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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第二百一話 偽勇者治療

リカルドに案内され狭い階段を下りた。

この階段も従業員専用で

一般の客などは使用しない階段だ。


「情報の齟齬を確認する為にも

俺への説明は細かく頼む。

何も知らない観光客だと思ってくれ

俺の方からも何でそんな当たり前の事を

と思えるような質問をする時があるが

そういう目的の為だ。」


階段を下りながら俺はそう言った。

変に怪しまれる前に

早目に予防線を張っておこう。

何しろこっちは白紙も同然だからな。


「分かった・・・ここだ。」


丁度、地下の一室の前まで来た。

リカルドはそう言って

扉をゆっくりと開いた。

俺の後ろに位置していたアリアは

小刻みに震えていて

何かに耐えている様に見えた。


狭い部屋には

粗末なベッド

シーツには黒い染み、血液が付着してからの

時間の経過を示していた。

横たわる少年が居た。


「老人・・・いや子供か」


一瞬、老人かと勘違いしてしまったのは

髪が全て白髪のためだった。


意識はもう無いだろう

呼吸は浅く途切れ途切れだ。

首から左肩に巻かれた包帯も

白い部分の方が少ない有様だ。


事切れる寸前だな。


俺は怒りが爆発しそうになった。

子供を何て目に遭わせてんだコラ

しかし俺が切れるより速く

アリアが決壊した。


「ラテラ・・・・ああああっ」


大粒の涙を大量に溢し

その場にしゃがみ込んでしまうアリア。


リカルドはアリアの元に行き

しゃがみ込んでアリアの肩に手を添えた。


「弟なんだ。」


リカルドはそう呟いた。

俺への説明なのだろう。

アリアは恐らく幼い頃から工作員エージェントとしての

訓練を受けていた。

その兄弟ならラテラも同様なのだろう。

偽勇者はクリシアマフィアが何らかの目的の為に

組織的に送り出されていたという事か。


「医者は?」


話どころじゃないだろコレ


「もう手は尽くした。今夜明日が山だと言っていた」


もう一つあるだろ


「教会には」


「行けるハズが無い」


ラテラの命より組織の安全の方が優先か

正しい判断だ。

だが

大っ嫌いだ。

俺は悪魔だ間違っててイイ。


かっさらって教会まで強行しようかと思ったが

ラテラがその負荷に耐えられないだろう。

更に直後ならまだしも

ここまで時間が経過した重傷者を治療出来うる

司祭が滞在しているとは考えにくい。

ネルネルドですらあのレベルだった。

一応は平和なヒタイングに優秀な回復役が

遊んでいるハズは無いだろう。


俺がやるしかないが

僧侶系の魔法を使用するには人化が必須だ。

今、アリアの前でネタバラシは早いな

取り合えず診断をしてみて判断するか

ええい

俺も慌てているのか

優先順位が滅茶苦茶になっているな。


デビルアイを起動して現状を診断した。

俺はこの治療を施した医者をぶん殴りたくなったが

こうするのが精いっぱいだったのだろう

そう思って殴りに行くのは止めた。


左の首の付け根から左脇方向に綺麗に切断され

失血死を防ぐのと腐敗を止める為に

切断面を焼いていた。

それを人型を保つためだけに縫合してあるのだ。

左腕全体が壊疽を起こしかけていた。

これを魔法で治療するとなると

火傷をなおしてから傷の修復なのだが

腕の方は生命力が皆無だ。

どこまで魔法に答えてくれるか

予想が付かない。


せめてもう少し血液が通ってくれていれば

まだ違うのだがなぁ


以前、ヴィータもチャッキー蘇生の際に

「腐っておらねば大丈夫じゃ」と言っていたが

これは腐りかけだ。


作り方を知らないが

これは治療よりアンデッドの素材にした方が

あらゆる効率がよさそうだ。


意識の無い相手じゃ契約も出来ない。


「改変しかないか。」


思わず呟いてしまったが

説明はイイか

どうせアリアは大泣き状態

リカルドはその相手だ。


「助けたければ部屋を出ていろ

俺が良いと言うまで入るな。覗くのも許さん。

俺の秘術を知った者は始末の対象になってしまう

例え俺が見逃しても、俺の仲間は俺程優しくない。

そうなってしまっては助ける意味も半減だ。」


「ラテラは助かるの?!」

「話は後だアリア、今は彼の言う通りにするのが最善だ」


突然の光明に顔を弾かれた様に上げるアリア。

そのアリアを引きずるように扉方向に

移動するリカルド。

それを見送りながら俺は追加で言った。


「急げ、ここまで時間が経過した者を

相手にするのは俺も初めてなんだ。

少しでも可能性を上げたければ急げ!」


物凄い勢いで閉められる扉。

デビルアイで見て見ると

扉を挟む様に二人は左右に分かれて座り込んだ。

この角度なら見えない。

話声からうっかり部屋に入ろうとする者を

引き留める相談を始めている事が分かった。


俺の言葉を真に受けてる。


まイイか。

俺は早速、改変をするために魔法の糸の

接続を試みた。

あっさり繋がった。

一番厄介な障壁「警戒心」意識が無いので

ほとんど存在していなかったのだ。

寝てる人より抵抗が少ない。

次に問題になる生体反射も抵抗が無いどころか

接続の僅かなショックでも壊れていく

オコルデが鉄筋コンクリートなら

今のラテラは腐りかけの木造住宅だ。

力の入れ加減を注意しないと

直すどころか破壊しかねない。


これが死にかけの人間か。

勉強になるなぁ


致命傷にならない箇所に

指を延長して突き刺し

魔力の充填と血液のろ過循環を開始

相手が聖職者だった場合

ここで俺の方が崩壊してしまうが

神の加護が無いのは先のデビルアイで確認済みだ。

まぁ偽勇者なんて役をやるぐらいだ。

バチは当たっても加護は無いな。


細胞の活性化を待ってから

太目の血管を繋いでいく

ここで慌ててもう一本指を延長し

左肩に刺してろ過を補助した。

壊疽で左腕に貯まった毒素が

本体になだれ込んでいっていたのだ。


火傷で損傷した部分は外から排除していく

縫合の糸もだ

太さに驚く

ナニコレ凧糸ですか。

まぁこの傷を塞ぐにはこの位の太さが

必要だったってことか


その後は太い順番で血管の接続と

左腕に集中して細胞の活性化を続けた。

自分の体温調節の為に翼を展開しゆっくり扇ぐ

80度に加熱されたの血液なんて送り込んだら

全てがパーだ。


粗方片付いた所で皮膚を再生、真皮までしか弄れないが

それでいいだろう。

それから骨を繋いで接続を解除した。

体を冷やしながらデビルアイで最終チェックした。

うん

命に関わる様な損傷は無いな

ただ

すんげぇ栄養不足だ。

俺の注いだ魔力の効果が終われば

一気に飢餓状態だぞこれは

うーん今度ヒマな時にでも

点滴も再現を試みるか。


とにかく意識が戻ったら

何か食った方がいいな。

「血が足りねぇ」とか言い出しそうだ。


上手に出来て俺は上機嫌だが

ふと考えた

一日に改変を二度もやった。

人化したらぶっ倒れる可能性が高い。

とは言え先延ばしにすればするだけ

危険は大きくなっていくだろう

今夜はどこか安全な場所で寝ないとな


ただ半魔化状態では特に疲労は無い

体温も戻ったのでセンサー系も正常に動く

ヨハンの時のアレはやっぱり特別だったのか


俺は手近な椅子に座ると

外で待っている二人に向け声を掛けた。


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