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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百八十八話 偽者ご対面

ダークエルフのプルに先導されて

俺の偽者が収監されていると言う牢に向かった。


プラプリと俺、そして

何故かストレガもついて来た。


牢はエルフにしては珍しく地下にあった。

牢だからこそ地下に設置したのかも知れない。

風と相性の良いエルフは上の方向

木の上とかを好み

地下方向には部屋を作らない傾向だ。


「すごいな。キッチリ組んである。」


里の壁、天然のちょっとした崖が

里の東側にあり

その斜面をくり抜き、切った石を組んで

通路を補強している。

エルフには珍しい建築方法だ。


「ああ、ドワーフの技術は凄いよ。」


プラプリの説明によると

牢を含めたこの通路も

駐在しているドワーフの鍛冶師ギドの

手によるものだった。


「エルフだけなら牢なんて必要無かったんだけどね。」


多種族の受け入れは

新技術や文化の流入だけでなく

文化の違いから来る誤解

それを元にした争いを

この里にもたらした。


今までは当たり前の常識で

ルールも、当然違反の罰則も設けていなかった。

その必要が無かったのだが

あらゆる事に必要になり始めた。


この牢もその一環で必要になったそうだ。


地下と言ってもすぐ下だった。

地上が丁度天井に当たる

本当に地下一階、そのフロア全部が

幾つかの牢に仕切られていた。


降りてすぐの牢の前でプルは止まる。


「こちらです。」


薄暗くて他の牢に人が入っているのか

よく分からないが

目の前の牢にはプルの言葉に

反応し動く気配を感じた。


「明かりを点けてもよろしいでしょうか。」


ストレガの申し出を快諾するプラプリ。

ストレガは余裕綽錫の先端を明るく発光させる

呪文を唱えてくれた。

途端に辺りは照らし出された。


入って来たばかりの俺達とは違い

ずっとこの暗い牢に閉じ込められていた。

俺の偽者には眩しすぎるのだろう

腕で目をガードしていた。


さぁてぇ

どんな奴なんだ。

興味津々だ。


「うふふ、どんな方なのでしょうか106人目の

偽者さん・・・あ、105人目が本物でしたので

今回の方が正式な105人目の偽者さんですね。」


正式な偽者とは


ストレガちゃんも興味津々の様子だ。

なんか嬉しそうなのは何故だ。


しかし俺のドロップ率は

1%を切るのか

レアキャラなんだな。


しかし今回の探索の目的でもある

勇者の偽者、それよりも出現率が高いと

言われる俺の偽者か。

俺自体はお目にかかるのは初なので

なんかワクワクする。

偽者というからには

多少なりとも似せようとするハズだ。


俺はどんなイメージなんだろう。


目が慣れて来たのか

顔を隠していた腕をゆっくりと下ろす偽者。

金髪、端正な顔立ち

中二全開なカルエル顔


って


「オリジナル俺じゃないか!!」


「その声、コピー俺なのか?!」


おいおい何してんの


「何捕まってんの、ざまぁ

結婚なんかするからだ。」


「・・・・やっぱり、それがイケなかったのかなぁ」


おいい

ソコは同意するなよ。

全力で否定してくれよ。

ワシらの明日を壊さんでくれジョー。


「お兄様?!このお顔は・・・・」


「ストレガーお前からもプラプリに説明してやってくれよ」


そうか

ストレガはカルエル顔を知っていたっけな。


「うん、カルエルの偽者なら騙されたかも

なんだけど、なんでアモンの名を騙ったのか」


顎に手を当て、プラプリも不思議がっていた。


「解放してやってくれないか。危険は無い」


流石に可哀想だ。

俺はプラプリそう言ってお願いした。


「知り合いのようだし・・・アモンがそう言うなら。」


プラプリの言葉にプルが腰から鍵束を外し

戸を開錠した。

そのまま執務室に戻り話を聞く事になった。


「つまり、元の世界に戻ったお兄様が再びやって来たと」


かろうじてストレガのみが理解出来た。

プラプリ以下はチンプンカンプンのようだ。


「過去の記憶のみの俺だと思って貰っていい」


俺はそう纏めて置いた。

現に

悪魔化も出来ないし

レベルも1のままだ。

更には長時間の滞在も出来ないであろう。


「だよね。力が本物なら

あの程度の牢から出られないなんて」


実力主義なのか

プラプリはその時点でオリジナル俺に

敬意を持っていない様子だ。

昔の事に詳しい事が更に警戒を強めてしまったようだ。


「失礼は失礼だった。そこはお詫びしないと。」


謝ろうとするプラプリを

俺とオリジナルが制した。


「「いや、プラプリは悪く無い。」」


「気持ち悪い程シンクロするんですね。」


言い方もタイミングもピッタリだった。

ストレガが微妙な表情で驚いてそう言った。


「「まぁ基本、中身は一緒だからな。」」


「・・・なんか怖いです。」


プルがドン引きだ。

プラプリも眉毛をヒクヒクさせて

質問してきた。


「ねぇアモン。後・・・何人いるの」


「「いや、こいつだけだ。」」


話せば話す程

皆が引いて行く

これはこれで面白いな。

当然ながらオリジナル俺も

同じ様に感じているらしく

ニヤついていた。

・・・俺も同じ表情しているんだろうな。


遊んでいる場合じゃない

俺と違ってオリジナルには

制限時間がある。

牢の中でログアウト脱出しなかったと言う事は

今回も外からの強制退出なのだろう。


今こうしている間にも

いきなり消えるかも知れないのだ。


聞くべきことを聞いてしまおう。

俺がそう思ったと同時に

オリジナル俺が話し出した。


「遊んでいる場合じゃないぞコピー俺」


考えるタイミングも同じか


「だな。時間はどの位残っているんだ。」


分からないそうだ。

ただ、一昨日から牢だ。

今回は随分長いんだな。


「こんなに滞在して肉体は大丈夫なのか」


その質問には驚くべき返答が帰って来た。

いくら滞在しようと戻るのは

ログイン直後だそうだ。

加速時間ではなく時間旅行感覚だ。


「すげぇな。」


驚く俺

前回の邂逅から短い期間で

良くそこまで進歩したものだ。

素直に賞賛した俺だが

オリジナル俺は恐ろしい返答をしてきた。


「まぁあれから8年も経過したからな」



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