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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百九十五話 半人半魚

「陛下が、まずこれをと」


ブットバスはそう言って

一通の封筒を取り出した。

それは蝋の封印

教会の紋章で封印されていた。


「なんでも以前に謁見した司教が王に

預けた物だそうで・・・。」


いずれ訪れる者にと


数年経過しているとは思えない状態だ。

放置でなく

大事に保管されていた事が窺えた。


俺は顎でバイスを促した。

ハンスが残したのなら

教会関係者が見るべきだと思ったのだ。


促されるまま

バイスはブットバスから封筒を受け取った。

封印は弄られた様子も無い

未開封だ。


「ハンス様・・・ですね。

ならば私よりアディ君が」


誰だ

アディって


「一緒に見るか」


押し付け合い合戦で無駄な時間を消費したくは無い。

開封し

俺達は休み時間に一緒にジャンプを読む

男子中学生の様に並んで読み始めた。


『私はハンス・ガルド。これが読まれている頃に

私はもうこの世にはいないだろう』


ゴメン

早すぎた

しかし、なんでそんな出だしにしたの


『日差しも高くなり、ここヒタイングも

蝉が活動を・・・』


いらん部分だ。

飛ばすぞ。


『もし、これを読んでいる者、その仲間に

アモンさんが居るならばここから本題です。』


畜生

人の行動を読むじゃないか

ハンスのクセに


ご丁寧に星マークしやがった。

気が利くのか


ハンスの手記をまとめると

こうだ。


呪いは代々受け継がれ

王に必ず降りかかっている。

そして必ず女性しか誕生せず

結果として歴代の女王が

漏れなく呪いに掛かっていた。


ハンスの考察では呪いでは無く

それまでの人の偽装が解除された

今の状態が本来の姿。

その理由として

俺が想像した通り「あるべき姿」に戻す魔法が

一切効力を発揮しなかった事実。

これは今の状態がそのあるべき姿である事を

証明していると言う事だった。


そして、その種族はなんと


マーメイド。


キターやったー。

アーーンデルセーーーン!!!

この世で貝殻ブラの着用を許された

唯一の種族だ!!!


(人族でもタケダの一族に装着した猛者がいたそうだが

誰でもと言うワケではないので残念だが例外とする)


