてしまった。

王家は王家でクリシアマフィアの

動きを追っていたようだが

証拠を掴むトコロまで行っていないようだ。


珍しく感情的なブットバスに

俺はフォローを入れて置いた。


「行政からして深く入り込んでいる相手だ

正規の手続きでは追い切れない。

こういうのは

俺みたいな部外者が法外に動いた方がいいんだ。」


苦虫を噛み潰したような顔のブットバスは

それでも俺に感謝の意を示した。


「流石は救世主様。

今の言葉も心に留めておきましょう。」


好きですね。

そのフレーズ

週刊リリアンの恋の相関図がハズレと

分かった今なら

からかっても大丈夫かな


「一々心に留めておく位なら

いっそ俺の妻になってずっと傍にいたら

良いんじゃないか」


「流石マスター良いアイデアです。」


ナリ君の相槌も速い。


明るい笑い声が響く

バイスも気を取り直した様だ。


『だーかーらぁ重ー婚ーはー!!!!』


久々の幻聴ババァルだ。

良いだろ冗談ぐらい言わせろ


笑顔の野郎三人に対して

黙って俯いてしまったブットバス。


ありゃ

失礼な冗談だったか

解体され権力は持っていないが

生粋の貴族だもんな

早目に謝ろう


そう思い俺は

謝罪の言葉を言おうとした時

ブットバスは小さい声で言った。


「ふ不束者ですが・・・よろよろ」


逃げろ

また宇宙へ


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