第百七十七話 1型調査旅行出発
その日の朝が来た。
1型の目撃調査だ。
目的地はアリシア大陸
バルバリス最北の町ヒタイング。
尚、襲撃された偽勇者が
そこから東に移動した友好国クリシアからの
流れ者ということでそこまで足を伸ばす予定だ。
メンバーは主賓というか教会の用事なので
主催というべきなのか。
教会代表バイス・ヒルテン22歳人族男性。
護衛として
俺
金物屋メタめたオーナー14歳人族男性
本当は爵位級悪魔人間、元の年齢27歳、性別男性
魔導院からは
院長ストレガ・アモン29歳人族女性
本当はスケルトン魔改造、14年前製造、性別無
と
クフィール・フォーヅ22歳人族女性
眼鏡っ子だ。
魔族からは
帝王ルーンマーセナリーエクス20歳魔族男性。
本当の名前はナリだ。俺が付けてしまった。
ステータス画面でまだそうなっている。
ごめんなさい変更出来ません。
以上五名だ。
ガレージでアモン2000を
アモンキャリアに連結した。
この二台とも俺の解放された金属操作で
フレームを含む大改造を施してある。
バックミラーの追加を始め
新たに収録し直した新ボイスなど
ってこれはいいか。
皆に見送られて
俺は一人メタめたを出発した。
まずは魔族の迎賓館でナリ君を回収した。
楽団まで出張ってお見送りだ。
試練だもんな
魔族の本気度が窺える。
ここで予定が変わった。
ナリ君の身の回りの世話用に
魔族のメイドが一人付いていた。
「救世主様の許しがあればですが」
すっかり疲れが抜け顔色の良さそうな
ルークスがそう申し出て来た。
「いいよ。」
二つ返事だ。
全く問題無い。
「お初にお目にかかります。」
ルークスに促され滑車付きのカバン
元の世界で言うキャリーバッグ
海外旅行者かコスプレイヤーが良く
持ってるアレだ。
満員電車では気が引ける。
を
引きながら
メイドが俺の前に出て挨拶を始めた。
リリアンと名乗ったメイド。
魔族、華奢な少女だ。
角はグレアに似て頭部をガードする様に湾曲していた。
羽は無いのか服の下に畳んでいるのか見えない。
まぁどうせ飛行能力の無い飾りだ。
尻尾は先端が矢印になった一般的なタイプだ。
黒髪でポニーテルを
なんか複雑にアレンジ編み上げしている。
ど・・・・どうなってんだ
それ一人で出来るのかな。
前髪は纏めたのが零れたのか
わざとなのか片目を塞ぐ恰好だ。
ナリ君もそうだが
魔族的には普通なのかも知れない。
随分、若そうに見えた。
思わず年齢を聞いた。
「12歳。今年13になります。」
おい魔族、働かすなよ。
元の世界なら労働基準法違反だ。
こんな少女がメイド服でご奉仕とか
最高じゃないか。
「万が一の際はお見捨てさい。
若を最優先にお願いいたします。
コレも渡されましたので・・・。」
リリアンはそう言って、漆塗りの豪華で
かつシックなデカイ印鑑みたいなのを
取り出して見せた。
短刀だ。
「いや戦闘は任せろ」
「マスター・・・自決用です。」
リリアンが戦うつもりでいると勘違いした俺を見て
ナリ君がそっと教えてくれた。
道理でやたら真剣な顔つきだと思った。
足を引っ張る位ならか
王の試練、それの同行者だ。
そりゃ真剣にもなるか
「そうか、じゃあ絶対にそいつは
余計な荷物にして見せる。」
軽く言ったつもりが
思わず力んでしまった。
「イエス、マスター。やはりあなたはマスターだ。」
ナリ君もどこか嬉しそうにそう言った。
二人を乗せ、壮大な演奏に送られて
魔族迎賓館を後にした。
演奏はエルフの方が上手いな。
次は魔導院だ。
門を通過し敷地内の広場まで車を進める。
ストレガ、ヨハンと再会コントを繰り広げた場所に
「おううスゲぇな」
中央にいつもの服装の二人以外は
黒ローブが大群だ。
何か魔神でも召喚するつもりか
異様な雰囲気だ。
ストレガとクフィールを乗せると
何やら呪文みたいなのを唱えだし
俺達は送られた。
