第二百九話 錆その2の2って俺の錆じゃないぞコレ
リリアンが語り始めたのは
身の上話を含む魔族の歴史だった。
何の授業なのかと思ったが
12歳の女子が一生懸命話す姿
俺は
それだけで何時間でもOKなので
相槌を入れながら話を聞いた。
魔族には4つの部族があり昔は
例の偉業や王候補の一騎打ちなどで
その時その時の帝王を決めていた
なんともワイルドな種族で
角族:ルーンマーセナリー
牙族:覚えられなかった。
翼族:これも覚えられなかった。
尾族:ソールガーバメイト
で、今現在血筋が残っているのはナリ君と
リリアンの尾族だけだそうだ。
「リリアン・ソールガーバメイトって事?」
「いえ、ただのリリアンです。」
名乗る事が許されるのは王だけ
それも男子限定で
正式候補はケツにエクスをくっつけるそうだ。
それでルーンマーセナリー エクスなのかナリ君は
どうでも良い秘密が明かされた。
なので最後の王とその候補を
保護区に閉じ込められながらも
魔族は探し続けていたワケだ。
「ふーん。でもリリアンが男の子を産めば
その子は王の資格があるんじゃないのか。」
「7元老が、どう考えていたかは分かりかねますが」
7元老
魔族のお偉いさん集団だ。
王抜きでも機能していたのは彼等のお陰だ。
ルークスもこの一人だ。
ナリ君の捜索を続けながら
見つからなければ
そうなったのだろうな。
ここで嫌な考えが浮かんだ。
ナリ君さえ見つからなければ
リリアンは次期帝王の母として君臨出来た。
リリアンにしてみればナリ君は
邪魔者なのではないか・・・。
しかし、ここまでの旅路で見る
彼女の献身っぷりは羨ましいレベルだ。
一日でイイから替わって欲しいぞナリ君。
とても暗殺その他を企む様子では無いし
現にリリアンはそんな子では無い
これは断言出来る。
信じるとか不確定な希望では無く
悪魔の俺には
そんな暗殺とか企もうものなら
美味しい感情漏れまくりだろう
表情や態度は誤魔化せても
獲物を目の前にその感情が漏れないハズは無い
余程の訓練を積んだ暗殺者でもない限り
絶対に察知出来る自信がある。
多少の訓練を積んだ程度の
ヒタイングのメイドであんなに漏れ漏れだった
リリアンに暗殺の意志は無い
確信していた。
なので心象を敢えて悪くする必要も無いし
言葉で確認しなくても良いか
そう思った矢先に
リリアンから言って来た。
「あの、お疑いにならないのですか・・・。」
「えーと何を?」
これは察しが悪い振りをしよう
自分で言ってもらった方がイイな
ごめんねズルい大人で
「その・・・私が地位目当てで
若を亡き者にするのでは無いかと」
「リリアンを知らない状態で
その話を聞いたら警戒したかもだけど
甲斐甲斐しく世話を焼くリリアンの姿を
俺は見てるからなぁ・・・有り得ないだろ
ってしないよね?」
最後はちょっとお道化て言った
「はい、ありません。」
キッパリと真っ直ぐ言うリリアン。
うん、いい子だ。
「魔族の事情は分かったんだけどさ。」
俺は半泣きの理由と
俺の居ない間の問題を合わせて尋ねた。
これが本題なんだぞ。
「あ、失礼いたしました。実はですね・・・。」
俺のオーラは室外の廊下にまでも及び
クフィールを始め執事・メイド軍団も
次々とぶっ倒れたそうだ。
「リリアンは平気だったのか」
レベル40に迫るブットバスですら気絶した
リリアンのレベルを知らないが
40を超えるとは考えにくい。
「いえ気絶はしませんでしたが
恐怖に抵抗するのが精いっぱいで
動けませんでした。」
魔族は悪魔オーラに強い抵抗力があるのか
本当に祖先に悪魔が居るのかも知れない。
ようやく動ける様になった所で
倒れた人々の救助を駆けつけた城の人達と
一緒に行ったそうだ。
王の間で何があったのかは知らされず
1人戻って来たナリ君は
激怒状態で
聞くのが躊躇われたそうだ。
「そうか、何があったのか知らないんじゃなぁ」
「はい・・・済みません。」
激オコのナリ君を思い出したのか
また半泣き状態になるリリアン。
「安心しろ、ナリ君の怒りは解くから」
「よろしくお願いいたします。
あの・・・ついでと言っては何ですが」
ついで
人がこの言葉を発する時
それはとても ついで などでは無く
本命のお願いの場合が多い
そしてリリアンもそうだった。
「どうも若は・・・」
リリアンはヒソヒソ声になり
俺に顔を近づけて来た。
俺も喜んで顔を近づけ耳を立てると
想像もしていなかった事を話し始めた。
図で纏めると
バイス
↓
ブットバス→俺
↑
ナリ君
という
恋の相関図の説明だった。
「あんな人族を御妃になど認められません!!」
最初の人払いと
冒頭の魔族王家の歴史が
コレに繋がって来るのね。
つか
折角人払いしたのに
そんな大声で激昂したら
ああ、まいいか。
「ふーんってちょっと待って」
「はい。」
「ブットバス→俺 これおかしいだろ」
ハァとため息をつくリリアン
何、その呆れた感じ
「やっぱり分かってらっしゃらないのですね」
分かるか
元の俺ならともかく
14歳のチンチクリン状態だぞ。
「いやだって俺子供だぞ。」
「救世主さま、世の中には
ロリコンという種族がいましてね。」
はい知ってます。
つか俺です。
ごめんなさい。
「いやいやいや、無いだろー。」
ブットバスは終始
感情の見えない事務的な態度だ。
美味しい悪感情も
不味い好感情も感じ取れていなかった。
「年を取る程若さを求めるのですよ。」
リリアンの言葉が
27歳の元の俺の心臓をゲイボルグした。
うう
それで俺はロリコンに覚醒してしまったというのか
でも今のこの体なら普通に同級生に
恋焦がれる健全な
・・・・・
いや不健全だろ。
俺の悩みを知ってか知らずか
リリアンは続けた。
「ですので救世主さま
ついでにブットバスとか言う
年増のブスを秘密裡に葬って下さいまし
元凶が消えれば若も目を覚ますでしょう。」
12歳とは思えぬ妖艶な表情で
リリアンはそう言って来た。
女は魔物だ。
後ろ髪の長い二枚目俳優が
古ーいドラマでそう言っていたが
本当だった。
怖い。
怖すぎる。




