第十八話 バットを額に当てグルグル
この辺りの魔物が余裕になり
レベルも20で上がりにくくなってきた。
怖くて試していないが
蘇生の呪文も習得出来ている。
頃合いかな。
丁度マイザーが来ていたたので
明日旅立つ旨を伝えた。
大分、改装が進んでかなり快適に
なってきた丸太小屋は
魔法の鍵を掛けて置くが
壊して押し入る気になれば
簡単に入れる。
まぁ気休めだな。
翌日、ベアーマンパトロールの一団に
見送られながら俺達は旅だった。
丸太小屋付近も巡回してくれると
言ってくれた。
これは有難い。
まず最初の目的地は新エルフの里だ。
途中で前回作った丸太小屋を見つけた。
プリプラと会った場所か
苔が年数を感じさせるが
中は荒れて無かった。
組み上げられた丸太の太さに
改めて前回の俺の怪力ぶりに驚く
こんなものをいとも簡単に
組み上げたのだ。
見覚えの無い備品が置き去りに
なっていることから察するに
旅人や冒険者の休憩に使われていたようだ。
丁度良いので休憩する事にした。
茶で喉を潤しながら二人を見る。
元気そうだ。
俺が一番体力無いかも知れない。
そうだアルコには念のために言って置くか。
「アルコや」
「はいマスター」
名を付けた後からはマスター呼びが
定着したアルコ。
「これは逃避じゃない。旅立ちだ」
「・・・。」
ん
気にし過ぎたか
まぁ言い出したんだ
最後まで言って置くか
「部族のしがらみから逃げる旅では無く
自分で自分の居場所を作る。また
その力を身に着ける戦いの旅だ」
恥ずかしくなってきたので
もういいか
そう思った時
アルコは見る見る涙ぐんでいた。
やはり後ろめたいものを
感じていたか
それは勘違いだぞ。
「・・・はい」
「俺を守れよ・・・後、可能な限り
ミカリンも守ってやってくれ」
「はい!」
茶をすすりながらミカリンが言った。
「二人とも僕が守るよ」
そう言った後、不満気な表情に
替わり俺に詰め寄ってきた。
「てかさぁアルコには優しくない」
「必要な時に必要なモノを
提供しているだけだ」
俺はアッサリと言った。
実は問題はミカリンの方が大きい。
普段、道を歩いている時
足元の蟻など気にしない。
蟻が見えても一匹一匹を
見わけようなどとも思わない
蟻の集団がいるな。
そんな程度だ。
移動の際、踏み殺しているなどとは
考えないし、そんな事を一々気にしていたら
どこにも歩いていけない。
しかし今、ミカリンはその蟻になった。
元々蟻だった俺だから虐殺に怒りを覚えたが
ミカリンにしてみれば人など
人で言う蟻のような物なのだ。
なんの罪悪感も生じない
更に言えば、あの行為自体が
神の命令で自分の意志では無い。
俺の元の世界でいた国は
昔、核爆弾を落とされたが
爆弾を落としたパイロットを責める人はいない
むしろ同情していた。
憎むべきは、その事態を招いた人
落とすと命令した人々であろう。
ミカリンは今脆弱な人間の肉体で
これからの旅で人と接する事になる。
その中で罪の意識が芽生えやしないだろうか
俺は恐怖していた。
フォローしきれる自信が無い。
初志貫徹。
迷った時ほどこれが必要だ。
最初の理想を忘れてはならない。
理想ばかり謳い
現実問題を見ようとしない経営者を
良く見かける。
遠くの目的地を目指すが
目の前の石につまずいて倒れるわけには
いかない。
方向を変えるべきなのに
山を指さしあっちだと吠える。
転ぶっての
逆に目の前の石ばかりみて
目指す先など考えない雇われも多い
確かに現実問題を処理しなければ
ならないが、それに忙殺され
どこに向かっているのか気にしない
忙殺されていれば毎月、決まった給料が
出ると信じている。
その先は崖でもだ。
現実に対処しながら理想を追うのだ。
俺はヴィータに言った。
四大天使は手痛い敗北で天界に帰ってもらうと
敗北は味わってもらったので
後は天界に帰ってもらわねばならん
壊して返却では無い
戻った天界で「人まじ半端ないって」と
吹聴させるのだ。
壊れないように気を使わないとな。
「僕には優しさは必要無いってコト」
ミカリンの文句で我に返る。
ん
一瞬でこれだけ考えたのか
「今はな。必要な時には優しくするよ」
それで救えればいいがな・・・。
「そそそれなら、まぁ」
真っ赤になって慌てるミカリン。
なんか今度はアルコが羨ましそうに見ている。
「はい、ここでチーム名を決めます」
俺は雰囲気を変えるべく
突然そう切り出した。
「「チーム名?」」
「そう。この三人のな」
突然変異のベアーマン
人間状態の天使と悪魔
みんな半端者だ。
三人の半端者。
「ということで名づけます
チーム名は【三半機関】です」
不評だった。