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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百九十六話 姿

まず鱗を取り除き、頭を落とす。

切断面から腹方向、肛門まで開き

ワタを取り出す。

次は切断面の背方向から尾びれまで

骨を定規に見立てて刃先をなぞらせる。

ひっくり返して腹方向も同様に

背骨を中心に左右コレを行うと

三枚におろせる。


違う

これ魚の三枚おろしの方法だ。


何考えてんだ俺は

駄目だ

やる気が起きない

マーメイドじゃない時点で

帰りたいMAXなんだ。


勢いで当たり前だとか言っちゃったけど

どうすんの

この魚を人の姿に

どうやったらなるの


倒すなら楽勝だ。

見えているオコルデのレベルは40だ。

悪魔光線一発、それすら必要ないだろう。

だが

倒してしまっては駄目だ。


取り合えず話し合いが出来る様に

大人しくなってもらわないとな


などと考えていると

オコルデは吠えた。


「グォオオオ見るな見るなみるなぁあ!!」


だったら飛び出してこなきゃ良かっただろ。

とは思うのだが相手は錯乱状態だ。

おかしな行動を取ってしまうのも仕方が無い。


「醜い・・・いやぁ醜い醜い醜い醜い」


生えている手足は女性のそれに見えない

筋肉隆々だ。(間違い筋骨隆々が正しい)

それが内股になって頭部を抱え

嫌々している。


思わず笑いそうになったが

聞こえて来たブットバスの叫びで出来なくなった。


「陛下!!お気を確かに。客人等が

元の御姿に治療してくださいます!!」


「お兄様、私からもお願いします。」


ストレガも他人事じゃなさそうに

情の篭った目で俺に訴えて来た。


・・・他人事じゃないのか。

人の姿になりたい。

骨だけの自分が嫌で悪魔に魂売ったんだっけな

・・・契約かやっぱり、それしかないか。


「お前らにぃいい何が分かる!!」


もう暴れる暴れる。

どんなスキルを使ったのか

それとも運が0のせいなのか

ナリ君に集中攻撃を仕掛けて来るオコルデ。


しかしレベル差があり過ぎる

ナリ君は華麗なステップで全て回避している。

雑談する余裕もあるようだ。


「我からもお願いしたい、我は自己の姿を

受け入れてはいるが周囲に強要は出来ず

何年も孤独な時間を費やしてしまった。

この者の苦しみ、少しは分かるつもりだ。」


しくも今ナリ君の頭には

出会った当時のように

ターバンが巻かれている。

今は熱さ対策の為だが

当時は魔族の特徴である角を隠す為だった。


姿か。


良く大事なのは姿じゃない中身だとか言うが

それは自己の容姿に自信のある者の自惚れだ。

中身を評価して欲しくても

姿の時点で門前払い

中身を見る段階まで行かないのだ。


何も悪い事をしていないのに

浴びせられる嫌悪の視線。

それがどれほどその人の心を壊していくのか

壊れ切るとヤケクソになり逆に

嫌悪の視線を求めるテロ行為が

始まってしまう気がする。

嫌悪の視線が自己の成立の条件に

なってしまうのではなかろうか。


「おいオコルデ!!」


慰めは逆効果だ。

つか

何でかよく分からないが

ちょっと頭に来ていた。


逆切れで行く事にした。


「醜いがどうしたって?!ああ?」


俺は悪魔男爵バロンになるとオーラを開放した。

瞬間的に体格差が逆転した。

2m程度のオコルデに対し悪魔男爵バロンは4m

前回のデフォルトサイズと同じだ。


見下ろしていた餓鬼が

見上げる魔神に変身した。


「他人の視線が何だってんだ!!

見てみろ、ホラ俺なんかみんな怖れて

心の中で消えろ消えろ言ってるのが

聞こえてきそうだぜ。

お前の方がまだマシってモンだ。」


オーラ開放はこのセリフの説得力を補強する為だ。


「マスター。みんな気絶してます。

ほぼ誰も見ていません。」


「えっ?」


ナリ君のツッコミに俺は周囲を確認した。

どいつもこいつもぶっ倒れていた。

立っているのはナリ君とストレガと

オコルデだけだった。


あちゃー

調節間違えたか

バイスもブットバスも気絶するんじゃ

ちょっと強すぎたな。


どうする

起してもう一回やり直すか


「あ・・・あなたは人の姿になれるではありませんか」


気絶はしないものの恐怖には捕らわれていたオコルデは

小刻みに震えながらそう訴えてきた。


あー

有名落ちモノゲーで負けそうな時

そんなんなるよね。

そっくりーウケるー。


「だーから、お前にもそうしてやろうって

言ってんじゃねぇか。ブットバスの姉ちゃんが

どうしても言うから来たんだが嫌なら帰るぞ。

元々こっちは用事なんかねぇんだ。」


「お願いいたします。」


土下座ポーズになるオコルデ。

発見

魚人間は土下座しても

頭が下がった様に見えない

腹ばいになった様に見える。


興奮は覚め、すっかり落ち着いたようだ。

カーテン越しに見えた変身

その逆の現象が起き始めた。


まぁアイスクリーム頭痛って

短時間だしね。


変身が終わると

オコルデは少女の様な姿になったが

明らかに人では無い

半魚人をもっと人寄りにした感じだ。

顔も肌は正面だけで

耳はヒレのよう

その耳から後ろと全身は細かな鱗で

覆われていた。

眼球は虹彩武が緑、白目の部分は黒

瞼は透明で上下で閉じるタイプだ。

頭髪は一見、髪のように見えるが

細い棘だ。

鱗が棘状になったモノだろう。


モンスター娘好きなら

十分ストライクになるレベルだ。


取り合えず俺はナリ君とストレガに

気絶した人々の保護を頼んだ。

嘔吐物で喉が詰まり、

そのまま窒息死なんて事もある。


床で行うのもアレだし

目を覚ました人の対応も面倒だ。

場合によっては俺もぶっ倒れる。

ベッドに移動しよう。


俺とオコルデ、二人きりより

同性に居てもらった方が良いだろう

ストレガにもベッドまで来てもらった。

ナリ君はカーテン前で待機してもらい

起きた人に説明をする役を頼んだ。


さて久々の悪魔の契約だ。


「困りましたね。お兄様。」


いきなりつまずいた。

ヒタイングでは神と悪魔の認識が

かなりあやふやで

契約が成立不可だった。

人間じゃないし、ヒタイングの教会も

言って見れば侵略者の象徴だしなぁ

人側が望みを叶える替わりに魂を差し出す。

この認識が確固たる理解がないと成立しないのだ。

子供を騙して契約出来ないのも似た理由からだ。


こうなると改変しかない。

俺はオコルデにパーティーに

入って貰うようにお願いした。

常に上から、人の支配下に入った事など無いハズ

もしかしたら仲間と言う概念すら怪しい。

契約以上に条件が悪い気がしていたのだが

なんと、あっさり入った。

悪魔男爵バロンのオーラで

自分以上の存在だと強烈に認識したようだ。

そうだ、無駄じゃ無かったんだ。


「どれどれ」


俺は早速、オコルデのステータスチェックを

試みようとして止まった。


「何だこりゃ。」


オコルデの項目は文字化けしていて

読めるモノは何一つ無かったのだ。


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