第二百二話 404号室宿泊
出会った時とは違い
今のラテラは死にそうには見えない。
血色も悪くは無く
ただ寝ているだけに見えた。
俺の合図で飛び込んで来た二人は
その様子に歓喜した。
「ああっラテラ!」
飛びつきそうな勢いのアリアだったので
俺は安静にさせておけと釘を刺した。
意識が戻れば飢餓状態だろうから
食い物と飲み物を沢山用意しておくようにとも言って置く。
「な・・・なんて礼を言えば」
リカルドは奇跡に信じられないと言った感じで
そう言って来た。
「礼は不要だ。俺の目的の為に行った治療だ。
死人に口無しだからな。」
「いや、これに恩を感じない奴は人間じゃあ」
「勘違いしているようだな。ラテラは
まだ、助かってなどいない。」
丁度良い
保険をかけさせてもらうか
俺は続けた。
「彼にはちょっとした死の呪いを掛けさて貰った。」
「何だって?!」
「何故そんな事をするの!」
「何故って俺はお前たちを信用していない
弟を助けてくれてありがとうよ。こいつはお礼だ
とか言って俺を殺しに来るかもしれないだろ」
「ぐっ・・・あんた今までどんな目に遭って来たってんだ。」
「そんな・・・ヒドイ。」
リカルドもアリアもなんか悔しそうな表情だ。
「おいおい、これでもクリシアマフィアを
単独で相手にしに来た男だぞ。」
俺の言葉に視線が床に落ちる二人。
「殺されない為の保険だ。
用が済めば呪いは解除する。」
「それをどう信じろと」
責めるような視線で俺を睨むアリア
うーん良い表情だ。
「情報だけで良いなら、ここまで回復させない
あのまま意識だけ戻させ、聞く事だけ聞いて
そのまま立ち去ってたって良かったんだぞ。」
責める気配が急激に薄らぐアリア
あーその表情も良いね。
「なぁどんな呪いなんだ。
知らずにうっかりなんて勘弁だ。」
リカルドの方がまだ冷静なようだ。
俺はリカルドに説明した。
もちろん考えながら喋ったでっち上げだ。
「呪いに他の効果は無い、解除は俺しか出来ない。
解除されなかった場合は三日後に死ぬ。
三日以内でも俺に死ぬ程のダメージが
入ればラテラが身代わりにそれを受ける。
なので解除するまでせいぜい俺を大事にするんだな。」
「分かった。」
「・・・。」
リカルドは返事をしたが
アリアは恨めしそうだ。
「後一つこれが一番注意なんだが・・・。」
ムカついたのでイジワルも言っておこう。
「・・・何だ。」
「何よなんなの」
オチは注目が集まってからだ。
二人が俺に集中する瞬間を待って俺は言った。
「下らないギャグを言うと即死する。」
はい笑って
「ななな何だってええええええ!!!」
「どうしよう!!もうダメだわ!!」
あれ
「リカルドどうしよう。この子ったら
二言目には下らない寒いギャグしか言わないの」
「落ち着け落ち着くんだアリア」
二人とも大慌てだ。
早目に取り消すか
「何てのは冗談」
「折角助かったのにぃいいい
こんなのって無いわあああああ」
「まだ完全に駄目だと決まったワケじゃあない!!」
おーい
「おい冗」
「私が帰宅するとね。おかえりんこ って
言ってくるのよ。何て返事させる気だったのかしら」
何て返事するの
おじさんも聞きたいな。
「そりゃあ ただいまん」
「イヤーっ!!最低!!」
アリアの平手打ちがリカルドを捉えた。
パッチーンて言い音をさせていた。
おっさんが言うな
女の子が言うからいいんだろ
最低。
「お兄さん・・・これどういう状況」
背後から声が掛かった。
マスターだ。
漫才が終わらないようなので
俺は今までの流れを説明し
マスターにラテラ用の食事や飲み物の準備を頼んだ。
呪いの件も説明し、最後の下らないギャグで発動は
冗談だと伝えて置く様にも言って置いた。
「後、404にそのまま泊まる。
変なサービスは一切要らん
誰も入れないように頼む。」
マスターは快諾してくれた。
「明日、適当な時間に出て来る
その頃に意識が戻っていれば良いんだがな」
そう言って立ち去ろうとした俺の
後ろからマスターが声を掛けて来た。
「ありがとう。」
俺は振り返る事無く
手を軽く上げて答えた。
404号室に戻った俺は
ストレージに在庫してある適当な鉄板と鉄骨で
部屋の内側にバリケードを作った。
人化して睡眠するのだ。
これでも不安が残った。
非常食と水を用意してから
人にチェンジすると
倦怠感と頭痛に襲われた。
やはり半魔化の状態で長時間力を行使するのは
反動がデカい。
だが、前回の宇宙旅行に比べれば
意識がある分まだマシだ。
俺は栄養と水分を補給すると
寝るにはまだ早いが
爆睡するだろうからもういいや
俺はベッドに倒れ込むと
そのまま落ちる様に睡眠した。
深かった。
死んだ様に眠った。
意識が戻ると
今、自分が何処にいるのか理解出来ず
あたふたと周囲を見ましてしまった。
鉄板の隙間から日差しが漏れている。
一体何時間寝てしまったのか。
体を起こそうとして筋肉痛に驚く
何で筋肉痛になっているのかよく分からない。
まぁいいか。
「フーッなんだろうダークの夢を見たような気がする。」
折角の夢くらい綺麗なお姉さんに
なでなでしてもらいたいものだ。
なんで夢でまで悪魔忍者と付きあわにゃならんのか
ガッカリ。
「夢では無いでござるよ。」
「おおおぉわっ!!」
俺の影からダークが顔を出した。
本気で驚いた俺はつい悲鳴を
上げてしまう。
「なんだお前、いつから居た。」
「やはり記憶に無いでござるか。」
ダークの話によると
昨夜、俺の気配を探って
この部屋に行きつき
水分の排出と補給に起きていた俺に会ったそうだ。
「いいから護衛してろと言っていたでござるよ。」
夢じゃなかったのか。
「しかしなんでヒタイングにいるんだ。」
「適当に現地で合流と言ったのはアモン殿でござるよ。」
そうだ。
アリアをヒタイング近くの集落まで
送った際に先行偵察という形で
ダークを放牧していたのだった。
すっかり忘れていた。
合流の為にずっと俺の気配を探して回っていたそうだ。
偉いな、俺なら適当に遊んでいるトコロだ。
「そうだったなスマンスマン。で収穫はあったのか」
俺を探していたと言う事は
先行偵察の任務は終わっていたと言う事だ。
「ふふふっよくぞ聞いてくれたござるな。」
自信満々のダーク。
おぉ流石は13将やるじゃあないか
俺はワクワクしながら成果の報告を受けた。
「聞いて驚くでござる、偽勇者とやらは
なんとこの建物に居るでござるよ。」
俺は二度寝をする事にした。




