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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百九十二話 禁断のしろ

「日射病と熱中症、更に脱水症状ですね。」


倒れたナリ君をキャリアに運び込み

バイスが診断した。

どうせそんなこったろうと思っていた俺は

診断の最中にナリ君の装備をいそいそと

解除していった。

魔法の使用を考慮し、鎧の素材は金属の

使用を極限まで抑えた。

セラミックやカーボン等が主な材料だ。


それでも、手に持っていられない程

熱を持っていた。


「若は助かるのですよね?」


涙目でリリアンはバイスに問うた。


「・・・。」


おい意地悪すんな即答しろよ。

こんなんで死なないだろ。


「処置は行いますが・・・運次第では・・・。」


その運が0だ。

絶対ダメじゃん。


「ここまで進行したケースは初めてです。

普通はこうなる前に服を脱ぐものですので・・・。」


魔族の根性が変な方向に行ったな。

バイスは自信が無い様子だ。


「心配無い。この位じゃ死なん。」


リリアンの不安は非常に美味だったが

流石に可哀想だ。

俺の人の部分の感情がリリアンを

安心させる様に俺を動かした。


「救世主さま・・・。」


おー

幼女の上目遣いたまらん

なんでも言う事を聞いちゃう。

いいよな

もう

ロリコンでいいか。


「お兄様!コレ抜けません」


気が付けば装備解除を手伝ってくれていたストレガが

兜部分を外そうとナリ君をヘッドロック状態だ。

既にナリ君の顔色は土気色だ。


「ヤメロ。ナリ君の首が抜ける」


すこし背が伸びたようだが

多分、大丈夫であろう

俺はストレガを制すると


頭部の装備を解除していく

うっかり外れるのを防止する為

押して横とか、あっち押したままここスライドとか

凝ったギミックが仇になった。

知らない人は脱がせられないぞコレ。


パンツ一丁で転がるナリ君

なんか湯気が立ってるし・・・。

俺は氷を作成した。


「これは・・。」


バイスが真顔で驚いているが

前回は多用していたせいか

もっと早く楽にやっていた。

思う様にいかなくてもどかしいが

知らない人から見れば

普通に凄い事なのだろう。


察したストレガは

なんと魔法で氷で作り始め俺に協力してきた。

俺も驚いた。

すごい、呪文化してるのか。

後で聞いたが魔王図鑑にあったそうだ。

そう言えばヨハンから聞いたセンボージ城

攻略の時、氷の塊作ったって言ってたっけな。


キッチンなど排水設備がある場所には

でっかい氷を、床には風呂にも採用した

両生類の皮から作った防水シートを敷き

氷のブロックでナリ君を囲んだ。


ええい、ここまでやったらついでだ。

俺は屋根にも巨大な氷を置いた。

ちょっと調子に乗り過ぎた。

サスが沈み切り、ボディがなんかミリミリ言ってる。

ここで止めよう。


車内に戻ると俺の指示通り

脇や股関節などに冷えっ冷えっの濡れタオルを

当てられたナリ君が転がっていた。


「すごい・・・意識戻ります。」


魔法で何やらナリ君をモニターしていた

バイスはそう言った。

バイタルをリアルタイムで見る魔法があるのか。


「うぅ・・・。」


「若!!」


俺はキャスタリアからもらった水筒とグラスを

リリアンに渡してやる。


「要らないと言うまで飲ませてあげてくれ」


「はい!!」


甲斐甲斐しくナリ君を世話するリリアン。

くそう

羨ましい。

ストレガが俺を見て来た。

瞬時に平静を装った顔にチェーンジ

って、こんな事ばかり上達しているような気がする。


「これで対処法は分かったな。」


俺はバイスにそう言ったのだが


「氷が作れません。」


だよな。


「冷水・・・でもいい。」


ナリ君はグラスを奪う様にして

一気に音を立てて飲み干すと

すかさずリリアンが注ぐ

また飲む。

なんかのギネスにチャレンジでもしているかのようだ。


「涼しいっすー。」


1人幸せそうにソファでくつろぐクフィール。


次第に意識を取り戻すナリ君は

膨れたお腹をガードしながら

「もう良い」と言った。


無事に復帰だ。

良かった良かった。


「だから黒は止めて置いた方がと」


「ぬぅ・・・しかし」


復活したナリ君を囲んで

皆でかき氷タイムだ。


「師匠は天才っす!!!」


大した機械じゃない

即興で設計したかき氷機、

海の家でお馴染みのタイプだ。

動力は昔のミシンを参考に

足踏み式だ。


「ぐっ・・・後頭部に痛みが」


なんかセクシーポーズっぽい体勢で

バイスが声を上げた。

恐怖漏れてるし


「むぅ我も・・・これは!!」


アイスクリーム頭痛

冷たい物が喉を通過する時に

刺激を受けた一部の神経が痛みを誘発させる。

かき氷が原因で発生してもアイスクリーム頭痛と言われる。


俺は特別危険は無い事と

ゆっくり食えば防げる事を教えた。


「ビックリしましたよ。毒でも盛られたのかと」


笑顔で言うバイス。


「氷漬けにすんぞ」


笑顔で答える俺。


なんですぐ俺を疑うんだ。

それとも一時の感情で殺しますか

この俺ぉを


「ってこんなに作ってどーすんだ!!」


ふと気が付くと

周囲はかき氷だらけになっていた。


「楽しくて、つい」


悪びれず答えるクフィール。

分かるよ。

面白いもんね最初は


皆、後頭部を押さえて青ざめていた。

そんなに大量に食うもんじゃないよな。


「じゃ、売って来るっす」