何かスゴイ。
そのままドーマを抜け橋を渡り
直ぐにベレンだ。
前の打合せでは教会まで行かなくて
ここでバイスと合流する予定だったのだが
って
おいおい
ベレンの門を通過すると
聖騎士がズラー整列している。
魔族の何倍もの人と動員した。
俺達の進行に合わせて曲が始まった。
楽団は凄い迫力だ。
賛美歌をアレンジした交響曲は
音楽の知識を何も持たない者相手でも
圧倒してしまう。
「ぬぅ数では敵わんか」
「おのれバルバリスです」
おい魔族ども
何と戦っている。
「ぐううズルいですね。」
「あはは、何だかんだ言ってもこの大陸の覇者っす」
おい魔女ども
お前らの敵は誰だ。
俺は行き止まりの人垣付近まで
車をゆっくり進めた。
中央にバイス、両脇にパウルとユークリッドだ。
「なんかの祭りですか。」
そう声を掛け車を停止させる。
「お待ちしていました。直ぐ済みますので
少々お時間を下さいねぇ。」
ユークリッドはそう言うと
勝手に儀式を始めた。
命令書を読み上げ
各種書簡を手渡し、最後には
「拝命します。」とバイスは
カッコよく宣言していた。
パウルは感極まって
今にも泣き出しそうだ。
バイスが乗り込む時には
俺を両手握手でホールドし何度も
「宜しくお願い致します」と涙ながらに
連呼していた。
何か恐ろしくなった俺達は
逃げる様に出発した。
見送る観衆に手を振って答える為に
バイスは牽引車のアモン2000の
補助席に腰掛け笑顔で手を振って答えていた。
そうやってベレンを出てから
俺はバイスに話しかけた。
「随分、大袈裟なんだな。」
「アハっですよね。でも
お許しください。彼等・・・我々教会に
とってはこれでも結構重大な・・・。」
聞いて見ると
この任務の成果次第でバイスは
9大司教入りを認められるらしい。
なんだなんだ
これはもう
観光どころじゃないぞ。
王の試練と教会の一大イベントが
重なっているじゃねぇか。
「では早速出済みません。バロードまで
向かって下さいますか。」
受け取った書簡の内一つは
バロードの教会宛てだそうだ。
俺は言われるままバロードに向かう。
小一時間で着いた。
馬車とは別次元のスピードに
バイスは感動していた。
「凄い乗り物ですね!」
「もっとスゴイのを見せてやろう。」
俺はそう言って車を停止させた。
バロードの駐車場は値段が高い。
二台分だと結構いい額になってしまう。
後、クフィールに運転を教える為にも
キャリアをメインにしたかった。
アモン2000から下りると
キャリアに新たに設置した装置を起動させる。
連結アームはそのままカブトムシの角の様に
アモン2000を持ち上げキャリアの屋根に持っていく。
固定具がロックされた事を確認し
キャリアに移動した。
キャリアの運転席に腰掛け
隣にバイスが座った。
終始ポカーンと口を開け
俺の作業をながめていたバイスだったが
ここでやっと口を開いた。
「スゴイですね、でも・・・。」
「でも?」
「何故、最初からこうして出発しなかったのですか」
「ああ、それはな」
ガレージ内で行うと
天井は問題無いのだが
出入口のシャッターの高さが足りず
アモン2000が壁にぶち当たってしまうのだ
以前、ダークがそれで挟まった。
俺はそう説明した。
「何事にも余裕は大事ですね。」
笑いながらそう答えたバイス。
畜生イケメンだ。
もてそうだな。
バロードは目と鼻の先だが
バイスと初対面の者もいるだろう
一回ここで休憩しよう。
俺はバイスを伴って運転席から
客間の方に移動した。
「あーっばバイスじゃないっすか」
俺がバイスを紹介するより先に
入るなりクフィールが声を上げた。
「クフィ、アハやっぱり僕たちは
強力な縁で結ばれている様だね。」
「なんだ知り合いか。」
クフィールの説明だとガルド学園で
同級生だったそうだ。
各自、自己紹介を済ませ
軽く休憩した後に出発し
すぐ
バロードに到着した。