「これは、こちらで焼却してもらった方が良いでしょうね」


読み終わったバイスはそう言って

そのままブットバスに返した。


「宜しいのか」


「持ってはいけません。陛下のお体の秘密が

書かれております。」


「お気遣い感謝する。」


受け取るブットバス。


美男美女、金髪同士のやりとりは

80年代のハリウッド映画の様な絵になる。

口を挟むのが躊躇われるチンチクリンだが

俺は割って入った。


「ところでさぁ」


「はい」


「かき氷はどうだった。」


そっちが本題なんだぞ。


「大変お喜びになられた!」


意外な事にブットバスは呆れる事無く

むしろ仮面が取れた様に表情を崩し

大き目の声でそう言った。


「あんなに喜ばれたのは本当に久しぶりだ。」


健全な主従関係が窺える。

敗戦、呪い、外に出られない。

笑顔でいろなんて言う方が無理だろう。


その後、注意事項の説明、武器の預けなどをして

全員が王の間に案内された。


初見で見た鎧と同型を装備した衛兵が

扉をガードしていた。

案内の先頭にいるブットバスを見ると

綺麗に揃って敬礼した。


両開きの扉が開かれると

室内とは思えない程

大きな部屋だ。

天井もバカ高い

体育館ぐらいあるんじゃないの


左右に整列する騎士団

壁際にはメイドと執事がズラーっだ。


最奥に巨大なカーテン付きベッド

柱もなんかギリシャっぽい


その手前で跪くブットバス。

俺達もそれに習う。


作法を教わった時

ちょっとナリ君とリリアンが揉めた。

王たるナリ君が跪くなどリリアンにしてみれば

我慢できる事では無かったのだが

ナリ君の粘り強い説得の果て

渋々納得し同行する運びになった。


心配だったのでリリアンをチラ見してみると

やだ怖い

無表情

氷像みたいになっていた。

心を殺してるのだな。


畏まったの確認すると

執事長みたいなのが

もったいぶった口調で紹介を始めた。


「第21代、ヒタイング王国陛下

オコルデ・シ・カーシ様である。」


瞬間的に肺から出て行こうとする空気を

鋼の精神と肉体で封じ込めるが

脳裏に浮かぶボート好きの漫才師が

メガネを探す辺りで

俺の限界をちょっと突破してしまった。

肩が震えた。


ストレガが何事かと

俺を気にしている様だ。


カーテンが開かれると

更にカーテンだ。

かなり薄手のようで

背後の窓からの光でシルエットが映し出された。


「陛下?!」


ブットバスの様子がおかしい。

映し出されたシルエットはベッドの上に

座る女性が頭を抱えている影だ。


横に器が山盛りになった影も見える。


「う・・・頭が」


カーテンの向こうから綺麗な声だ。


「馬鹿な!今はまだ時期では無いハズだ。」


定期的に襲う頭痛。

その期間は特に呪いが酷くなると

ハンスの手紙にも書いてあったな。


しかし

横に積み重なった器の数を見る限り

時期じゃなくて

ただのアイスクリーム頭痛だろ

食いすぎなんだよ。

・・・先に言って置くべきだったな。

冬で無くても氷が作成できる。

文明レベル次第では起きない症状だ。

初めての症状に不安や恐怖を感じるのは

当然といえば当然だ。


しかし事態は俺の意見どころでは無い状態になった。

抜刀し王女のベッドを囲み構える騎士団。

手近な出入口から我先にと退室していくメイド達。


「なんだなんだ。」


俺は辺りを見回してポカーンだ。

バイスも予想していなかったのか

大声で問うた。


「何事ですか?!」


バイスの声に

いかにもしまったと言う感じで

ブットバスの指示が飛んだ。


「客人を外へ!!」


ブットバスの指示で何人かの騎士が

俺達の方へ掛けて来た。


「クフィ、リリアンと避難だ。」


それ以上は会話の出来ない状態になった。

シルエットは不自然な形に変化し

綺麗だった声は低音の効いた声

人が発する声とは思えない音になり

明らかに巨大化していった。


「グォォオオオ」


形容し難い音だ。

似たような発生をする動物がいない。

人魚の声ってこんななのか。


「ゴォアアアアア!!」


王女は瞬時に跳躍しカーテンを軽く飛び越えると

待ち受ける騎士団の前に着地した。


その姿は

あの

サーフィンとかのファッションブランドで

ガッチャっていうのがあるんですけど

そのロゴの生き物ですわコレ

有名落ちモノゲーのキャラにも

似たのがいたっけなフィーッシュ。


魚に人の手足が生えた生き物。


半人半魚には違いない。

けど

こうじゃない

これはマーメイドって言わない。


「くっひるむな抑えろ!!オコルデしっかりしろ

気を張れ飲み込まれるな!!」


ブットバスの指示で盾を構えた騎士が

オコルデを取り囲み、確保を試みるが

オコルデ王女超怪力だ。

薙ぎ払われ次々と吹き飛ばされる騎士達。


「!?」


その内の一人がブットバスに向かって

一直線に飛んできた。

ブットバスは武装していない生身だ。

鎧を含めれば100kgを超えそうな騎士が

直撃すればただでは済まない。

回避が間に合わない

そう判断したのであろう

ブットバスは少しで被害を押さえる為に

頭部を庇い体勢を低くした。


目を閉じその瞬間を待つブットバス。

しかし、いくら経っても騎士が当たる気配が無い。


「マスター。どうしますか」


白装束をパージしたナリ君が

電光石火でブットバスの前に入り

片手で騎士をキャッチし

大物を釣り上げた釣り師のように

ぶら下げていた。


「ま、待たれよ客人。オコルデを

傷付けないでくれ」


今の行動と白装束のレベル偽装を解いた

ナリ君の力を察知したブットバスは

今しがた自分の身が危うかったというのに

そう叫んだ。


「大丈夫です。そんな事はしません。

この呪いを解く為に来たのです。」


凛々しい声でバイスは叫んだ。

誰も君に聞いてないよね。


「やれやれ、ここでも救世主ですかマスター

困った趣味だ・・・言える立場では無いか」


文句を言いながらも着地が危うそうな騎士を

先回りして受け、惨事を回避していくナリ君。

すばやい。


「なっ・・・救ってくださると」


信じられないが信じたいと言う気持ちが

篭りまくりのブットバスが俺を見た。


「当たり前だ。行くぞ!!」


俺の掛け声に気持ちよく返事する仲間達。


人魚じゃ無かったから帰りたい。

言えなくなってしまった。


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