そう言って、クフィールは

通りで販売を始めてしまった。


屋根に乗った巨大な氷は

通りの人々注目を集めるのに十分だった。

既に出来ていた人垣相手に

昭和の八百屋のごとく

クフィールは売り子をやりだした。


あいつ「メタめた」に一番向いてるんじゃないか

やった

隠れた才能発見ーって

こうじゃない。


ナリ君も着替えるとの事で

商売は女子軍団に任せた。

男子は車内で服の話になった。


「白!!」


広げる前に分かりそうなモノだが

俺が購入しておいたナリ君用の夏服

広げてから大声で驚くナリ君。


「熱を保持しにくい色です。」


科学的なアドバイスありがとうバイス。


「試しに!!試しに着てみろって

丁度、女子もいない」


俺もそう言ったのだが

ナリ君は気が進まないようだ。


「半ズボン!!!」


これもお気に召さないようだ。


「足に走る太い血管から熱を

逃がしやすくなりますね。」


涼しいでいいだろバイス。


「涼しいぞ。」


嫌がるナリ君だが

大迷惑を掛けてしまった直後だ

断ることが出来ずに

渋々、本当に渋々着替えた。


「どうですか。」


ダサい


俺もバイスも爆笑してしまった。

とてもレベル77の強者には見えない。

メニューを見てみると

何と

レベルが7になっていた。


本当に弱体化していた。


何で?

分からないがこの事実は

俺のツボに入りまくり

背中の筋肉まで痛くなる程

笑ってしまった。


「だから嫌だと!!」


激オコ状態になってしまったナリ君に

二人で平謝りし

レベルの事も話した。


「ちょ!!何で!!」


これはナリ君も予想外だったようで

笑っていた。


その後はレベルを見ながら

ああでもないこうでもないと

色々組み合わせを試して

上は黒の麻系のシャツ

下は薄手の黒細めのズボン

ショートブーツで

頭部だけ出会った時のターバンを

アラビアっぽく後ろ長目で落ち着いた。

短いと旧日本兵っぽくなってしまうので

長目だ。色もここだけは白系にした。


「ぬぅコレならば・・・まぁ」


何とかナリ君も納得だ。

レベルも70出た

どうも白い装備が増えると

比例して弱体していくようだ。

本能というか実感で感じ取っていたのだろう

自身が最も調子良くなる装備を

選んでいった結果の黒づくめだったワケだ。


「お兄様、ちょっとよろしいでしょうか」


ファッションショーが終わったと

ほぼ同時にストレガがキャリアの扉を

開いて顔を出した。


「何だ。トラブルか」


口調と表情から

良く無さそうな要件だと俺は想像した。


「トラブル・・・では無いのですが

責任者に来て欲しい事態に」


「私も行きましょう」


大概の事は教会の権限で何とかしてしまう気だ。

いいぞ。

頼もしいぞエリート。


「頼めるか。」


俺はそう言って腰を上げた。

結局、男共全員表に出た。


「ロイヤルガード?!」


小声ではあったが

驚愕の声でバイスは

思わずそう漏らしてしまった。


キャリアを取り囲んでいたのは

揃いの豪華な鎧に身を包んだ集団だ。

バルバリスの聖騎士とは

明らかに文化圏の異なる様相だ。


「はぁロイヤル?」


バルバリス領内で

何で別のロイヤルがあるんだ。


俺の疑問にバイスは素早く答えてくれた。


ヒタイングは元々は別の王国で

地上戦と海戦の果て

ヒタイング王国が降伏する形で

バルバリスに吸収された過去を持ち

統治に当たり

国民の反感を考慮したバルバリスは

王族を処刑にはせず

政治的権力は無いものの

象徴として今も継承されているそうだ。

当時の一貴族が警護の任を当たっている。

それがこいつらロイヤルガードと言うワケか。


「強かったらしいですよ。」


「らしいじゃなく強いぞ。

真ん中のおっさんはクロードと

同じくらい出来る。」


どいつもこいつも20を超えていて

真ん中の指揮官であろう

他より更に偉そうな装飾の鎧の人は39だ。


ここまでざっと見て来た

俺の個人的見解だが

〇ルヒが見向きもしない

特殊能力を持たない人間では50が限界値だ。


「・・・おっさんでは無いのだが」


落ち着いた声質で

真ん中の騎士は兜を下ろした。


まとめ上げられ、お団子になっている

ブロンドの髪、一部は汗で額に張り付いていた。


大人の女性だ。

でかい

アルコ位あるんじゃないか。


「これは失礼した。」


「「・・・ふつくしい」」


シンクロしたナリ君とバイスを

それぞれクフィールとリリアンが睨みつけた。


「お兄様、なんでも王がかき氷を食したいと」


ストレガが本題を俺に言って来た。


「おい、クフィール意地悪しないで売ってやれ」


「意地悪なんかしてないっす。

相手が誰であれ同じ値段っす」


マジで怒って返事した。

いい事言う

お前、マジで商才あるんじゃないか。


「いや、細かな氷の粒なのであろう

城に運ぶまでに溶けてしまう。」


女騎士がそう言った。


「来ればイイだろう。」


基本俺は自分で動かない奴はキライだ。


「あ!アモンさん。王は外に出られないのです」


弾かれた様にバイスが大声を出した。


「流石、司教は良くご存じでいらっしゃる」


女騎士は怒った風でもなく

冷静に言った。

バイスは俺に耳打ちをして

理由を話して来た。


「王が住まわれているのは

禁断の城と言われていまして・・・。」


禁断の しろ なら

ウチにもナリ君がいるぞ。


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